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しおりを挟む…ん、あぁ、頭痛い。ぐわんぐわんする。だけど、優しく髪を撫でる手がすごく心地よくて、また眠りに落ちてしまいそうだ。…って、待って。髪を撫でる手って何!?誰!?私一人暮らしなんだけどっ!?
ぱっと、目を開いた瞬間に視界に飛び込んできたのは、窓から差し込む光をふんわりと浴びて、にっこりと笑う綺麗な顔。
「おはよう、相馬さん」
「こ、ここ、小宮主任…?」
これ絶対寝顔見られたよね、なんて思うと恥ずかしくて急いで目を逸らした。
…いやいや待って。寝顔とかの問題じゃない。ていうか、何で小宮主任が!?しかも私の髪撫でてたよね?え?何で?なんて思いながら恐る恐る小宮主任に目を向ける。
「どうしたの?」
「……え、と、」
いや待って…今更だけど、ここってホテル…だよね…?それに、小宮主任、服着てない…よね?ちょっとどういうことですか、これ。ま、まさか、酔った勢いで一線越えちゃった?うそでしょ、嘘だよね?え?
「ふふ。昨日の花蓮ちゃん、可愛かったよ」
「っ、!?」
それってやっぱり、しちゃったってことですよね…!?ていうか、名前呼びになってる。そんなに親しくなるくらい濃い夜を過ごしてしまったの!?
焦りながらも昨日のことを必死に思い出そうとするけど、水瀬課長にもうやめとけよ?って言われたくらいのところまでしか思い出せない。…あぁ、だめだ。
「無理して思い出さなくても大丈夫だよ」
なんて言ってまた、私の髪を柔らかく撫でた小宮主任をまじまじと見つめる。もうヤッてしまったなら仕方が無い。無かったことになんて出来ないし。開き直った私は、小宮主任の肉体美を目に焼き付けようとか馬鹿なことを考えた。だって、こんないい身体を見ないなんて勿体ない。
「…もう1回したいの?」
「や、ちがいま……っ!?」
そんな私の視線に気付いて、にこりと笑ってそう言った小宮主任に、違いますと言いたかったのだけど。背後から伸びてきて私を包んだ腕に、言葉が出なくなる。
ど、どういうことデスカ…?誰の腕、ですか、これ…
「…相馬、小宮なんて相手しなくていい」
後ろからぎゅっと抱き締められている状態で、耳元で囁くように聞こえたのは、いつもより少しだけ低い水瀬課長の声。
ま、待って…?小宮主任だけでなく、水瀬課長まで!?え、え、それってつまり、さ、3Pってやつですか…嘘でしょ…
私を抱き締めている腕に、私の背中を包み込むようにしている胸板は、何も身につけていなくて、地肌と地肌が触れ合う。
「課長、相馬さんが困ってますよ」
困惑している私の額にキスを落としてからそう言った小宮主任に、水瀬課長が「邪魔すんな、帰れよ」なんて言う。
その声が耳元で低く響いて、身体がびくりと震えた。それを見逃さなかった水瀬課長が、「感じちゃった?」なんて意地悪に笑う。
「か、感じてません!離してくださいっ!」
ぼっ、と赤くなった顔と、それを悟られないように抵抗する私。そんな私をさらにぎゅっと抱き締める水瀬課長に、小宮主任に助けを求めるような視線を送る。
だって、だってさ、お尻らへんに何か、当たってるんだもんっ!もう恥ずかしすぎて顔が熱い。
早く助けて下さい、小宮主任!そんなことを思っていれば、小宮主任がふと、笑って私にキスを落とす。それも、深い方の。
「っ、……ん、ふ……!」
唇をこじ開けて入ってきた舌が、私の歯列をなぞり、舌に絡む。なにこれ、気持ちいい……頭が真っ白になりそうなくらい。
「あ、お前何してっ、」
その瞬間、抱き締められていた腕が離されて、その腕が私から小宮主任を引き剥がした。
…、なに、なんですか、一体……
はぁはぁと荒くなった息を整える。
にやりと笑って、舌なめずりをする小宮主任と、それを睨む水瀬課長を見つめて、何が起こったのかを必死に理解する。
私、今、小宮主任にディープキス、された…よね…?いや、それ以上の事も既にしてしまっているのだけど。でも、それとこれとは違う。今はシラフだし記憶あるし…!
「な、なんでキスなんか…っ!」
「花蓮ちゃんのこと、課長に渡したくないからさ。」
「はぁっ!!?」
「俺もお前に渡すつもりねぇけど」
「えっ!!?」
いやいや待って、もしかして2人ともまだ酔っ払ってる?私の聞き間違えじゃなきゃ、2人が私を奪い合ってるんだと思うんだけど。…でも、そんなことありえない、よね…?
鋭い目つきの水瀬課長と、余裕そうな笑みを浮かべる小宮主任を見て、困惑した。
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