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第28話・そぞろ歩き②
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谷中で世話になれるところと言ったら、住職様の寺しかない。小僧との因縁があろうとも、そちらを訪れるほかなかった。
小さな山門を彼とくぐり、掃除に勤む幼い小僧に声をかけると、気不味そうな顔がみるみる真っ赤に染まっていった。
「あっ……。あやめ様、如何なさいましたか」
「彼と話がしたいんだ。庫裏を借りたいんだけど、住職様は?」
嫉妬の炎が灯る目でちらりと彼を確かめてから、小僧は庫裏へと案内をした。玄関先でしばし待つと住職様がやってきて、男の格好に目を見張り、隣の彼を訝しげに見下ろした。そんな目で見られては、彼も怪訝に住職様を見返してしまう。
「今日は仕事ではないのだな?」
「昔の馴染に会ったので、落ち着いて語り合いたいとお邪魔しました」
「語り合うだけだな?」
疑り深い住職様に耳打ちをして、彼に聞こえないよう鼻薬をきかせた。
「今度たっぷり色をつけますので、お願いします」
すると住職様は緩みそうな頬を締め、難しそうに顔をしかめて小僧に客間を案内させた。
ふたりにほどよいその部屋で、覗かれぬようにと小僧の耳に釘を刺す。
「こちらのお武家様は、彰義隊士です。手出しなどしませんでしょうが、失礼のないように」
ぴしゃりと障子を締め切って、足音が消えるのを待ってから、そろりそろりと口を開いた。
「私……俺は、こういう茶屋に売られたんだ。もし嫌だったら、言っておくれよ」
崩れるようにしなだれかかり、肩に手を触れ背に手を回し、寝かせるように若侍を押し倒す。腰と腰とを重ね合わせて、戸惑う唇に躊躇いなく口づけをする。固い唇を舌先でこじ開け、狼狽えている舌に絡みつかせる。互いの味が混じり合い、互いの体温がひとつになった。
息継ぎのため唇を離すと、彼は甘い混乱の渦中にあった。
「語るだけでは、なかったのか」
「身体で語り合うんだよ?」
再び唇を押しつけて、心の奥まで吸い出そうと舌を絡める。重ね合わせた互いの腰が、むくむくと熱を帯びてきた。肩に触れた手を背中へと、背中の手を深く深く腰へと沈めて、袴の結びを解いていく。
脚を絡ませ袴を下ろし、着物の合わせに手を潜らせる。そんなつもりはなかったのだと、布の感触が声なく告げた。
みんなその気だったから、褌を締めた客なんて、ひとりもいなかったな。
身体を浮かせて、おぼつかない手つきで六尺褌の端を探す。すると彼が、締め込みの終わりはここにあると、指で示した。
「ごめんよ。褌なんて、下ろしたことないから」
「あ……すまない。下ろせばいいのか?」
「いい、俺にやらせてよ」
前を隠した布を剥がすと、透明な糸が彼の先へと伸びていった。先を濡らしていたそれは、握れば手から少し余る大きさで、未知の多さに青かった。
前をはだけて自分のものとまとめて握り、先から滲み出す期待と不安を一緒くたにして混ぜていく。手の平が透明に照り、いくつもの糸を引いていた。
「こういう趣向の茶屋だとは……」
「これだけじゃあ、ないんだよ」
手を離し、糸引く若さを引き離す。立ち上がっているそれを咥えて、舌をぬらぬらと絡みつかせて、喉の奥へと挿し込んでいく。
いっぱいに広がっていく、彼の味。熱くて青臭くって──。
だけど彼は身体を起こして顔を上げさせ、開いた唇にツーッと糸を引かせてしまった。
「や……やめろ、汚いぞ」
「そんなことないよ? とっても、美味しい……。こんなの、はじめて」
貪るように咥えて舐めてしゃぶって、ぬらぬらと濡れる口の中を、ねっとりとした粘液をいっぱいに広げる。
中で大きく膨れると、彼が再び剥がそうとする。それを拒絶し、両の腕を腰に回して抱きしめた。
苦くて、生臭くて、熱くて、美味しい、大好き、いっぱい頂戴、中に出して、いっぱい出して──。
彼がきゅうっと身体を歪め、抱いた尻が締め上げられる。口いっぱいに脈を打ち、何度も何度も脈を打ち、いっぱい出たから口の中から溢れちゃう。
花畑の中、ぐったりと肩で息する彼から離れて、開いた手の平に熱い粘液をとろりと垂らす。それを自分の後ろに塗りつけて、中から奥まで差し込んでいく。
「いっぱい出たね。これなら、足りると思うんだ」
わずかな懸念を悟った彼は、あべこべに私を押し倒し、ぷっくり膨れたままのものを口に含んだ。
「ちょっと、駄目だよ」
言うも聞かず、固い舌が不器用に先を根元を表を裏を鞭打った。むくむく膨れてピンと立ち、唾液と自分の粘液がべっとり絡みついていく。
「駄目、出ちゃう、中に出しちゃう!」
きゅうっと締まった丹田からは、身体を熱くしたものが勢いよく吹き出した。咥える彼は、それも髄も脳さえも、よがる身体から吸い取っていく。
ぺたりと尻もちをついて花畑に身を沈めると、彼は苦さに涙を浮かべて、開いた手の平に汚いものをとろりと垂らした。
「……これで足りるか?」
「ごめんね、美味しくないでしょう?」
「いいんだ。それで、どこに塗ったんだ?」
いいよ、と手を差し出したが、彼は渡そうとしてくれない。躊躇い恥じらい、もう今更だと着物の裾を捲り上げ、濡らしたところを広げて見せた。
おねだりしている緩んだ穴を彼の指が撫で回し、中へ中へと押し込まれていく。
「凄く、いい……。ねぇ、してあげる。しよう?」
辛抱堪らず身を翻し、押し倒した彼に跨った。
小さな山門を彼とくぐり、掃除に勤む幼い小僧に声をかけると、気不味そうな顔がみるみる真っ赤に染まっていった。
「あっ……。あやめ様、如何なさいましたか」
「彼と話がしたいんだ。庫裏を借りたいんだけど、住職様は?」
嫉妬の炎が灯る目でちらりと彼を確かめてから、小僧は庫裏へと案内をした。玄関先でしばし待つと住職様がやってきて、男の格好に目を見張り、隣の彼を訝しげに見下ろした。そんな目で見られては、彼も怪訝に住職様を見返してしまう。
「今日は仕事ではないのだな?」
「昔の馴染に会ったので、落ち着いて語り合いたいとお邪魔しました」
「語り合うだけだな?」
疑り深い住職様に耳打ちをして、彼に聞こえないよう鼻薬をきかせた。
「今度たっぷり色をつけますので、お願いします」
すると住職様は緩みそうな頬を締め、難しそうに顔をしかめて小僧に客間を案内させた。
ふたりにほどよいその部屋で、覗かれぬようにと小僧の耳に釘を刺す。
「こちらのお武家様は、彰義隊士です。手出しなどしませんでしょうが、失礼のないように」
ぴしゃりと障子を締め切って、足音が消えるのを待ってから、そろりそろりと口を開いた。
「私……俺は、こういう茶屋に売られたんだ。もし嫌だったら、言っておくれよ」
崩れるようにしなだれかかり、肩に手を触れ背に手を回し、寝かせるように若侍を押し倒す。腰と腰とを重ね合わせて、戸惑う唇に躊躇いなく口づけをする。固い唇を舌先でこじ開け、狼狽えている舌に絡みつかせる。互いの味が混じり合い、互いの体温がひとつになった。
息継ぎのため唇を離すと、彼は甘い混乱の渦中にあった。
「語るだけでは、なかったのか」
「身体で語り合うんだよ?」
再び唇を押しつけて、心の奥まで吸い出そうと舌を絡める。重ね合わせた互いの腰が、むくむくと熱を帯びてきた。肩に触れた手を背中へと、背中の手を深く深く腰へと沈めて、袴の結びを解いていく。
脚を絡ませ袴を下ろし、着物の合わせに手を潜らせる。そんなつもりはなかったのだと、布の感触が声なく告げた。
みんなその気だったから、褌を締めた客なんて、ひとりもいなかったな。
身体を浮かせて、おぼつかない手つきで六尺褌の端を探す。すると彼が、締め込みの終わりはここにあると、指で示した。
「ごめんよ。褌なんて、下ろしたことないから」
「あ……すまない。下ろせばいいのか?」
「いい、俺にやらせてよ」
前を隠した布を剥がすと、透明な糸が彼の先へと伸びていった。先を濡らしていたそれは、握れば手から少し余る大きさで、未知の多さに青かった。
前をはだけて自分のものとまとめて握り、先から滲み出す期待と不安を一緒くたにして混ぜていく。手の平が透明に照り、いくつもの糸を引いていた。
「こういう趣向の茶屋だとは……」
「これだけじゃあ、ないんだよ」
手を離し、糸引く若さを引き離す。立ち上がっているそれを咥えて、舌をぬらぬらと絡みつかせて、喉の奥へと挿し込んでいく。
いっぱいに広がっていく、彼の味。熱くて青臭くって──。
だけど彼は身体を起こして顔を上げさせ、開いた唇にツーッと糸を引かせてしまった。
「や……やめろ、汚いぞ」
「そんなことないよ? とっても、美味しい……。こんなの、はじめて」
貪るように咥えて舐めてしゃぶって、ぬらぬらと濡れる口の中を、ねっとりとした粘液をいっぱいに広げる。
中で大きく膨れると、彼が再び剥がそうとする。それを拒絶し、両の腕を腰に回して抱きしめた。
苦くて、生臭くて、熱くて、美味しい、大好き、いっぱい頂戴、中に出して、いっぱい出して──。
彼がきゅうっと身体を歪め、抱いた尻が締め上げられる。口いっぱいに脈を打ち、何度も何度も脈を打ち、いっぱい出たから口の中から溢れちゃう。
花畑の中、ぐったりと肩で息する彼から離れて、開いた手の平に熱い粘液をとろりと垂らす。それを自分の後ろに塗りつけて、中から奥まで差し込んでいく。
「いっぱい出たね。これなら、足りると思うんだ」
わずかな懸念を悟った彼は、あべこべに私を押し倒し、ぷっくり膨れたままのものを口に含んだ。
「ちょっと、駄目だよ」
言うも聞かず、固い舌が不器用に先を根元を表を裏を鞭打った。むくむく膨れてピンと立ち、唾液と自分の粘液がべっとり絡みついていく。
「駄目、出ちゃう、中に出しちゃう!」
きゅうっと締まった丹田からは、身体を熱くしたものが勢いよく吹き出した。咥える彼は、それも髄も脳さえも、よがる身体から吸い取っていく。
ぺたりと尻もちをついて花畑に身を沈めると、彼は苦さに涙を浮かべて、開いた手の平に汚いものをとろりと垂らした。
「……これで足りるか?」
「ごめんね、美味しくないでしょう?」
「いいんだ。それで、どこに塗ったんだ?」
いいよ、と手を差し出したが、彼は渡そうとしてくれない。躊躇い恥じらい、もう今更だと着物の裾を捲り上げ、濡らしたところを広げて見せた。
おねだりしている緩んだ穴を彼の指が撫で回し、中へ中へと押し込まれていく。
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