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第6話 タネコ 視点
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イチハは創ったことはないのに、舟をつくるために、海岸の側にある森みたいな木がいっぱい生えているところへ行った。
しばらく何かうろうろと探し回った後、この木にしようと言って、イチハは何か変な力で木を切った。
どしんとものすごい音をたてて、木は倒れた。 驚いた。
なにか手が光ったと思ったら、鮮やかに木は倒れていた。これも上位生命体の力だろうか? 宇宙樹と頭に浮かんだが、あれも木の一部なのだろうか?
この木とはどう違うのだろう? 考えてみればこの木も意志や意識は有るのだろうか?
疑問は尽きなかった。 すると不意に答えが浮かんだ。 我のほうが高位生命体ゆえ、木でも異なる。
この地の木にもわずかな意志や意識は有るが、弱い。 ゆえに我のほうが支配している。
イチハとタネコは我の一部である。ゆえに身を守るため、木を使う。
ああ・・なるほどね。木でも上下関係はあるんだ。 やはりそうか・・。
タネコは納得した。 宇宙樹と交信している間、イチハは木を分解し、みるみると舟をあっという間に創った。
これも宇宙樹の力だろうか? なにかに操られたように、黙々とイチハは働いてあっという間に、創った。
イチハは創ったことはないのに、舟は見事な出来ばえだった。
頭がとても良くなっているんだ。
びっくりすることばかりだ。 タネコは深い感嘆の溜息をついた。
イチハは笑って言った。
「タネコ。舟が出来たよ。これであいつらから別の地へ行くことができる。海を越えてはるか遠くの地へ行こう。」
イチハが手招きした。手をきてきてとタネコを呼び寄せるように振っていた。
なんだか可愛らしくて、タネコは微笑んだ。頭がとても良くなってもイチハはイチハだ。
前の優しい男の子の面影をもっているイチハに安堵した。
「うん。イチハとならいいよ。どこにでもいくよ。」
タネコは笑って話した。イチハとなら安心して話せる。タネコはあまり他の人とは話せなかった。
虐められていたからだ。タネコになる前の女の子も耐えがたい仕打ちに抗議したことはあったが、結果は酷い折檻だった。
骨が折れるような折檻にタネコは喋らなくなった。 無駄だと悟ったのだ。
嗚呼・・忌々しい記憶が蘇る。 タネコは歯ぎしりした。
今この力があるのならあいつらに復讐もできるだろう。しかしもうたくさんだった。
あんなやつら。もうどうでもいい。 イチハとならどこにでもいける。 絶対幸福になってやる。
それがタネコにとって最大の復讐だった。
舟に乗って、海を漂流している間、タネコとイチハは不思議とどんなに海が荒れても無事だった。
まるで何かに守られているように、タネコとイチハは安心しながら放浪した。
答えはわかっている。 宇宙樹の力だ。 食べられる魚は舟で捕って、光る力で焼いた。
こんがりと焼けた魚は身が厚く油ものって美味しかった。 タネコは思わず貪るように食べた。
イチハも笑いながら、豪快にかぷりと齧って、「美味しいねえ。タネコ。」と言った。
うんうんとタネコは頷いて、食事を楽しんだ。
こんなに楽しいと思ったことはない。タネコとイチハは初めて楽しいと思った。
海水は水と塩で分解して、水だけ飲めるようにした。
タネコとイチハは、もう宇宙樹と呼ばれた上位生命体の一部として、力を行使できるようになった。
恐怖は無かった。 だってタネコとイチハは一度殺されて死んだのだから。 もう恐怖はあの時からなくなった。
長くて楽しく愉快な漂流はある日、終わりを告げた。
タネコとイチハは奇妙な幸福感を抱いて笑いあいながら、小さな無人島にたどり着いた。
彼らに恐れは無かった。なにかあるのかなと好奇心と興味に満ち溢れていた。
タネコは珍しい野草や、木の実などを探した。 イチハは小動物や、大きな動物はいないか探し回った。
見たことが無い鮮やかな色あいをした動物や、植物をたくさんたくさん見て、タネコとイチハは高揚と興奮のあまりにすごいすごいといいながらはじゃきまわった。
毒性のあるものもあったかもしれないが、上位生命体の一部となった彼らは自動的に毒を分解していた。
その動物や植物の生態や、毒性など、知識がするするとタネコとイチハの頭に吸収された。
まるで何かを学習するように、どんどん知識が増えていく。
頭が壊れないかなとタネコは思ったが、そうはならなかった。不思議だ。 まるで膨大な知識は、タネコが不意に疑問に思った時、ひょいと答えがあらわれる。
どこにしまわれているんだろう。タネコとイチハの頭にはおかしな箱があり、そこになんでも無限に入っているようだ。
とても長くてにょろにょろと美味しそうな身体を動かして、シャーシャーと長く細い舌を出している動物もいた。
蛇とタネコは脳裏に浮かんだ。
タネコはなんだか美味しそうな身体を食べたいと思って、近づいた。
光る力で、威嚇し襲おうとする蛇をタネコは殺した。どうしても食べてみたかったのだ。
食欲には叶わない。 タネコはその蛇から毒性を抜き、皮を剥がし、身をこんがりと焼いた。
淡白な味だが、なかなかいい。これにピリピリときく草を一緒に食べればもっと美味しくなる。
タネコはそう確信して、ピリピリ草、香辛料となる草を探した。
タネコの求めている草は直ぐに見つかった。 これも宇宙樹の力の恩恵だろうか?
タネコはイチハのために、もう一回蛇を殺して、香辛料となる草と一緒に身を焼いた。
良い匂いがしてきた。
「なあに。良い匂いがしたから来たけど。」
イチハが不思議そうにやってきた。タネコは笑って、食べ物よと言って、イチハに渡した。
「へえ。なんの動物だろう?」
イチハはぱくりと食べた。 「美味しい!」「タネコは美味しいものを創るのが上手いね!」
イチハは嬉しそうに、食べ続けた。 イチハにも何の動物が分かったようだ。
「ああ・・これは蛇だね。宇宙樹が答えたよ。こんなに美味しかったんだ。」
イチハはなるほどとうなずいた。
なんという便利な能力なのか・・すぐに答えがわかるとは・・ タネコはもたざる者から一気にとんでもない持つ者に変容して、もはや言葉もなかった。
海の神なんで信じていないけど、何か偶々タネコとイチハの生贄の日に死体が落とされて、宇宙樹が隕石みたいに墜落して、海の中で鉢合わせなんであまりにも出来過ぎで夢じゃないのかと今でもタネコは信じられなかった。
まあ・・きっと神様もあまりにも哀れで悲惨な人生の最後に奇跡を与えたのかもしれないとタネコはそう思うことにした。
だとしたら遅いよと文句も言いたいところだが、他の生贄になった子たちは奇跡は起こらなかった。
それを思うとタネコは少し心が沈んだ。
タネコとイチハはあまりにも悲惨で過酷な人生の果てに奇跡を得たのだ。
運って一体・・とタネコは思わずにはいられなかった。
イチハは頭が良く、なんでもできるようになった。イチハはすでに親を見限り、過去は捨て忘れたように見える。
当然だろう。あの時の両親に見放されたイチハの顔がタネコには忘れられなかった。
あんな親。もうイチハもみたくないだろう。
イチハは美味しそうに笑ってタネコの作った食事をペロリと完食した。
そして、イチハは少し考えていた。
何を考えているんだろう? タネコは待った。
「ねえ。タネコ。 この島を一周したんだ。島は、凹凸はついているけど、一応、食べられる食材と水はあるところだ。滝も見つけた。水洗いもできる。
島の中央に暮らさないか? 実は、どうやったらここで住めるかと考えたら、何か答えが来たんだ。
島の中央までいって、種を植えろって。 宇宙樹の一部の力が宿った種みたいだ。その種を植えると大樹になるんだって。大樹の中で暮らせるようにすると宇宙樹が交信してきたんだ。」
タネコは目を丸くした。 大樹の中で暮らせるようになるのか?
まあ、そこで安全に暮らせるのならいいのだが・・。
半信半疑で、タネコはイチハの動向を見守った。
島の中央まで行ったイチハはここで見ていてと言った。
イチハは何か奇妙な言葉をつぶやいて、小さな種を光る手で包み込んで土の中に埋めた。
そうすると、みるみる種が成長し、タネコは呆然と、木がどんどん成長していって大樹になるのを見た。
「まあ・・。」
タネコはもう言葉もなかった。
大樹はかすかに光を放っていた。 大樹は中央に自動的に扉を作った。
木でできた扉だ。それをタネコは無意識に開けると、中は素晴らしかった。
かすかに発光しているが、目には優しい。
木でできた寝台や、家具。 大きな机と椅子。 タネコとイチハが食事できるところだ。
中には奇妙な木でできた丸いものがあった。
「これは何?」と囁くと、水を温めて、入れて身体を洗うようになっている桶だ。
答えがまたきた。 ああそうなんだ。そういうのを始めて見た。
なんでもはじめてみるものばかりだ。感嘆しながらタネコは興奮して見渡した。
イチハは笑いながら「タネコ。気に入ったかい。」と言った。
うんとタネコは頷いた。「凄いよ。イチハ。まるで神様みたいだ。」
そう言うと、イチハは苦笑した。
「 君もそうなんだよ。タネコ。 君もすっかり変わったよ。
美しくなって、なんでもわかるようになって、食べ物も捕えるようになった。 すごくなったよ。」
タネコはびっくりした。美しい?わたしが? 言われたのははじめてだ。
「病や毒とかにタネコは侵されていたみたいだね。 あの顔がこんなに綺麗になるとはぼくも驚いたよ。」
そう言って、イチハは木で創った手鏡というものをタネコに渡した。 見てと言っている。
タネコは手鏡を見た。そこにはみたことのない美しい女の子の顔があった。
これは誰? わたし? タネコはしばらくその顔に見入った。
ふとイチハを見ると、いつになく真剣な顔でタネコを見ていた。
嗚呼・・なんだかタネコはイチハの思いが分かった。 彼はわたしを番いにしようとしている。
醜い女の子だった時は思いもしなかったが、この顔なら、イチハも十分に満足できるだろう。
男と女の関係は、村で嫌というほど知っている。 女は男の種を宿し、赤子を産むのだ。
わたしがイチハの子を?タネコはいまだに信じられなかった。
しばらく何かうろうろと探し回った後、この木にしようと言って、イチハは何か変な力で木を切った。
どしんとものすごい音をたてて、木は倒れた。 驚いた。
なにか手が光ったと思ったら、鮮やかに木は倒れていた。これも上位生命体の力だろうか? 宇宙樹と頭に浮かんだが、あれも木の一部なのだろうか?
この木とはどう違うのだろう? 考えてみればこの木も意志や意識は有るのだろうか?
疑問は尽きなかった。 すると不意に答えが浮かんだ。 我のほうが高位生命体ゆえ、木でも異なる。
この地の木にもわずかな意志や意識は有るが、弱い。 ゆえに我のほうが支配している。
イチハとタネコは我の一部である。ゆえに身を守るため、木を使う。
ああ・・なるほどね。木でも上下関係はあるんだ。 やはりそうか・・。
タネコは納得した。 宇宙樹と交信している間、イチハは木を分解し、みるみると舟をあっという間に創った。
これも宇宙樹の力だろうか? なにかに操られたように、黙々とイチハは働いてあっという間に、創った。
イチハは創ったことはないのに、舟は見事な出来ばえだった。
頭がとても良くなっているんだ。
びっくりすることばかりだ。 タネコは深い感嘆の溜息をついた。
イチハは笑って言った。
「タネコ。舟が出来たよ。これであいつらから別の地へ行くことができる。海を越えてはるか遠くの地へ行こう。」
イチハが手招きした。手をきてきてとタネコを呼び寄せるように振っていた。
なんだか可愛らしくて、タネコは微笑んだ。頭がとても良くなってもイチハはイチハだ。
前の優しい男の子の面影をもっているイチハに安堵した。
「うん。イチハとならいいよ。どこにでもいくよ。」
タネコは笑って話した。イチハとなら安心して話せる。タネコはあまり他の人とは話せなかった。
虐められていたからだ。タネコになる前の女の子も耐えがたい仕打ちに抗議したことはあったが、結果は酷い折檻だった。
骨が折れるような折檻にタネコは喋らなくなった。 無駄だと悟ったのだ。
嗚呼・・忌々しい記憶が蘇る。 タネコは歯ぎしりした。
今この力があるのならあいつらに復讐もできるだろう。しかしもうたくさんだった。
あんなやつら。もうどうでもいい。 イチハとならどこにでもいける。 絶対幸福になってやる。
それがタネコにとって最大の復讐だった。
舟に乗って、海を漂流している間、タネコとイチハは不思議とどんなに海が荒れても無事だった。
まるで何かに守られているように、タネコとイチハは安心しながら放浪した。
答えはわかっている。 宇宙樹の力だ。 食べられる魚は舟で捕って、光る力で焼いた。
こんがりと焼けた魚は身が厚く油ものって美味しかった。 タネコは思わず貪るように食べた。
イチハも笑いながら、豪快にかぷりと齧って、「美味しいねえ。タネコ。」と言った。
うんうんとタネコは頷いて、食事を楽しんだ。
こんなに楽しいと思ったことはない。タネコとイチハは初めて楽しいと思った。
海水は水と塩で分解して、水だけ飲めるようにした。
タネコとイチハは、もう宇宙樹と呼ばれた上位生命体の一部として、力を行使できるようになった。
恐怖は無かった。 だってタネコとイチハは一度殺されて死んだのだから。 もう恐怖はあの時からなくなった。
長くて楽しく愉快な漂流はある日、終わりを告げた。
タネコとイチハは奇妙な幸福感を抱いて笑いあいながら、小さな無人島にたどり着いた。
彼らに恐れは無かった。なにかあるのかなと好奇心と興味に満ち溢れていた。
タネコは珍しい野草や、木の実などを探した。 イチハは小動物や、大きな動物はいないか探し回った。
見たことが無い鮮やかな色あいをした動物や、植物をたくさんたくさん見て、タネコとイチハは高揚と興奮のあまりにすごいすごいといいながらはじゃきまわった。
毒性のあるものもあったかもしれないが、上位生命体の一部となった彼らは自動的に毒を分解していた。
その動物や植物の生態や、毒性など、知識がするするとタネコとイチハの頭に吸収された。
まるで何かを学習するように、どんどん知識が増えていく。
頭が壊れないかなとタネコは思ったが、そうはならなかった。不思議だ。 まるで膨大な知識は、タネコが不意に疑問に思った時、ひょいと答えがあらわれる。
どこにしまわれているんだろう。タネコとイチハの頭にはおかしな箱があり、そこになんでも無限に入っているようだ。
とても長くてにょろにょろと美味しそうな身体を動かして、シャーシャーと長く細い舌を出している動物もいた。
蛇とタネコは脳裏に浮かんだ。
タネコはなんだか美味しそうな身体を食べたいと思って、近づいた。
光る力で、威嚇し襲おうとする蛇をタネコは殺した。どうしても食べてみたかったのだ。
食欲には叶わない。 タネコはその蛇から毒性を抜き、皮を剥がし、身をこんがりと焼いた。
淡白な味だが、なかなかいい。これにピリピリときく草を一緒に食べればもっと美味しくなる。
タネコはそう確信して、ピリピリ草、香辛料となる草を探した。
タネコの求めている草は直ぐに見つかった。 これも宇宙樹の力の恩恵だろうか?
タネコはイチハのために、もう一回蛇を殺して、香辛料となる草と一緒に身を焼いた。
良い匂いがしてきた。
「なあに。良い匂いがしたから来たけど。」
イチハが不思議そうにやってきた。タネコは笑って、食べ物よと言って、イチハに渡した。
「へえ。なんの動物だろう?」
イチハはぱくりと食べた。 「美味しい!」「タネコは美味しいものを創るのが上手いね!」
イチハは嬉しそうに、食べ続けた。 イチハにも何の動物が分かったようだ。
「ああ・・これは蛇だね。宇宙樹が答えたよ。こんなに美味しかったんだ。」
イチハはなるほどとうなずいた。
なんという便利な能力なのか・・すぐに答えがわかるとは・・ タネコはもたざる者から一気にとんでもない持つ者に変容して、もはや言葉もなかった。
海の神なんで信じていないけど、何か偶々タネコとイチハの生贄の日に死体が落とされて、宇宙樹が隕石みたいに墜落して、海の中で鉢合わせなんであまりにも出来過ぎで夢じゃないのかと今でもタネコは信じられなかった。
まあ・・きっと神様もあまりにも哀れで悲惨な人生の最後に奇跡を与えたのかもしれないとタネコはそう思うことにした。
だとしたら遅いよと文句も言いたいところだが、他の生贄になった子たちは奇跡は起こらなかった。
それを思うとタネコは少し心が沈んだ。
タネコとイチハはあまりにも悲惨で過酷な人生の果てに奇跡を得たのだ。
運って一体・・とタネコは思わずにはいられなかった。
イチハは頭が良く、なんでもできるようになった。イチハはすでに親を見限り、過去は捨て忘れたように見える。
当然だろう。あの時の両親に見放されたイチハの顔がタネコには忘れられなかった。
あんな親。もうイチハもみたくないだろう。
イチハは美味しそうに笑ってタネコの作った食事をペロリと完食した。
そして、イチハは少し考えていた。
何を考えているんだろう? タネコは待った。
「ねえ。タネコ。 この島を一周したんだ。島は、凹凸はついているけど、一応、食べられる食材と水はあるところだ。滝も見つけた。水洗いもできる。
島の中央に暮らさないか? 実は、どうやったらここで住めるかと考えたら、何か答えが来たんだ。
島の中央までいって、種を植えろって。 宇宙樹の一部の力が宿った種みたいだ。その種を植えると大樹になるんだって。大樹の中で暮らせるようにすると宇宙樹が交信してきたんだ。」
タネコは目を丸くした。 大樹の中で暮らせるようになるのか?
まあ、そこで安全に暮らせるのならいいのだが・・。
半信半疑で、タネコはイチハの動向を見守った。
島の中央まで行ったイチハはここで見ていてと言った。
イチハは何か奇妙な言葉をつぶやいて、小さな種を光る手で包み込んで土の中に埋めた。
そうすると、みるみる種が成長し、タネコは呆然と、木がどんどん成長していって大樹になるのを見た。
「まあ・・。」
タネコはもう言葉もなかった。
大樹はかすかに光を放っていた。 大樹は中央に自動的に扉を作った。
木でできた扉だ。それをタネコは無意識に開けると、中は素晴らしかった。
かすかに発光しているが、目には優しい。
木でできた寝台や、家具。 大きな机と椅子。 タネコとイチハが食事できるところだ。
中には奇妙な木でできた丸いものがあった。
「これは何?」と囁くと、水を温めて、入れて身体を洗うようになっている桶だ。
答えがまたきた。 ああそうなんだ。そういうのを始めて見た。
なんでもはじめてみるものばかりだ。感嘆しながらタネコは興奮して見渡した。
イチハは笑いながら「タネコ。気に入ったかい。」と言った。
うんとタネコは頷いた。「凄いよ。イチハ。まるで神様みたいだ。」
そう言うと、イチハは苦笑した。
「 君もそうなんだよ。タネコ。 君もすっかり変わったよ。
美しくなって、なんでもわかるようになって、食べ物も捕えるようになった。 すごくなったよ。」
タネコはびっくりした。美しい?わたしが? 言われたのははじめてだ。
「病や毒とかにタネコは侵されていたみたいだね。 あの顔がこんなに綺麗になるとはぼくも驚いたよ。」
そう言って、イチハは木で創った手鏡というものをタネコに渡した。 見てと言っている。
タネコは手鏡を見た。そこにはみたことのない美しい女の子の顔があった。
これは誰? わたし? タネコはしばらくその顔に見入った。
ふとイチハを見ると、いつになく真剣な顔でタネコを見ていた。
嗚呼・・なんだかタネコはイチハの思いが分かった。 彼はわたしを番いにしようとしている。
醜い女の子だった時は思いもしなかったが、この顔なら、イチハも十分に満足できるだろう。
男と女の関係は、村で嫌というほど知っている。 女は男の種を宿し、赤子を産むのだ。
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