あまりにもあまりにも偶然に墜落し、とんでもない上位生命体の一部となった彼らです。

栗菓子

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第10話 イチハ 視点

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かつての愛らしいが頭が弱い男の子は、虐待と差別の対象だった。
タネコと同じように、ずっと生き地獄を味わっていた。

どうしてどうしてどうしてどうしようどうしたらいいんだろう。

なす術もなく唯、翻弄されるだけの弱い子。 体のいい玩具。
両親はそんな情けない子に愛想を尽かしていた。

それでもイチハは愚かにも、両親をまだ信じていた。助けてくれるだろうと。愚かだった。

手を差し伸べてくれたのは、タネコだけだった。

タネコも地獄を味わっているのに、イチハだけには優しかった。それだけで十分だった。

運命の生贄のあの日、タネコはすっかり諦めていたように見えたが、イチハはまだ諦められなくて嫌だいやだと喚きながら逃げた。

泣き喚きながら両親に助けを求めたが、結果はあまりにも無情だった。

何もしなかった。唯、見ているだけだった。

それを見て、イチハは絶望した。 やっとここにはだれも助けてくれる人はいないとわかったのだ。

あまりにも愚かすぎた過去の自分を思い返して、イチハはへらりと笑った。


頭が良くなった今の自分が見たら、呆れる事だろう。やっとわかったのか。とうんざりして忠告したかった。


でも皮肉にも、運命は、イチハとタネコを生かし、ここまで連れてきた。

生き延びるのに必死で、優しいタネコとしか思っていなかったが、タネコはすっかり変わっていた。
美しくなって、前より若返ったように見えた。

これもあの宇宙樹の力の恩恵だろう。

初めてイチハはこの島でタネコを異性の伴侶、番の対象として見た。

タネコとなら、子どもをつくりたい。 いや、タネコしかいないのだ。もう同胞は。

タネコもそれを了承してくれた。イチハは嬉しかった。 地獄を味わった後、タネコのような信頼できる番を得ることができるなんで・・夢のようだと思った。

初夜の儀式は、夢のように気持ちが良く、タネコとイチハも一つになりたいようにきつく抱きしめあった。

それからはイチハは何でもできるようになった。タネコのために何か毛布とか作りたいと思ったら、自然とできるようになった。

ああ宇宙樹の力の恩恵だ。

イチハは万能の力をもって、なんでも創れるようになった。舟や、桶。生きるのに必要な道具。寝台

タネコも目を丸くしてイチハの創造を見ていた。

かつてのイチハにはできなかった事だ。新しいイチハを見て、さぞや驚いただろう。

その顔も愛らしくイチハは思わずうっとりとなった。

タネコはイチハの願いの通り、たくさん同胞を生み出してくれた。 嬉しい。タネコはイチハの望みを叶えてくれる。

タネコと一緒ならここならずっと幸福に暮らせる。子どもたちを育てて、たくさんたくさん幸福になろう。


その願いはかなえられた。

子どもたちが成長するまで、イチハとタネコは良い父親と母親になろうと努めた。


できるだけ愛を与えた。与えれられなかったタネコと僕の分まで愛そう。

そのせいだろうが、どこか奇妙で、異質な賢さを持った子どもたちは愛をなんとなく感じて居る様だ。

普通じゃないけど、とてもいい家族だったとイチハは思ってはいる。





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