あまりにもあまりにも偶然に墜落し、とんでもない上位生命体の一部となった彼らです。

第13話 シーシュポスの刑罰

シーシュポスの刑罰は、頭が良い罪人にとって最も恐れる刑罰だった。

古代の神々にちなんでガリア王国は、王族に反逆や、反乱の意志を見せた知識人や、聡明な人たちを捕えて、頭がおかしくなりそうな無意味で無駄な労働をさせた。

シーシュポスの刑罰は、
神々の逆鱗に触れた罪人シーシュポスが、
岩を支えて、山の頂上まで上がらせて、するとその岩はまた転落し、罪人は、その岩をまた頂上まで上がらせるのだ。果てしなく繰り返すこの無限の刑罰に大抵の罪人は、自分のやっていることが全てが無駄で無為な行為であることに気づき、虚無を感じる。それでも永遠にやらされるのだ。罪人は。大抵は発狂する。


人間は無意味で無駄な事に耐えられない。それも繰り返し同じことをして同じ結果を延々と見る羽目になるのは、どんなに愚鈍な者でも薄々気づく。
全てが無意味なことを強制させられている。うんざりだ。

耐えられるとしたら、何かの境地に達した者と、頭が弱く何をしているのかも理解できない人だ。
でなければ心がない人だろう。


嗜虐的で加虐性があるガリア王国はこの刑罰を好んだ。

聡明な女には泥にまみれた水溜まりから泥水を大きな桶にくませて、大きなコロッセウムのような広場を1周させられる。

そして、炎天下の中、疲労は激しく、やっと終わったと思いきや、今度は、その桶の泥水を沼まで戻して、また泥水を汲んで、2週させられる。

これを延々と繰り返すのだ。地獄のような刑罰だった。

途中で、倒れるものは後を絶たなかった。最後には火あぶりになって踊っているようにふらふらと息絶えた人も多かった。

夜になって、やっと刑罰はいったん終わり、粗末な食事と水が与えられる。

しかし、朝になれば、地獄の刑罰が始まる。　女たちは朝を恐れるようになった。

中にキャハハハと笑って半ば狂いながら、刑罰をしている人もいた。


男たちは、もっと過酷な刑罰があった。

穴や岩を延々と掘っては、それを元に戻すために、その堀った穴に、山のような土を埋める。

それが終わったら、今度は、また別のところで同じことを繰り返されるのだ。


何の意味もない行動であり、それが延々と繰り返される。

何をやっているのだろう・・。と彼らは考えながら、この無機質な繰り返しの刑罰の労働をする。


だんだん彼らは思考するのを止めて、痴呆状態や、麻痺状態になり、何も感じなくなっていく。


同じ行動。同じ結果。　彼らは機械的に死んだように虚ろな目をして唯無意味な行動を続ける。


それは思考をすることを好む人や、知識人の成れの果てだった。


彼らはもういいもういいと呟く者もいた。　もうたくさんだ。なんで。こんなことを。叫ぶように喚き散らす者もいたが、それでも強制的にやらされるのだ。


地獄の果ての虚無の思いを彼らは抱えて労働していた。


ガリア王国は、人間の心理を良く把握していた。　何が精神的に一番堪えるかよく承知していた。

中には、耐えられた僅かな人達もいたが、何故か彼らはその理由を話さなかった。

いつかわかるとぼつりと彼らは言った。