あまりにもあまりにも偶然に墜落し、とんでもない上位生命体の一部となった彼らです。

栗菓子

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第23話 ある村娘の密愛

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ガリア大陸の辺境の片隅で、村娘は小さな村で穏やかに暮らしていた。

15才位の適齢期で、そろそろ夫も得なければならない時だ。


今のところ、畑の耕した作物を村長に貢ぐだけで、あまり重税に苦しんではいない。 
しかし私たちが創った作物がわたし達が食べられないなんで変よね。

村人が食べられるのは、貢ぐことができない傷物の作物や、残り物と、野草や、小動物を狩って肉にして、スープに
して栄養がとられるように色々工夫して、創った料理だ。

ナラという娘は、平凡に過ごした。貧しくも穏やかな素朴で少し変な日々を過ごしていた。

彼女は美しくもなく精々眼が綺麗と言われる程度の要望だった。 瞳は、少し黒みかがった藍色だった。

光によって色が違って見えるとナラは好奇心旺盛な友人に言われていた。

胸も膨らみ始めた。秋波を送る男たちも現れ始めた。もうそろそろ夫を決める時だ。


両親は、出稼ぎで、もう少し賃金が多めに出る都会へ行った。どんなところだろう。ナラは、家を守るために村へ留まった。

ここらへんは盗賊など少なく、警備も厳しく、治安は悪くなかった。

ほんとうに何もない価値のない土地だからだ。 かえって悪人が跋扈しない。こういうのっていいわよね。

先祖がなぜこんな僻地に住んだのか彼女は分かったような気がした。

ナラという名前は植物の名だ。 一番良い名前を付けられたらしい。


何故か、この村では、子どもに植物の名前が良く付けられる。


ナラは、女友人が顔を赤らめながら、素敵な人と一度だけ踊った。と言った。

この村の少し離れたところには、広場があり、年に数回、お祭りがある。 

そのお祭りは、平民も貴族も無礼講で楽しむお祭りだ。最も貴族は来はしないだろう。 こんな辺鄙なお祭りに興味があるとしたら相当な変わり者だ。


女の友人は、ナラにとって感情も豊かで、誰よりも生き生きして見えた。 名前はソアラと言った。


植物の名前ではなく、星の名前だ。 きっと、名の言霊の通り、性質もなんとなく決まったのだとナラは思った。



赤毛の長い髪を結い上げて、美しく祭りのために装うソアラを見て、ナラはなんだか同じ年齢なのに、母親のように感慨深い思いを抱いた。

ナラには、どこか老成したところがあった。


ナラはあまり祭りを好まないので、せっかくのソアラの誘いを断って、家にいると言った。
ソアラは、子どものようにどうしてと言ったが、ナラは家にいるのが好きなのと、ごめんね。と謝った。

ソアラはしぶしぶと「分かった。他の友達と行くわ。」と頬をむくれて去っていった。

ごめんなさい。ナラはなんだか娘の気分を削いだようで申し訳なく思った。


ナラは夜でも開いている祭りを思って、やはりソアラの誘いに乗ればよかったのだろうかと溜息をついて、編み物をした。

もう夜だ。蝋燭の火も惜しい。早めに眠ろうとナラは粗末な夕食を終えて、寝台に向かった。

眠りについていると、夢を見た。誰かが、身体をまさぐっている。嫌だ。はしたない。わたしはこんな欲望があったのだろうか? うつらうつらと誰かに愛撫されているからだを感じなから、不意に悟った。
いいえ。違う。これは誰かが本当にわたしを触っているんだ。

深い眠りから一気にナラは浮上し、意識が覚醒した。



まさか、夜這い?ここには夜這いの風習がある。 子孫を創るためだ。女は村人の共有財産に近い。それでも一定の掟があって、大抵初夜は村長や、年嵩のものが手ほどきをするはずだが・・。

こんないきなりの夜這いはあったのだろうか? 何もかも唐突でナラにはどうしていいか分からなかった。

ナラはか細く、「貴方は誰?村の人ではないわね。」とナラの身体を眠っている間に蹂躙している男に冷静に怒らせないように尋ねた。

ナラの予測はあたった。
「へえ・・・よくわかったな。ここには夜這いの風習があるんだろう。そう聞いたから戯れに俺もしてみたんだ。」
子どものように無邪気に自分が何をしていないようだった。

ナラは溜息をついて、「どこのだれかは知りませんが、夜這いは村人だけの風習です。外部の人がやったら掟を破ったと言われてリンチを受けるかもしれません。お願いですからそっと逃げてください。」
と男に懇願した。


男は子どものように「俺が嫌いか?」とナラに尋ねた。

嫌いも何も、顔も見えないし、何もしらない男なのに・・ナラは呆れたが、根気よく男を宥めた。

「この事がばれたらわたしも貴方も厳しい制裁が加えられるかもしれません。」

男は「ばれなければいい」とナラに言った。

そして、愛撫を止めなかった。獣のようにナラに覆いかぶさった。

ナラは抵抗を止めた。下手な抵抗はしないほうがいい。男の情欲をかえって煽りかねない。


初めは乱暴にナラの花を散らされた。痛みはかすかにあったが、これも儀式だとナラは思うことにした。

男は、ナラの身体を気に入ったようだ。ナラを執拗に追い詰めて、女として開花させた。


一夜にして、ナラはかすかな悍ましさとともに男と閨を共にした。

それは十夜続いた。 ナラはあれ一回きりだと思ったのに、男は恐れ知らずだ。

ナラは諦めて受け入れた。 三夜にして、ナラは男がとても美しい顔をしていることを知った。月の明かりで、端正な顔が見えたのだ。 だんだん男は激しさから柔らかな交合を好むようになった。
ナラの反応を見るようになった。ナラは顔をふせて見られまいとしたが、男は顔を見せろと命令した。

嗚呼・・この男は命令をし慣れている。ナラは貴族かもしれないと思った。

月明りで、ナラは裸にさせられ、美しい肢体を男にまざまざと見られた。

「顔は凡庸だが、美しい身体をしているな。」「良い身体だ。」


男の情欲を、ナラは受け入れた。この事は、誰にも話したくない。ナラも女としての悦びをしってしまったのだからだ。

ナラはあまり感情が希薄で、怒りは少しあったが、女は受け入れる性なので、柔らかくなるべく男を宥めようとした。


「お前は男の扱いを心得ている。良い女だ。」

ナラを女にした男はそう呟いた。あまり嬉しくない褒め言葉だ。


十夜も、男と閨を共にすると、かすかに男の心が分かるようになった。情欲と僅かな愛。男は本質的に凶暴性がある。しかしナラといると和らいでいく様だ。

ナラはこれも運命と、男を受け入れて、男の愛という感情に浸った。

「お前と離れたくない・・でも俺はもう行かなきゃ。」

一夜とは違って、男はナラの髪を柔らかに撫でた。男は名も言わずに夜明けとともに消えた。

ナラはあれは束の間の夫だと思った。 男の眼は奇妙にも赤と黒に混じりあって虹彩が光っていた。


よく分からないけど、あれはもしかして・・ナラは考えるのを止めた。


これは運命の悪戯によって男とナラを引き合わせたのだろう。

不思議と、彼らの密会はばれなかった。 子を宿しないかとナラは思ったが、宿しなかった。

何故だろう。合わなかったのだろうか?


ナラは漠然とそう感じた。もう消えた男にナラは唯、夢のようだったと思うだけだった。

友人のソアラは敏感に、「ナラ、美しくなったわね、どうしたの?」と言った。

ナラは言葉を濁して旨く誤魔化した。

男と再会するのは数年後だった。


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