あまりにもあまりにも偶然に墜落し、とんでもない上位生命体の一部となった彼らです。

栗菓子

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第24話 ある従者 視点

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「見ろよ。面白い村と娘が居るぜ。夜這いの風習もあるらしい。試しに行こう。」

我が主人は、美しい顔を子どものように無邪気に笑って、獲物を狙う目をして村のあたりを見ていた。

従者はやれやれ。また我が主人の好奇心と悪趣味が始まったか。と思うだけだった。


主人は興が乗ったら、何もしないが、興が削がれたら、残虐に暴れまわって、その一夜限りの女を殺めたり、村を焼き滅ぼすかもしれない。

それも仕方がない事だ。我が主人は、ガリア王家の三貴子のラテル王子の落し胤と言われる。
王族の瞳と、美しい花のような容姿。支配者のような雰囲気。能力も高く、自尊心も強い。

貴族の庶子はよく或ることだ。あちこちばらまいていることだろう。

しかし、その中で明確に王族の瞳を持っている者は、何故か特別な地へ送られた。

敵や、いずれ敵になるかも知れない地に庶子は送られている。密偵や、暗殺の役目も背負っているのだろう。


豪奢な家と、大金、多くの使用人と従者と引き換えに、その地の情報などをガリア王家に常に送っている。

それにしても、この一旦、何の価値もない普通の無辜の村人の村に見えるが、王家の血を引く者には何が見えているのだろう?

「変な雰囲気と特殊な力を持っているぜ。今のところ、ガリア王家にとって脅威にはならない血を持つ村にみえるが・・。」

戯れに、或る夜、主人は、夜這いへ行った。相手はナラという村娘だ。

嗚呼、運の悪い娘だ。主人の機嫌を損ねれば可哀相だがその場で玩具のように殺されるだろう。

従者は、娘の命運が尽きたなと冷ややかに思った。従者は魑魅魍魎のガリア王家で生き残った密偵の血を引いている。どこか冷酷で、冷淡な血で獲物が殺される瞬間を見守った。


主人が、村娘ナラの家へ侵入していくのを見届けて、しばらくしたら血まみれで帰って来るだろうと予想した。
しかし、予想外にも、長い長い間、主人は家から出なかった。

驚くことに、主人はいつになく村娘ナラを気に入ったようである。

「俺をあまり恐れない冷静な女だった。顔は凡庸だがよい身体だった。また行きたい。」

主人は少しナラに心惹かれたようで、なんと十夜も夜這いをしていた。

よほど体の相性がよかったのだろうか? 心なしか主人はナラと交わって、凶暴な雰囲気が和らいだ感じがする。


主人がこれほど女を気に入ったのははじめてだ。やはりなにか特殊な力を持っていたのかもしれない。

普通の無辜な村娘が主人に狙われたら、泣き喚くか暴れるか叶わぬまでも戦うか、雌として必死に媚びを売るかだ。

それらをした女達は、狂ったラテルの血を引く主人の癇に障り、自慢の髪や顔を焼いたりして、絶望と悲嘆に女達を沈めた。それが当然だと主人は信じて疑わなかった。哀れな犠牲者となった女達。可哀相に。彼女たちは運が悪かった。
自殺したり、発狂した女も多かった。その家族は復讐の思いで、主人を狙ったが、いずれも実力不足で返り討ちにあった。

主人はきっと何かに守られた存在なのだろう。 獰猛で残虐で美しい花の容姿をしているのに、中身は化け物のような獣の本性を宿している。王家の血はやはり尋常ではない。


ナラという村娘だけが無事に生き延びた。 それも主人の僅かな愛を得て、何事もなく、彼らは別れた。

「あの女の名前はナラという様だ。変な名前だな。嗚呼俺の名前を言ってなかった。 あの女といるとなにか気持ちが良かった。ずっとあの女と居たいと思ったが、そうもいかない。俺は他の道がある。あの女だけは生かしてやる。
まだ会えるかもしれない・・。」


主人は、珍しく子どものように心細そうな顔をした。

何度も名残惜しそうに、主人は、村を見ながら去っていった。


なにかとても大事な宝物を堕としたような子どものような無防備な顔だった。







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