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第3章 動乱
第2話 琥珀
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琥珀は、宝石の中でも珍しい種類の奇石であった。
かつてはアンバー『海を漂うもの』と海から引き上げられる奇石であったため、そう呼ばれていた。
琥珀は、数千万年から数億年前の樹木の樹脂が地中に埋もれて化石化したもので、中には、昆虫の死骸が中に絡み取られているのもあった。
幻想的で透明なとろりとした淡い蜜のような色合いの中に、永遠に固定された亡骸。
長寿と抱擁と言う意味であり、帝王の石とも尊ばれた奇石であった。
琥珀の色合いをした艶やかな髪と瞳をした青年は、容色は、真珠には劣るが、不可思議な魅力に溢れていて、貴族の中でも最高の者たちが、琥珀と名付けられた男娼の閨を求めた。
彼は、真珠、翡翠と並ぶ三大娼婦であった。時の帝さえも、いつになく寵愛をしていて、琥珀もそれを嬉し気に、しかし慎重に受け止めていた。
ー琥珀は帝王の石だもの。仕方がないね。相性と運なんだよ。
てらいもなく無邪気に笑う男娼は、真理を突いていた。彼の言う通りだ。琥珀は不思議と雲上人である帝王と閨を共にしても自然体であって、あるべきこととして受け止めた。
熱愛はないが、傍らにいると自分が帝王の一部になったような感覚を受けた。これが情なのだろうか?忠誠心?それらが混合して、琥珀はここに座して帝を待っていた。
ーだが、アデル様の悲劇があってからユデル様は幽閉され、イツキは帝の所有物となった。
かつてなく帝はイツキ・クランという魔性の者を溺愛し、大海のように溺れていた。
ー嫉妬が無いとは嘘になる。しかし、イツキ・クランは恐らく帝に最も近しい血を引いている。
己の名前が帝王の石とあったように、イツキも帝の一部となる何かがあるのだ。
ー琥珀は知っていた。
力は共鳴する。想いも意思もまた共鳴する。帝が、己の者ではないものを傍らに置くわけがない。
それは愛よりも深く結ばれた絆というものがあった。
ーもしイツキ・クランが猛毒の王スレンであれば、帝に仇為すかもしれない。
スレン神はかつて皇国に反逆を示した。琥珀は忠誠の僕として、イツキを屠らなければならない。
しかし、奇妙にも帝はこの毒の王をこよなく愛おしんでいる。
冷淡な無機質な目が、僅かに熱を込めて、イツキ・クランを見つめている。
ー帝は破滅衝動があるのか?長い間を生きた者は徐々に狂い果てる。強靭な精神力が理性が狂気を制圧しているだけだ。
帝は外見上は若いが、数百年は生きていると噂されている。
皇国は、己の長命と永遠の若さと美にとりつかれ、悍ましい実験の果てに不老不死を願っている。愚かな。例え成功しようと、精神や肉体は変質し、醜い化け物に変容するのかほとんどだ。失敗した廃棄処分の者達は夥しいほど、地の底に放り投げられた。
その埋めた地上に、彼らは美しい花や植物や、大樹などを植え付けた。
多くの敗者を糧に、花は咲きほこる。残酷だが醜悪なまでに美しい光景だ。
琥珀はうっとりと、絢爛華麗に生を謳歌する花を眺めた。
ー皇族は命と血に妄執的なまでに執着する反面、破滅する傾向に傾く。極端から極端に偏る血筋だ。
盤石と思われた皇国も、白蟻のように、砂糖に群がる貴族共が食い散らかしている。
この腐敗は徹底的に根本的な改革を行わないと、いつかは破綻するだろう。
だが、帝は傍観者に徹している。滅びるのならそれも定めと彼は達観している。
ーそれでは滅びは覆せぬ。よほどの気力と胆力のあるカリスマ性のある英雄が現れなければ、ゆっくりとこの国は衰退するだろう。
琥珀は、皇国の未来がおおよそ予測できた。だが、一介の男娼になにかできよう。
できるとしたら、皇国でも無類の才能を発揮して、強い影響力を与えていたデイア・ローシュだけだ。
ー彼は突如消えた。これは位の高い貴族が邪魔な敵を排除し処分するやり方だ。
恐らくは生きてはいまい。琥珀は溜息をついて、真っ赤な花を手折った。棘が指を指し、血がこぼれたが、琥珀は一向に頓着しなかった。
ー猛毒の花か……。それは皇国に致命的な破壊をもたらすのか。それとも薬となりえるのか?
琥珀にはまだ何も分からなかった。
帝王の癒しとなった男娼は、密やかに動向を見守った。
かつてはアンバー『海を漂うもの』と海から引き上げられる奇石であったため、そう呼ばれていた。
琥珀は、数千万年から数億年前の樹木の樹脂が地中に埋もれて化石化したもので、中には、昆虫の死骸が中に絡み取られているのもあった。
幻想的で透明なとろりとした淡い蜜のような色合いの中に、永遠に固定された亡骸。
長寿と抱擁と言う意味であり、帝王の石とも尊ばれた奇石であった。
琥珀の色合いをした艶やかな髪と瞳をした青年は、容色は、真珠には劣るが、不可思議な魅力に溢れていて、貴族の中でも最高の者たちが、琥珀と名付けられた男娼の閨を求めた。
彼は、真珠、翡翠と並ぶ三大娼婦であった。時の帝さえも、いつになく寵愛をしていて、琥珀もそれを嬉し気に、しかし慎重に受け止めていた。
ー琥珀は帝王の石だもの。仕方がないね。相性と運なんだよ。
てらいもなく無邪気に笑う男娼は、真理を突いていた。彼の言う通りだ。琥珀は不思議と雲上人である帝王と閨を共にしても自然体であって、あるべきこととして受け止めた。
熱愛はないが、傍らにいると自分が帝王の一部になったような感覚を受けた。これが情なのだろうか?忠誠心?それらが混合して、琥珀はここに座して帝を待っていた。
ーだが、アデル様の悲劇があってからユデル様は幽閉され、イツキは帝の所有物となった。
かつてなく帝はイツキ・クランという魔性の者を溺愛し、大海のように溺れていた。
ー嫉妬が無いとは嘘になる。しかし、イツキ・クランは恐らく帝に最も近しい血を引いている。
己の名前が帝王の石とあったように、イツキも帝の一部となる何かがあるのだ。
ー琥珀は知っていた。
力は共鳴する。想いも意思もまた共鳴する。帝が、己の者ではないものを傍らに置くわけがない。
それは愛よりも深く結ばれた絆というものがあった。
ーもしイツキ・クランが猛毒の王スレンであれば、帝に仇為すかもしれない。
スレン神はかつて皇国に反逆を示した。琥珀は忠誠の僕として、イツキを屠らなければならない。
しかし、奇妙にも帝はこの毒の王をこよなく愛おしんでいる。
冷淡な無機質な目が、僅かに熱を込めて、イツキ・クランを見つめている。
ー帝は破滅衝動があるのか?長い間を生きた者は徐々に狂い果てる。強靭な精神力が理性が狂気を制圧しているだけだ。
帝は外見上は若いが、数百年は生きていると噂されている。
皇国は、己の長命と永遠の若さと美にとりつかれ、悍ましい実験の果てに不老不死を願っている。愚かな。例え成功しようと、精神や肉体は変質し、醜い化け物に変容するのかほとんどだ。失敗した廃棄処分の者達は夥しいほど、地の底に放り投げられた。
その埋めた地上に、彼らは美しい花や植物や、大樹などを植え付けた。
多くの敗者を糧に、花は咲きほこる。残酷だが醜悪なまでに美しい光景だ。
琥珀はうっとりと、絢爛華麗に生を謳歌する花を眺めた。
ー皇族は命と血に妄執的なまでに執着する反面、破滅する傾向に傾く。極端から極端に偏る血筋だ。
盤石と思われた皇国も、白蟻のように、砂糖に群がる貴族共が食い散らかしている。
この腐敗は徹底的に根本的な改革を行わないと、いつかは破綻するだろう。
だが、帝は傍観者に徹している。滅びるのならそれも定めと彼は達観している。
ーそれでは滅びは覆せぬ。よほどの気力と胆力のあるカリスマ性のある英雄が現れなければ、ゆっくりとこの国は衰退するだろう。
琥珀は、皇国の未来がおおよそ予測できた。だが、一介の男娼になにかできよう。
できるとしたら、皇国でも無類の才能を発揮して、強い影響力を与えていたデイア・ローシュだけだ。
ー彼は突如消えた。これは位の高い貴族が邪魔な敵を排除し処分するやり方だ。
恐らくは生きてはいまい。琥珀は溜息をついて、真っ赤な花を手折った。棘が指を指し、血がこぼれたが、琥珀は一向に頓着しなかった。
ー猛毒の花か……。それは皇国に致命的な破壊をもたらすのか。それとも薬となりえるのか?
琥珀にはまだ何も分からなかった。
帝王の癒しとなった男娼は、密やかに動向を見守った。
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