深淵の村

栗菓子

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第5話 澱

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偉い人達から与えられた村・・ここはそういう村だ。 自力で開墾した村じゃない・・。

だからどこか投げやりで無気力なところなのだろう・・。ソンはそう思った。 

ソンは、北の国で育った。そこでは、お父さんもお母さんも体格が良く、いつも働いていた。 

ソンのいた村は、貧しいから必死でみんな頭や、身体も動かして頑張っていた。 貴族のかたも働き者で、ずっと
畑や、用水路や、城などの機能を調査しては、修繕したり、あるものを徹底的に使って、環境も考慮されて美しい水や、空気、 風力発電など様々な技術を試みていた。

勿論、悪場もあったが、ソンは仕方がないと目をつむった。本当は何故目が潰れる酒や、毒を食べて生きている集落があるのかと不思議に思っていたが、止めた。

多分、もう後がない人たちが最後の場所として追いやられたのかもしれない。

もう子供はいないだろう・・。本当の最後だ。ソンは無意識に解っていて逃げるように悪場から遠さがった。

子どもが殴られていた・・。ソンは見てはいけないものを見たと思い、逃げるようにさった。

ソンの村は子どもを悲鳴が上がるまで殴らない・・。そんなの非効率だからだ。 こどもはちゃんと育てればまともに働く・・。
出来損ないはすぐに処分されていた・・。食料もなかったからだ。或る意味非情だが、合理的だった。

幸いにもソンの両親はまっとうな労働者だった。そのお陰でソンも働き者になったのだ。

子どもは必ず環境に左右される。 影響を受けるのだ。 


貧しいが、穏やかな日常は、ソンが20才になるころいきなり破られる。


戦だ・・。ずっと北の国と、隣国は内乱があった。その度に、和平もなされていたが、とうとう全面戦争になってしまった。

今まで平和主義だった貴族は、倒され、好戦的な人たちが上に立ってしまった・・。

嗚呼・・とうとう来た。ずっと亀裂が走っていた世界が一気に壊れた・・。


ソンは一方的に徴兵された。両親は抗ったが無駄だった。 その場で射殺されたのだ。 ソンは呆然と力強い両親が
血を流して倒れるのを見るしかなかった・・。

後はあまりよく覚えていない。 ソンは悲鳴と嫌な音ばかりなる戦場で、古臭い銃を持ちながら、見知らぬ兵士と戦い、生きるために殺した。

それでもソンはどこか夢をみているようだった。乖離状態になっているのかもしれない。

兵士たちは、精神を安定させるため、悪い薬や、酒に溺れた。

嗚呼ここはあの悪場と同じだ。ソンも追いやられたのだ。屠殺される家畜のようになったのだ。


それでもソンは生きることを諦めなかった。飢えと苦痛に苛まれながらも、ソンは生き続けた。

突然、起きた戦は、やはりいきなり終わる。 仲間は数十人いたのに、生き残ったのはほんの数人だった。

彼らは、生きる屍のようになり、人殺しの技量だけは高められた。

ある日、突然、ソンは上司からこの村に住めと言われ、無言で従った。

ソンの日常はいつもいきなり終わり始まる。


この村は、綺麗で快適だがどこがすえたような匂いがする。 活気がない。 死の匂いが濃厚な村だ。

なぜか彼らは無気力に生きて暮らしている。人嫌いのようで、ある時、突然奇声をあげて走り回り、突飛な行動に走る。

「 ここはね。国の厄介者を隔離した村よ・・綺麗でしょ。でもね。ゴミ箱なのよ・・。中にはとても優秀な人もいたわ。本当にそれぞれの事情があってここに寄越されたの・・ランダムに選ばれたらしいけどね・・どこか共通があるような気がするのよ・・。」
上品そうなおばあさんがそう言った。


そういうものだろうか。ここはゴミ捨て場だったのか?ソンもゴミになったのだろうか?

ソンには分からないことばかりだった。 ここは澱なんだ。

ソンはずっと貧乏だが穏やかな村から、だんだん澱へと沈んでいったのかもしれない・・。


ソンはこの綺麗な村が嫌いになった。













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