いかでか

栗菓子

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掃き溜めに鶴

第3話 奴隷の人生

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子どもは運が良かった。 
奴隷として商品として売ろうとする目論見で拾ったとしても、無知な子どもに、世界の広さを僅かでも男から教わったのだ。あのままでは死ぬところだった。
「お前の瞳は美しい。珍しいから、そういう嗜好がある人はお前を可愛がるだろう。」
「もっと運が良ければそこで生き延びることができるかもしれない。」
不意に男は、子どもの下着を覗いた。嗚呼、アレがない。女だ。
子どもは、自分が女であることを、男によって知った。 アレは男根だ。男は男根がある。女は穴がある。
女の穴は男の男根を受け入れるようになっている。はじめては痛いが、慣れればそうでもない。気持ちよくしてくれる主人もいる。
子どもは拾った男から、男と女の営みを教わった。こどもは驚くことばかりだった。
じゃああの死人みたいな父と母も、男と女の営みをして、わたしを産んだのか?
まるで亡霊から生まれたような感じだ。
まさかそんなはずはない。何も知らない子どもには想像もつかぬことばかりだった。
「でも父と母は老人みたいだったよ」と男に言うと
「昔はもっと若かったんだろ」「運が悪すぎて老人みたいになったんじゃないか」
はっと子どもは、親も若い時があったんだろうか?と思った。 子どもが自我を持ち始めたころから親は既に老人みたいだった。
「お前は奴隷になるんだよ。とても酷い主人に当たったら殴られたりとても痛い目にあうかもしれない。」
「そうならないためには、たくさんいろいろなことを覚えて、なるべく従順に大人しく従うんだよ。俺も幸いにも寛容な主人に出会って、必死に仕えてここまでこれたんだから。」
男は、拾った子どもに色々教えた。世界のこと。男の人生。全てが子どもにははっとさせることばかりだった。
本当に何も知らないこどもだったのだと子どもは自分を思い知った。
殴られるのは嫌だと子どもは思った。必死で学ぼう。必死で仕えなきゃ。
子どもは決心した。何か起ころうとも頑張ろう。じわじわと死ぬよりましだ。
「そういえばお前名前は?」
男はシンと言った。子どもはまたはっとさせられた。名前は無い。呼ばれたことがない。わたしの子としか言われたことがない。
そんな馬鹿な何故どうして。 あの集落は名前さえもなかったのか?
シンは子どもの呆然とした顔を見て、なんとなく推察した。
「もしかして名前なかったのか?」
子どもはぐっとなった。当たりだ。名前さえもなかった。
シンはため息をついて、俺が名をつけようと言った。
「カリン。お前はカリンだ。花の名前。豊麗。豊かな麗しさ。」
子どもはまた驚いた。あべこべだ。子どもはこんなに貧弱で何もないのに。名前だけはそんなに素晴らしいだなんで
と男に嘆いて言った。
情けない子だなと男は幾分冷ややかになった。
「名前負けしないように、頑張るんだな。精一杯自分を磨く努力をしろ。」
「お前を磨く娼婦にあわせてやる。高級娼婦だ。己を必死で磨いて高級娼婦にまで上り詰めたんだぞ。教養もある。
厳しいがその分実はつく。その娼婦の名はアイラだ。」

アイラ。カリンは嘆きながらも、その名を覚えた。カリンに生きる術を教えてくれる人の名だ。
まだ子どもだったカリンは混乱しながらも、男の言葉に従った。
それが一番カリンにとって最良の道とおぼろげながらに分かったからだ。



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