いかでか

栗菓子

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掃き溜めに鶴

第4話 カリンの修行

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シンは、子どもを拾った。凡庸だが瞳だけは綺麗だ。娼婦としての技量を教えてやってくれ。うまくすれば高く売れるかもとアイラに相談した。
アイラは思った。娼婦の賞味期限は短い。よほど運の良い娘や、才能のある娘だけが長く持つ。
アイラも高級娼婦に上り詰めただけはあって、運も良く才能があったのだろう。
しかしアイラも少し年老いた。そろそろ指導する側に回る時が来たのかもしれない。
これも引退するきっかけになるかもとアイラは思った。
カリンとあった時、がりがりにやせた貧弱な身体。凡庸な顔と茶色の髪。しかしそれを補うに余りある美しい瞳。
金と茶と緑の入り混じった瞳。幻のような瞳だ。アイラは宝石より美しいと思った。
アイラはカリンを高級娼婦に仕立て上げることに決めた。
シンには了承した。
かくしてカリンの修行が始まった。
まずは、貧弱な身体を娼婦らしく魅惑的な身体にすること。アイラは栄養のあるスープと果実を食べさせた。
特殊な甘い果実を食べさせると、肉質も柔らかくなり、匂いも花のような香しい匂いになる。肌の質感も良くなる。
言葉や、礼儀、知識、教養など無知な子どもにはとても辛いだろうが、厳しく教え込んだ。
カリンが根をあげようとすると、アイラは心を鬼にして腹を蹴った。
「私以上に酷いことをする主人はいるのよ。私のいうことを全て吸収しないと貴方は運が落ちて下級娼婦になるかも知れない。知っているかしら?下級娼婦はとても殴られたり、首を絞められたり、主人に殺される運命が多いのよ。」「貴方は殺されたいのかしら?」
カリンは呻きながら蒼白になった。アイラの言うことは真実だと気づいたからだ。
カリンは歯を食いしばって、申し訳ありませんとアイラに土下座した。なにもない子どもにとって脱落することは死の運命が待っているということなのだ。
今更ながらに、カリンは自分の運の良さに気づいた。
世界を教えてくれた男と、高級娼婦になるために教えてくれるアイラに出会った事だ。
カリンは二度と弱音を吐かなかった。カリンは不思議と真実と嘘を見分けられた。
これもカリンの秘めた能力だった。
それから、カリンの壮絶な修行が続いた。カリンは耐えた。死ぬよりましだったから。どうしても死にたくなかった。世界の一片を知ったら、死にたくない一心で血反吐を吐くような思いで学んだ。
涙も枯れ果て、心の制御も学んだ。客の心理さえも読み取ること。洞察力。危険な客と分かったらそっと監視している男に助けを求める事。商品を無駄に傷つける客を娼館の主は苦々しく思っていた。
下級娼婦ならともかく高級娼婦はたくさんお金をかけてきたのだ。
娼館の主にとっては大きな損失なのだ。長く持つ商品のほうが好ましいのだ。
数年後、カリンは見違えるように美しくなった。アイラのように魅惑的な高級娼婦のようになった。
凡庸な茶色の髪は艶やかになる油で茶色が金にみえるぐらい、整えられた。
長い髪は丁寧に結い上げられて、深紅の髪飾りで華やかにされた。耳には緑の耳飾り。日に焼けないようにされた白磁の肌  深紅の紅を塗られた唇
深紅の衣装に金糸で花の紋様がされた豪奢な衣装。
そして金と茶と緑の幻のような瞳。すべてが幻想的だった。
アイラが手塩にかけた高級娼婦が出来上がったのだ。
夢のように美しい娼婦だった。アイラは自分の作品に目を細めた。ここまで美しくなるとは思わなかったのだ。
感慨深かった。
カリンはアイラの思いを読み取って深くありがとうごさいますと感謝をこめて言った。
何もない子どもなどアイラでなかったらとうに打ち捨てられていただろう。カリンにはありありと予想ができた。
ここまでこれたのは、アイラのお陰でもあるのだ。
鏡を見る度に、カリンは昔のがりがりに痩せた自分を想像できなかった。餓死寸前の子どもだったのだ。
なのに、今は胸も膨らみ妖艶な見知らぬ女が映っていた。
なぜ。どうして。あの頃の自分はどこへ行ったの。無知な子どもが囁いている。
さよなら無知な子どものわたし。
これからアイラのためにも、誰よりも妖艶な高級娼婦になるわ。彼女は女優にも向いていた。
愛するふり。感ずるふり。客を篭絡する手段。すべてをカリンは本能的に学んだ。
さあ、高級娼婦カリンの誕生だ。


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