いかでか

栗菓子

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掃き溜めに鶴

第11話 アサミ視点

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アサミはよくあるどこにでもいる娼婦だった。唯、少し見栄えや頭が良かったから少し運が良かったから、高級娼婦への道を歩んだだけの女。アサミは少しつまらなかった。このままこの一生で終えるんだなと思うと退屈だった。
その平穏な日常がいかに貴重なものかもわからずにアサミは不満を抱いていた。
そんなアサミが気になるのははっとするもの、珍しいものだった。
ある日、アサミは突然何かに掴まれたように息苦しくなった。初めての経験だった。なにこれ。なんなの。
アサミは窒息しそうに苦しかった。まるで魚が陸に打ち上げられてヒューヒューいっているみたい。
苦しんでいる途中、バアンと強く背中を叩かれた。何をと思う間もない。何度も叩かれてだんだん息ができるようになった。カリンだ。カリンは何もない空を睨んで出て行けというように叩いた。
アサミは息ができるようになった。不思議なことだった。
やっと元に戻れるようになったごろ、カリンは苦々しい顔でアサミを見た。直感でアサミはカリンには何かあると
わかった。なにか見えないものを見れる人なんだ。
問い詰めると、カリンは黒いモノが憑くのが見えるらしい。おもわず黒いモノを退散した。
頭がおかしい女と言われるのが嫌だから黙ってと約束された。
アサミは頷いた。あんなもの。経験しなければわからない。
身近なところでとても珍しい人がいた。他にもいるのかもしれない。アサミはわくわくした。
それからカリンにまとわりつくようになった。
でもあのことはあれきりらしい。つまんないの。アサミは子どもの様だった。

ある日、崩壊の時が来た。

アサミは客の接待を終え、休もうと、寝台へ入った。しばらくうとうとしていると、破裂するような音がした。
何が起きたのと思ってアサミは慌てて大広間へ行った。盗賊。暴動。放火。ならず者たちが外で暴れている。
不吉な情報が皆の話から聞こえてくる。アサミは蒼白になった。
館の主人も外を見て蒼白になって、急いで扉を頑丈にしようとした。屈強な男たちが抑えてならず者たちが入ってくるのを抑えようと破られまいと必死になっていた。
アサミにも、侵入されたらお終いだということが分かった。怖くてカリンを探した。
カリンが見えた。ほっとして行こうとすると、扉が破られた音がした。窓も割れた。アサミは悲鳴を上げた。
見も知らぬ男たちが下卑た声や奇声を上げて、カリンに襲い掛かった。カリンは突き飛ばされて激しい音と共に倒れた。カリン!アサミは混乱しながらも近寄ろうとしたが、大柄の男に掴まれて持ち上げられた。
さらっていこうと男が言った時は絶望した。カリン達も攫われるようだった。
主人や館の男たちは、ならず者たちに傷つけられ血を流して呻いている。誰も助けてくれない。
アサミはあまりの急展開についていけなかった。

気づいたら。とても汚いところで、アサミやカリン、さらわれた人たちは閉じ込められて、盗賊たちに暴行されていた。殺されていく人が多くなった。アサミは嗚呼私たちも。とアサミは事態の全てを悟って絶望した。
まだ生きている仲間たちを守ろうとアサミは庇った。愚かな女よと嘲笑われようとも何もしないよりましだった。

終わりが来た。盗賊たちはアサミやカリンの命を奪おうと襲い掛かった。
アサミは目をつぶった。


終わらなかった。いきなり統領と呼ばれる男が叫んで止めろと言った。
アサミたちは今、老婆によって治療されている。とても苦い薬湯だ。
カリン達が生きていてよかった。でもこれからどうなるのだろう。アサミは不安だった。
老婆は治療が終わって去る間際に、アサミに言った。
「あんたやるねえ。仲間を庇ったあんたに惚れた男が統領に止めさせろと言ったんだよ。
あんた。男を惚れさせて助かったんだ。」

アサミはええええと思った。まさかそんなはずはない。と思いながらも、どうしていきなり止めたのが不思議だった。よりにもよって盗賊に?アサミは泣きたい思いになった。
カリンはまだ治療中だ。アサミはこの情報に混乱しながらもこんな時カリンだったらどうするだろうと思った。
もしそれが本当だったら?その男に媚びていたら気にいられたらアサミもカリン達もなんとかなるかもしれない。
アサミは娼婦だ。男の扱い方は多少は知っている。でもこれはアサミと仲間たちの命を懸けた遊戯だ。
アサミはその男が寄ってきたら、仕事をしよう。娼婦らしく男を取り込むのだ。
男を虜にさせるのだ。



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