いかでか

栗菓子

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掃き溜めに鶴

第12話 オキナの初恋

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オキナは翁のように年老いた心を持っていた。醜悪な盗賊の仲間で翁は何も感じなかった。
はじめて泣きながら命乞いをする人を殺した時も何も思わなかった。仕事だからと思っていた。
オキナにとって人は仕事に必要な人 必要でない人に分かれていた。
仕事をして報酬をもらう。それで生活をする。オキナはあまり感情が希薄であった。
淡々と、人を殺して生活をする。それが翁の日常。
いつもの通り、攫われた女たちが悲鳴を上げて暴行され殺される。オキナにはよくある日常だった。
ふと変化があった。愚かな女が無謀にも仲間を守ろうとしたのだ。必死で盗賊たちを退けようとする様は滑稽だが一生懸命だった。
女の泣き崩れたくしゃりとした顔が印象的だった。ずっと見ていたかった。
オキナはふと、統領に告げ口しようと思った。上手く仲間から離れてすぐに統領に「あまりにも目に余るやつらです。手に負えない。せっかくの商品になる女たちが全部殺されますよ。」と言った。
これは真実だ。あいつらは盗賊でも手に負えない奴らだった。なんでも壊す奴らだった。
統領も思うところがあったのが、眉をしかめてすぐに行くと囚人たちの部屋へ行った。
統領の悪い予想以上だったらしい。破壊された部屋。瀕死状態の囚人たち。げらげらと笑いあう醜悪な仲間はいつもより醜かった。あまりにも醜いと人は嫌悪する。統領もまだ心はあったようで、うんざりとした顔で「お前ら止めろ!」と制止の声を上げた。

彼女らはかろうじて命拾いした。よかったとオキナははじめて思った。
気になった女が倒れている女に縋り付いている。子どもみたいだ。

オキナはそれから彼女らが気になった。子どものように泣き喚いている女。アサミと言われた女。
それがずっと脳裏にはなれなかった。オキナの初恋だった。

あの女が欲しいな。オキナの初めて芽生えた欲望だった。
オキナはずっと統領に仕えている。オキナはわりと統領にとって必要な存在になっている。
そんなオキナがはじめて要望を伝えた。
「あの女が欲しい。」

統領は目を見開いて、気に入ったのかとオキナに信じられないような顔をした。お前が?
それもそうだろう。オキナは仕事しかしない人だったから。人に全く興味がなかった。統領でさえもかろうじて上の人と思っているのだから。統領もオキナの性格を長年の付き合いで分かっていた。
溜息をついて、統領はオキナに言った。
「わかった。あの女はお前にやろう。」

まるで欲しかった玩具をもらったみたいにオキナは喜んだ。嬉しかった。オキナは笑った。
統領は不可解なものを見るように、オキナを見た。
オキナは若返ったように見えた。恋は人を変わらせる。統領はオキナを見てそう思った。
こんなところで恋をするとはな。と神様のきまぐれに統領は迷った。
相手はさらった女だぞ。俺らは敵なのに。相当恨まれているかもしれないのに。
殺されても知らんぞ。と統領は冷や汗を垂らしながらも事態を見守ることにした。面白いからだ。
どうなるのか見てみたかった。

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