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掃き溜めに鶴
第17話 運命の嵐
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一年ぐらい、カリンと盗賊団の奇妙な支配と被支配者の生活は続いた。
アサミは、オキナという男の専属になって、一部屋もらっている。
アサミの嘆願で、カリン達女たちの命は辛うじて繋がれている。それも危うい。
オキナは盗賊団でも実力者だ。アサミはオキナに気に入られたから、そのついでにカリン達も恩恵を受けているのだ。いつ消えてしまうか分からない恩恵。それを理解せず、反抗したり、アサミだけ優遇されることに嫉妬した浅はかな女達は、自分の欲にとって滅んだ。男が目障りだと思ったのだろう。公開処刑された。
カリンは淡々と受け入れた。
運命は、状況を把握し、理解している者や、逆らってはならない人を見分ける人に贔屓をなさるようだ。
表面上は、淡々と、日々が続いた。カリン達にとっては地獄だったが、とりあえずまだ生きている。
運命はいつも突然にやってくる。
カリンにとって運命は嵐の様だ。ある日、いきなり人生が変わる。
今日もまた昨日の続きだ。カリンは疲れながらも生きた。目を開かなきゃ。カリンは眩しい太陽。朝を見た。
綺麗だ。まだ心が残っているらしい。目を細めて太陽を見ると、けたたましい音が聞こえた。
「追手がきたあ!」
見たことがある盗賊の一人が叫びながら助けを求めた。その背中に矢が刺さった。あっと盗賊は驚愕したように倒れた。呆気ない死だった。
カリンの目の前で、見慣れた盗賊たちが慌てて戦ったり、逃げたり右往左往している。
それでも、貴族の追手は強いらしい。だんだん、盗賊が倒れていく。
カリン達をあれほど苦しめた奴らがだ。何であっけないの。
カリン達女は 拘束されて用事がある時だけ小屋から出された。小屋の窓からカリン達は、はらはらしながら盗賊たちと追手たちの戦いを観戦した。
女が小声で「私たちどうなるのかしら。今度はあの追手に?」
「さあわからないわ。ついでに殺されるかも。女の命なんてそんなものだからね。」
カリン達は、もう地獄の一年に慣れてしまった。今更期待など。すっかり盗賊との生活にも慣れ麻痺状態にあった。
冷酷な無情な生活がカリン達女の心にもどこか影響を受けたらしい。
冷めきった生き残りの女たちが囁いた。
「私たち。もう昔の生活には戻れないかもね。」
ふんと或る女は鼻を鳴らした。
「慣れるさ。もう何でも慣れてしまったもの。なにを今更。」
「生き続けるだけさ。もう最後まで。」
老婆のように枯れ切った声が血の底から這うように呟かれた。
そういえば、盗賊たちが来たのは深夜だった。 追手は早朝に来た。まるで逆だな。
カリンはまるで夢を見ているように人が倒れるさまを見た。
あの時と同じだな。今度は盗賊の番なんだ。因果応報だ。
アサミは? 貴族の少年は? それが気になっていた。
いきなり、小屋の扉が破られた。女たちが振り向くと、醜い形相の盗賊がお前らも道連れにしてやるとぶつぶついって切りかかった。嗚呼。こんなやつらに殺されるなんて。
カリンは思わず目をつぶった。
刃は来なかった。予想した痛みはなかった。ゆっくり目を開けると、カリンの目の前でどおっと倒れた醜い盗賊。
「カリン。無事?よかった。間に合って。」
息を切らしながらも、血まみれの手で盗賊を刺した剣を持った貴族の少年がいた。
カリンには一番美しい人に見えた。
「やっと。味方が来たよ。助けが来たんだよ。」
貴族の少年を追ってきた身なりの良い人たちが「坊ちゃま」と言いながらやってきた。
「坊ちゃま。こんなところに。さあ帰りましょう。旦那様も心配しています。」
少年を連れ去ろうとする腕。少年はわずらしそうに払いのけた。
「駄目だ。カリンやこの女たちは僕の仲間だ。盗賊にさらわれて同じ目にあった人たちなんだ。この女たちも僕と一緒に連れていけ。同じ仲間だ。」
「助けなければ、僕はお父様の所へは行かない。分かったか!」少年は、怒鳴って身なりの良い人たちに命じた。
「わかりました。坊ちゃまが望むなら。」
身なりの良い人たちは、ぼろぼろになったカリンを布をかけながら、少年と一緒に連れて行きますと言った。
「坊ちゃまの仲間でしたら。」
カリンや女たちはえつと言って、なす術もなく連れていかれた。今度は貴族の助けですって。
あまりの運命の急変にカリン達は呆然とするしかなかった。
「アサミは?」カリンは貴族の少年に尋ねた。少年は首を振った。
「ごめん。わからない。オキナという盗賊が連れていったらしい。」
しばらくして、ためらいがちに少年はカリンに驚くことを言った。
「アサミの腹は膨らんでいた。多分あいつの子どもを孕んだんだよ。」
そんな。敵の子を身ごもったのか。
カリンは泣きだした。アサミはどうなるのか。
「しっかりして。カリン。ぼくたちもまだ危ないんだよ。何とかして逃げなきゃ。」
カリンは少年の励ましの声を聴いてうんと子どものように頷いた。
ごめんなさい。アサミ。私たちは逃げるわ。
貴方も生き延びて。
カリンと女たちは貴族の少年と助けに来た人たちと一緒についていった。
この地獄から逃がられるのなら。
彼らは必死で戦いながら逃げた。馬車があった。カリン達はそれに乗り込み逃れた。
後を追う盗賊たちがどんどん見えなくなった。
カリンと女たちは何度も振り返りながら、地獄から逃れたことを実感したのは、長い間馬車で逃げ続けて
やっと、身なりの良い人たちが「ここなら安心です。」と言った館に連れられた時だ。
カリンは館についた途端気を失った。
アサミは、オキナという男の専属になって、一部屋もらっている。
アサミの嘆願で、カリン達女たちの命は辛うじて繋がれている。それも危うい。
オキナは盗賊団でも実力者だ。アサミはオキナに気に入られたから、そのついでにカリン達も恩恵を受けているのだ。いつ消えてしまうか分からない恩恵。それを理解せず、反抗したり、アサミだけ優遇されることに嫉妬した浅はかな女達は、自分の欲にとって滅んだ。男が目障りだと思ったのだろう。公開処刑された。
カリンは淡々と受け入れた。
運命は、状況を把握し、理解している者や、逆らってはならない人を見分ける人に贔屓をなさるようだ。
表面上は、淡々と、日々が続いた。カリン達にとっては地獄だったが、とりあえずまだ生きている。
運命はいつも突然にやってくる。
カリンにとって運命は嵐の様だ。ある日、いきなり人生が変わる。
今日もまた昨日の続きだ。カリンは疲れながらも生きた。目を開かなきゃ。カリンは眩しい太陽。朝を見た。
綺麗だ。まだ心が残っているらしい。目を細めて太陽を見ると、けたたましい音が聞こえた。
「追手がきたあ!」
見たことがある盗賊の一人が叫びながら助けを求めた。その背中に矢が刺さった。あっと盗賊は驚愕したように倒れた。呆気ない死だった。
カリンの目の前で、見慣れた盗賊たちが慌てて戦ったり、逃げたり右往左往している。
それでも、貴族の追手は強いらしい。だんだん、盗賊が倒れていく。
カリン達をあれほど苦しめた奴らがだ。何であっけないの。
カリン達女は 拘束されて用事がある時だけ小屋から出された。小屋の窓からカリン達は、はらはらしながら盗賊たちと追手たちの戦いを観戦した。
女が小声で「私たちどうなるのかしら。今度はあの追手に?」
「さあわからないわ。ついでに殺されるかも。女の命なんてそんなものだからね。」
カリン達は、もう地獄の一年に慣れてしまった。今更期待など。すっかり盗賊との生活にも慣れ麻痺状態にあった。
冷酷な無情な生活がカリン達女の心にもどこか影響を受けたらしい。
冷めきった生き残りの女たちが囁いた。
「私たち。もう昔の生活には戻れないかもね。」
ふんと或る女は鼻を鳴らした。
「慣れるさ。もう何でも慣れてしまったもの。なにを今更。」
「生き続けるだけさ。もう最後まで。」
老婆のように枯れ切った声が血の底から這うように呟かれた。
そういえば、盗賊たちが来たのは深夜だった。 追手は早朝に来た。まるで逆だな。
カリンはまるで夢を見ているように人が倒れるさまを見た。
あの時と同じだな。今度は盗賊の番なんだ。因果応報だ。
アサミは? 貴族の少年は? それが気になっていた。
いきなり、小屋の扉が破られた。女たちが振り向くと、醜い形相の盗賊がお前らも道連れにしてやるとぶつぶついって切りかかった。嗚呼。こんなやつらに殺されるなんて。
カリンは思わず目をつぶった。
刃は来なかった。予想した痛みはなかった。ゆっくり目を開けると、カリンの目の前でどおっと倒れた醜い盗賊。
「カリン。無事?よかった。間に合って。」
息を切らしながらも、血まみれの手で盗賊を刺した剣を持った貴族の少年がいた。
カリンには一番美しい人に見えた。
「やっと。味方が来たよ。助けが来たんだよ。」
貴族の少年を追ってきた身なりの良い人たちが「坊ちゃま」と言いながらやってきた。
「坊ちゃま。こんなところに。さあ帰りましょう。旦那様も心配しています。」
少年を連れ去ろうとする腕。少年はわずらしそうに払いのけた。
「駄目だ。カリンやこの女たちは僕の仲間だ。盗賊にさらわれて同じ目にあった人たちなんだ。この女たちも僕と一緒に連れていけ。同じ仲間だ。」
「助けなければ、僕はお父様の所へは行かない。分かったか!」少年は、怒鳴って身なりの良い人たちに命じた。
「わかりました。坊ちゃまが望むなら。」
身なりの良い人たちは、ぼろぼろになったカリンを布をかけながら、少年と一緒に連れて行きますと言った。
「坊ちゃまの仲間でしたら。」
カリンや女たちはえつと言って、なす術もなく連れていかれた。今度は貴族の助けですって。
あまりの運命の急変にカリン達は呆然とするしかなかった。
「アサミは?」カリンは貴族の少年に尋ねた。少年は首を振った。
「ごめん。わからない。オキナという盗賊が連れていったらしい。」
しばらくして、ためらいがちに少年はカリンに驚くことを言った。
「アサミの腹は膨らんでいた。多分あいつの子どもを孕んだんだよ。」
そんな。敵の子を身ごもったのか。
カリンは泣きだした。アサミはどうなるのか。
「しっかりして。カリン。ぼくたちもまだ危ないんだよ。何とかして逃げなきゃ。」
カリンは少年の励ましの声を聴いてうんと子どものように頷いた。
ごめんなさい。アサミ。私たちは逃げるわ。
貴方も生き延びて。
カリンと女たちは貴族の少年と助けに来た人たちと一緒についていった。
この地獄から逃がられるのなら。
彼らは必死で戦いながら逃げた。馬車があった。カリン達はそれに乗り込み逃れた。
後を追う盗賊たちがどんどん見えなくなった。
カリンと女たちは何度も振り返りながら、地獄から逃れたことを実感したのは、長い間馬車で逃げ続けて
やっと、身なりの良い人たちが「ここなら安心です。」と言った館に連れられた時だ。
カリンは館についた途端気を失った。
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