いかでか

栗菓子

文字の大きさ
20 / 34
掃き溜めに鶴

第17話 運命の嵐

しおりを挟む
一年ぐらい、カリンと盗賊団の奇妙な支配と被支配者の生活は続いた。
アサミは、オキナという男の専属になって、一部屋もらっている。
アサミの嘆願で、カリン達女たちの命は辛うじて繋がれている。それも危うい。
オキナは盗賊団でも実力者だ。アサミはオキナに気に入られたから、そのついでにカリン達も恩恵を受けているのだ。いつ消えてしまうか分からない恩恵。それを理解せず、反抗したり、アサミだけ優遇されることに嫉妬した浅はかな女達は、自分の欲にとって滅んだ。男が目障りだと思ったのだろう。公開処刑された。
カリンは淡々と受け入れた。
運命は、状況を把握し、理解している者や、逆らってはならない人を見分ける人に贔屓をなさるようだ。
表面上は、淡々と、日々が続いた。カリン達にとっては地獄だったが、とりあえずまだ生きている。
運命はいつも突然にやってくる。
カリンにとって運命は嵐の様だ。ある日、いきなり人生が変わる。

今日もまた昨日の続きだ。カリンは疲れながらも生きた。目を開かなきゃ。カリンは眩しい太陽。朝を見た。
綺麗だ。まだ心が残っているらしい。目を細めて太陽を見ると、けたたましい音が聞こえた。
「追手がきたあ!」
見たことがある盗賊の一人が叫びながら助けを求めた。その背中に矢が刺さった。あっと盗賊は驚愕したように倒れた。呆気ない死だった。
カリンの目の前で、見慣れた盗賊たちが慌てて戦ったり、逃げたり右往左往している。
それでも、貴族の追手は強いらしい。だんだん、盗賊が倒れていく。
カリン達をあれほど苦しめた奴らがだ。何であっけないの。
カリン達女は 拘束されて用事がある時だけ小屋から出された。小屋の窓からカリン達は、はらはらしながら盗賊たちと追手たちの戦いを観戦した。
女が小声で「私たちどうなるのかしら。今度はあの追手に?」
「さあわからないわ。ついでに殺されるかも。女の命なんてそんなものだからね。」
カリン達は、もう地獄の一年に慣れてしまった。今更期待など。すっかり盗賊との生活にも慣れ麻痺状態にあった。
冷酷な無情な生活がカリン達女の心にもどこか影響を受けたらしい。
冷めきった生き残りの女たちが囁いた。
「私たち。もう昔の生活には戻れないかもね。」
ふんと或る女は鼻を鳴らした。
「慣れるさ。もう何でも慣れてしまったもの。なにを今更。」
「生き続けるだけさ。もう最後まで。」
老婆のように枯れ切った声が血の底から這うように呟かれた。
そういえば、盗賊たちが来たのは深夜だった。 追手は早朝に来た。まるで逆だな。
カリンはまるで夢を見ているように人が倒れるさまを見た。
あの時と同じだな。今度は盗賊の番なんだ。因果応報だ。

アサミは? 貴族の少年は? それが気になっていた。
いきなり、小屋の扉が破られた。女たちが振り向くと、醜い形相の盗賊がお前らも道連れにしてやるとぶつぶついって切りかかった。嗚呼。こんなやつらに殺されるなんて。
カリンは思わず目をつぶった。

刃は来なかった。予想した痛みはなかった。ゆっくり目を開けると、カリンの目の前でどおっと倒れた醜い盗賊。
「カリン。無事?よかった。間に合って。」
息を切らしながらも、血まみれの手で盗賊を刺した剣を持った貴族の少年がいた。
カリンには一番美しい人に見えた。
「やっと。味方が来たよ。助けが来たんだよ。」
貴族の少年を追ってきた身なりの良い人たちが「坊ちゃま」と言いながらやってきた。
「坊ちゃま。こんなところに。さあ帰りましょう。旦那様も心配しています。」
少年を連れ去ろうとする腕。少年はわずらしそうに払いのけた。
「駄目だ。カリンやこの女たちは僕の仲間だ。盗賊にさらわれて同じ目にあった人たちなんだ。この女たちも僕と一緒に連れていけ。同じ仲間だ。」

「助けなければ、僕はお父様の所へは行かない。分かったか!」少年は、怒鳴って身なりの良い人たちに命じた。

「わかりました。坊ちゃまが望むなら。」
身なりの良い人たちは、ぼろぼろになったカリンを布をかけながら、少年と一緒に連れて行きますと言った。
「坊ちゃまの仲間でしたら。」
カリンや女たちはえつと言って、なす術もなく連れていかれた。今度は貴族の助けですって。

あまりの運命の急変にカリン達は呆然とするしかなかった。
「アサミは?」カリンは貴族の少年に尋ねた。少年は首を振った。
「ごめん。わからない。オキナという盗賊が連れていったらしい。」
しばらくして、ためらいがちに少年はカリンに驚くことを言った。
「アサミの腹は膨らんでいた。多分あいつの子どもを孕んだんだよ。」
そんな。敵の子を身ごもったのか。
カリンは泣きだした。アサミはどうなるのか。
「しっかりして。カリン。ぼくたちもまだ危ないんだよ。何とかして逃げなきゃ。」
カリンは少年の励ましの声を聴いてうんと子どものように頷いた。
ごめんなさい。アサミ。私たちは逃げるわ。
貴方も生き延びて。

カリンと女たちは貴族の少年と助けに来た人たちと一緒についていった。
この地獄から逃がられるのなら。

彼らは必死で戦いながら逃げた。馬車があった。カリン達はそれに乗り込み逃れた。

後を追う盗賊たちがどんどん見えなくなった。
カリンと女たちは何度も振り返りながら、地獄から逃れたことを実感したのは、長い間馬車で逃げ続けて
やっと、身なりの良い人たちが「ここなら安心です。」と言った館に連れられた時だ。
カリンは館についた途端気を失った。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇 ☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

処理中です...