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掃き溜めに鶴
第18話 水魚の交わり
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知ってる?水魚の交わりってきわめて親密な交わりのたとえだよ。
魚が水を必要とするように、カリンは少年を求め、少年はカリンを求めた。
地獄の一年を生き延びたのは、僅かな性交の瞬間のためだった。
その時だけ彼らは、見世物であったとしても、お互いの命を必要とするようなまぐあいだった。
嗚呼。私たちはまだ生きている。その実感がカリンと少年には通じ合った。
彼らは、地獄を生き延びた戦友でもあり夫婦でもあった。
カリンは少年以上に安堵し、天国に連れていかれるような性交はしたことはない。少年も同様だったろう。
少年はカリンを猫のように抱きしめ、手放さなかった。奪われまいと母猫のように抱きしめ続けた。
他の女たちも戦友だったが、カリンと少年ほどお互いを必要とする存在になったのは稀である。
少年とカリン。女たちは、安心な館で、大きなお風呂に入れられて、汚れ切った身なりを綺麗に落とされた。痛み切った髪。ぼろぼろになった顔と体。 痣と暴力で変形した体。
侍女たちは痛ましげにカリン達を見て、丁寧に洗い流した。一年の汚れはなかなか落ちず、何回も黒い汚れた湯を流し、香水のついた石鹸で何回も洗い流した。
垢と泥に塗れた体は、侍女の懸命な努力のお陰で、昔の美しい女たちの姿が一時間以上かかって現れた。
やつれ切っているが、昔の面影が残っている。
髪もあまりに汚れているのは切られた。
彼女たちは疲労してやっと湯あみを終えた後、気絶するように寝た。
医者がしばらくしてやってきて、彼らを看病した。
衰弱しているが、一か月もたてば回復するだろう。
しばらくは体にいスープで腸を温めるがいい。高価な薬ももらった。
少年は当然のように受け取った。お父様がぼくたちのためにして下さったんだよ。母様もきっと半狂乱で探していたに違いない。
「ぼくたちは運が悪すぎたけど、やっと運が良くなったね。」
「ええ。」
カリンはほっと大きな溜息をついて少年にもたれた。猫のようにすりよった。
少年も自然に受け止めた。
「僕の名前は、エドというんだ。」
「君の名前はカリンだよね。」
「僕とこれからも一緒にいてくれないか。君のお陰で生き延びられた。君が励ましてくれたおかげであの地獄を生き延びたよ。」
「私もよ。エド。」
カリン達は安心なところで話しあった。
アサミは諦めよう。彼女はもうオキナのものになってしまった。
「アイラやシン。娼館の主人が血眼でさがしていたらしいよ。」
「敵も隠れるのが上手いね。一年もかかったなんで。」
エドは憤怒の表情で見えない敵を見据えた。
「ねえ。私。アイラとシンに会いたいわ。きっと探しているわ。」
「元の主人や、生き残りの人たちも気になる。どうなっているのかしら。」
「カリン。そうだね。一度会わなきゃ。」
お父様にお願いしてみるとエドは言った。
これからどうなるのだろう。 貴族の少年に救われて、今は夢のように豪奢な館で暮らしている。
あまりにも急変した日だ。
彼女はついていけなかった。休もう。
「 エド。私。休むわ。疲れ切ったの。」
彼女はそう言って眠った。とても深い眠りについた。三日間彼女は目を覚まさなかった。
一年の地獄の生活の疲労が一気に来たのだろう。そう医者は言った。
魚が水を必要とするように、カリンは少年を求め、少年はカリンを求めた。
地獄の一年を生き延びたのは、僅かな性交の瞬間のためだった。
その時だけ彼らは、見世物であったとしても、お互いの命を必要とするようなまぐあいだった。
嗚呼。私たちはまだ生きている。その実感がカリンと少年には通じ合った。
彼らは、地獄を生き延びた戦友でもあり夫婦でもあった。
カリンは少年以上に安堵し、天国に連れていかれるような性交はしたことはない。少年も同様だったろう。
少年はカリンを猫のように抱きしめ、手放さなかった。奪われまいと母猫のように抱きしめ続けた。
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少年とカリン。女たちは、安心な館で、大きなお風呂に入れられて、汚れ切った身なりを綺麗に落とされた。痛み切った髪。ぼろぼろになった顔と体。 痣と暴力で変形した体。
侍女たちは痛ましげにカリン達を見て、丁寧に洗い流した。一年の汚れはなかなか落ちず、何回も黒い汚れた湯を流し、香水のついた石鹸で何回も洗い流した。
垢と泥に塗れた体は、侍女の懸命な努力のお陰で、昔の美しい女たちの姿が一時間以上かかって現れた。
やつれ切っているが、昔の面影が残っている。
髪もあまりに汚れているのは切られた。
彼女たちは疲労してやっと湯あみを終えた後、気絶するように寝た。
医者がしばらくしてやってきて、彼らを看病した。
衰弱しているが、一か月もたてば回復するだろう。
しばらくは体にいスープで腸を温めるがいい。高価な薬ももらった。
少年は当然のように受け取った。お父様がぼくたちのためにして下さったんだよ。母様もきっと半狂乱で探していたに違いない。
「ぼくたちは運が悪すぎたけど、やっと運が良くなったね。」
「ええ。」
カリンはほっと大きな溜息をついて少年にもたれた。猫のようにすりよった。
少年も自然に受け止めた。
「僕の名前は、エドというんだ。」
「君の名前はカリンだよね。」
「僕とこれからも一緒にいてくれないか。君のお陰で生き延びられた。君が励ましてくれたおかげであの地獄を生き延びたよ。」
「私もよ。エド。」
カリン達は安心なところで話しあった。
アサミは諦めよう。彼女はもうオキナのものになってしまった。
「アイラやシン。娼館の主人が血眼でさがしていたらしいよ。」
「敵も隠れるのが上手いね。一年もかかったなんで。」
エドは憤怒の表情で見えない敵を見据えた。
「ねえ。私。アイラとシンに会いたいわ。きっと探しているわ。」
「元の主人や、生き残りの人たちも気になる。どうなっているのかしら。」
「カリン。そうだね。一度会わなきゃ。」
お父様にお願いしてみるとエドは言った。
これからどうなるのだろう。 貴族の少年に救われて、今は夢のように豪奢な館で暮らしている。
あまりにも急変した日だ。
彼女はついていけなかった。休もう。
「 エド。私。休むわ。疲れ切ったの。」
彼女はそう言って眠った。とても深い眠りについた。三日間彼女は目を覚まさなかった。
一年の地獄の生活の疲労が一気に来たのだろう。そう医者は言った。
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