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第13話 腐り子
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美貌の医者は恍惚とした顔で蛆虫のような青白い死体の腹を眺めた。水死体のように膨れあがっている。
でも中にいるのはガスではない。私と半死人の胎児だ。まるで宝を見るようにうっとりと眺めた。
どくどくと鼓動がする。嗚呼生れ出るのだ。一体どんな子か?喜悦を浮かべて待ち望んだ。
奇怪な心理を持った医者だった。
ずるりずるりと、腐った水が流れる。羊水だ。しかし半分死んでいるから腐っているのだ。
醜悪な腐臭にも医者は気にしなかった。ヘドロのような匂い。明らかに死臭。
出産にしては死の匂いが濃厚だ。
医者は当然だろうと思った。半死人の女の出産だ。死が通常より近いに決まっている。
嗚呼嬉しい。子どものように医者は見つめた。
それを傍観している罪人と女の意識は、呆然と死の世界がかつてなく生者の世界に重なっていることに恐れた。
大丈夫なの。こんなに重なって、あたしの子はどうなるの。これからどうなるの。
女は母として子を案じながらも世界も案じた。
分からない。罪人もこれには初めての経験だった。当惑しながらも罪人は唯、傍観者として眺めることしかできなかった。女。大丈夫か。
半死人の女の体からずるりと胎盤が出た。血にまみれた赤ん坊が出てきた。
その赤ん坊を見た途端、女の意識は息をのんだ。
半分は健康な赤子の姿、でもその半分は腐っている。死体の赤子の姿。
ああ、なんてこと。女は己の子の姿を見て苦渋の顔をした。異形の神の姿だった。
腐り子が生まれた。しかもその子には死の世界から何かの力を得たようだ。
腐り子が触れると何でも酸のように溶けてしまう。
しかし一応赤子は本能で、美貌の医者を父親と判明し、慕うようになった。力は何故か医者には通用しなかった。
医者はこれに興奮し、歓喜した。
「お前は間違いなく私の子。嬉しい。私を親と認めて求めてくれる。」
医者は普通の父親のように赤子を抱きしめた。どれほど罪深い行為をして、子どもが生まれたか医者にはどうでもいいことだった。
半死人の女の体はこれで完全に息絶えるかと思ったが、なぜかまだ生きている。
赤子は母親を慕い、冷たい身体に縋り付こうと両手を伸ばした。腐った手と健康な手だ。
「大丈夫だよ。お前の母親だもの。完全には死なないはず。お前と奇姫は私のもの。手放さない。」
うっとりと奇妙な独占欲と身勝手な執着を抱えながら愛おし気に奇姫と腐り子を両手に抱え抱擁した。
なまじ美しいがゆえにぞっとする光景だった。
罪人と奇姫と呼ばれた女の意識は唯眺めるしかできなかった。
お前の男、いや赤ん坊の父親はとんでもない男だな。 罪人はうんざりと言った。
奇姫もそれには頷くしかなかった。貴方、狂っているわ。でも受け入れてしまったのはあたし。
ああどうしようもない。
奇姫は見ることしかできない己の無力さを嘆いた。
でも中にいるのはガスではない。私と半死人の胎児だ。まるで宝を見るようにうっとりと眺めた。
どくどくと鼓動がする。嗚呼生れ出るのだ。一体どんな子か?喜悦を浮かべて待ち望んだ。
奇怪な心理を持った医者だった。
ずるりずるりと、腐った水が流れる。羊水だ。しかし半分死んでいるから腐っているのだ。
醜悪な腐臭にも医者は気にしなかった。ヘドロのような匂い。明らかに死臭。
出産にしては死の匂いが濃厚だ。
医者は当然だろうと思った。半死人の女の出産だ。死が通常より近いに決まっている。
嗚呼嬉しい。子どものように医者は見つめた。
それを傍観している罪人と女の意識は、呆然と死の世界がかつてなく生者の世界に重なっていることに恐れた。
大丈夫なの。こんなに重なって、あたしの子はどうなるの。これからどうなるの。
女は母として子を案じながらも世界も案じた。
分からない。罪人もこれには初めての経験だった。当惑しながらも罪人は唯、傍観者として眺めることしかできなかった。女。大丈夫か。
半死人の女の体からずるりと胎盤が出た。血にまみれた赤ん坊が出てきた。
その赤ん坊を見た途端、女の意識は息をのんだ。
半分は健康な赤子の姿、でもその半分は腐っている。死体の赤子の姿。
ああ、なんてこと。女は己の子の姿を見て苦渋の顔をした。異形の神の姿だった。
腐り子が生まれた。しかもその子には死の世界から何かの力を得たようだ。
腐り子が触れると何でも酸のように溶けてしまう。
しかし一応赤子は本能で、美貌の医者を父親と判明し、慕うようになった。力は何故か医者には通用しなかった。
医者はこれに興奮し、歓喜した。
「お前は間違いなく私の子。嬉しい。私を親と認めて求めてくれる。」
医者は普通の父親のように赤子を抱きしめた。どれほど罪深い行為をして、子どもが生まれたか医者にはどうでもいいことだった。
半死人の女の体はこれで完全に息絶えるかと思ったが、なぜかまだ生きている。
赤子は母親を慕い、冷たい身体に縋り付こうと両手を伸ばした。腐った手と健康な手だ。
「大丈夫だよ。お前の母親だもの。完全には死なないはず。お前と奇姫は私のもの。手放さない。」
うっとりと奇妙な独占欲と身勝手な執着を抱えながら愛おし気に奇姫と腐り子を両手に抱え抱擁した。
なまじ美しいがゆえにぞっとする光景だった。
罪人と奇姫と呼ばれた女の意識は唯眺めるしかできなかった。
お前の男、いや赤ん坊の父親はとんでもない男だな。 罪人はうんざりと言った。
奇姫もそれには頷くしかなかった。貴方、狂っているわ。でも受け入れてしまったのはあたし。
ああどうしようもない。
奇姫は見ることしかできない己の無力さを嘆いた。
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