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第4回 ミツキⅢ
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ミツキの腹が膨らんできたころ、ミツキはあまり外へ出ることを嫌がった。
それは母体を守る本能だが、ミツキと腹をみる男たちの眼が嫌だった。それは奇妙な冷たい無表情な目だった。
ジンガイの子だからミツキを疎んでいるのだろうか?
ミツキはそう憶測もしたが、おしゃべりな鳥のような端女 シラがくすくすと笑って、手を振った。
「あれは、嫉妬ですよ。ミツキ様・・。きっとあいつらも子を欲しがっているんですよ。でもね。ここでは本当に強い奴しか子どもをつくってはいけないんです。」
大抵は、悪場・・奈落で、奴隷女が春をひさいでいるところで、並んで用を足すしかない・・。
そういうところで生まれた子どもは、どこの子かも知らずに生まれ、僅か数年で亡くなる。何故なら母親も死ぬから・・。無意味な行為と、無意味な命と無惨な死の話にミツキは思わず息を呑んだ。
ミツキの運命は相当運が悪くて良かったらしい。 殺そうとしたジンガイに気に入られなかったら、生き延びてもミツキは悪所の奴隷女になっていただろう。そして無意味な死を迎えていたに違いない・・。
「ミツキ様がジンガイ様の妻になって下さって嬉しいです。」
「ミツキ様のお陰で、荒ぶるお方も大分落ち着いていきました。ねえ。ミツキ様。ジンガイ様を裏切らないでください。わたくしシラも、兄も連帯責任で殺されます。」
ねっとりしたまとわりついたような声音・・。ミツキは違和感を感じたが黙って頷いた。
深夜・・ミツキの閨を訪れた。ジンガイの顔が夜の恒星に照らされて、いつもより雄々しく見える。
ジンガイにミツキはありのままをいつも告げている。ミツキには裏切りはなかった。
既にジンガイにゾクスル者になったから、ミツキにはもうジンガイしかいない。
人は裏切るらしい・・。何故なのか。そのほうが良いと思ったのだろうか?
ミツキには分からないことばかりだった。
ふとミツキは、シラの話をジンガイに伝えた。その時シラに違和感を感じたとも言った。
ナゼカ? ジンガイは答えを知っているような気がした。
ミツキはあどけなく尋ねた。
ジンガイはかすかに微笑みながら、いつかわかるとミツキに囁いた。
釈然としないながらもミツキは頷いた。
シラへの違和感にミツキは後に気づくことになる。
ミツキは感情があまりないので、他者のことがよくわからない鈍い性質だった。
しかし、そんなミツキでも何度も肌をあわせると、ジンガイだけはどこかで感じるようになっていた。
ジンガイの興味や、性質、精神などがミツキには馴染んでいった。
肌を覆う衣のように、ジンガイはミツキの一部のように感じられた。 ジンガイもミツキを感じているだろう。
その奇妙な関係をミツキは楽しんでいた。
それは母体を守る本能だが、ミツキと腹をみる男たちの眼が嫌だった。それは奇妙な冷たい無表情な目だった。
ジンガイの子だからミツキを疎んでいるのだろうか?
ミツキはそう憶測もしたが、おしゃべりな鳥のような端女 シラがくすくすと笑って、手を振った。
「あれは、嫉妬ですよ。ミツキ様・・。きっとあいつらも子を欲しがっているんですよ。でもね。ここでは本当に強い奴しか子どもをつくってはいけないんです。」
大抵は、悪場・・奈落で、奴隷女が春をひさいでいるところで、並んで用を足すしかない・・。
そういうところで生まれた子どもは、どこの子かも知らずに生まれ、僅か数年で亡くなる。何故なら母親も死ぬから・・。無意味な行為と、無意味な命と無惨な死の話にミツキは思わず息を呑んだ。
ミツキの運命は相当運が悪くて良かったらしい。 殺そうとしたジンガイに気に入られなかったら、生き延びてもミツキは悪所の奴隷女になっていただろう。そして無意味な死を迎えていたに違いない・・。
「ミツキ様がジンガイ様の妻になって下さって嬉しいです。」
「ミツキ様のお陰で、荒ぶるお方も大分落ち着いていきました。ねえ。ミツキ様。ジンガイ様を裏切らないでください。わたくしシラも、兄も連帯責任で殺されます。」
ねっとりしたまとわりついたような声音・・。ミツキは違和感を感じたが黙って頷いた。
深夜・・ミツキの閨を訪れた。ジンガイの顔が夜の恒星に照らされて、いつもより雄々しく見える。
ジンガイにミツキはありのままをいつも告げている。ミツキには裏切りはなかった。
既にジンガイにゾクスル者になったから、ミツキにはもうジンガイしかいない。
人は裏切るらしい・・。何故なのか。そのほうが良いと思ったのだろうか?
ミツキには分からないことばかりだった。
ふとミツキは、シラの話をジンガイに伝えた。その時シラに違和感を感じたとも言った。
ナゼカ? ジンガイは答えを知っているような気がした。
ミツキはあどけなく尋ねた。
ジンガイはかすかに微笑みながら、いつかわかるとミツキに囁いた。
釈然としないながらもミツキは頷いた。
シラへの違和感にミツキは後に気づくことになる。
ミツキは感情があまりないので、他者のことがよくわからない鈍い性質だった。
しかし、そんなミツキでも何度も肌をあわせると、ジンガイだけはどこかで感じるようになっていた。
ジンガイの興味や、性質、精神などがミツキには馴染んでいった。
肌を覆う衣のように、ジンガイはミツキの一部のように感じられた。 ジンガイもミツキを感じているだろう。
その奇妙な関係をミツキは楽しんでいた。
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