5つの花の物語

栗菓子

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馬酔木の章

第3話 逆恨み

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男は、全てが気に入らなかった。
男の気性もあるが、男は短気ですぐにかっとなる性質であった。そのせいで人々との軋轢は数知れなかった。
忍耐と努力がいる仕事も続かなかった。気に入らない人と一緒にいると耐えられない性質であった。

男は、社会性がなく、子供のように恐ろしく幼稚であった。
兵士か傭兵になったこともあるが、すぐに仲間外れにあった。暗黙のルールとか男には分らなかったのだ。
男は、周囲と共同生活をするには致命的な欠陥があった。

男なりに努力して生きようともしたが、上手くいかなかった。どこに行っても負のスパイラルであった。
男は酒に溺れた。薬にも溺れた。しかし頑丈な身体が死への旅へとなかなかそうはさせなかった。

神様は何か底意地が悪いと思わずにはいられなかった。
心根のいい奴はすぐに死んでいく。それを見ながら男は何の罰だよと思わずにはいられなかった。

男は自分の欠陥に気づいていたため、農家の働き手の募集があると聞いたときは、これが最後のチャンスかも知れないと思った。幸運にも、力仕事には向いていた。簡単だ。言われた通りやればいいのだ。流れ作業だが男には向いていた。
短期間働いて,稼ぐ。そしてボロ家だがだれもいないところで、自給自足しながら一人で過ごす。
これが男にとって一番望ましい人生だった。寂しくないと言ったらウソになるが犯罪や、とんでもない事を起こすよりましであった。
男は、母親に愛されていた。亡き母親にはあまり心配を懸けたくなかった。ましてや息子が犯罪を犯すような人になったら嘆くだろう。男はそう考えて、なるべく身を慎んだ。

しかし、時折、男の神経を逆なでする奴らが居た。
慈善事業で、これみよがしに自分の豊かさを見せつける貴族が居るのだ。
そいつらは孤児院や、恵まれない人たちに配給や、食べ物を斡旋などしていた。

普通なら感謝するところだろう。しかし、男は抑圧されていた。今まで運が悪い人は、救いの手が来ても払いのけてしまう。逆恨みしてしまうのだ。
男は身をもって感じた。親切なシスターが配給されたパンや水を渡そうとしたら、男は思わず要らねえ!と払いのけてしまった。はっと気づいたときはもう遅かった。シスターになんてことをと見る人も居た。
男は済まんと謝って逃げるように教会を離れた。

男は自分が怖かった。このままでは破裂してしまう。何かをしなければと焦った。
男はひたすら、仕事をした。重労働をあえてして、夜まで働いて泥のように眠った。
そうしなければ、なにかが危ないと思ったからだ。

しばらくしてちゃんと、シスターには謝った。あの時は気がどうかしていた。すまないと改めて謝罪した。
シスターは、そういう時は誰にでもありますよ。と男を宥めて慰めた。

とても寛容なシスターだった。男は告解した。シスター。俺はどうも短気でいつも間違えるんです。あまり人と一緒に居てはいけないと自分でもわかっているんです。自分でも自分が怖いから、仕事ばかりして天命が来るのを待っています。頭がおかしいんですよね。
このままじゃいけないと思っても、間違えるんです。


シスターは哀れみの目で男を見た。貴方は頭が良いですよ。自分の欠点に気づいているから。
なるべく人の迷惑にならないように心がけることは良いことです。

落ち着くようにきをつけなさい。とシスターは深呼吸を教えた。
喚くより、空気を一口に入れて、ふううと息をはくのだ。そうすれば少し落ち着くと教えてくれた。


男は家で何回も同じことをやった。体も動かした。少し落ち着くようになった。
なるべく体も温めた。
自分の頭がどうなっているか注意を計らった。


少しずつ男は精神状態が良くなった。それにしても逆恨みって怖い・・
あの頃は、もう無理な状態だった。男は身に染みていた。

俺はシスターに助けられたが、他の救われない奴らも居るダロウ。そいつらはきっと危ない方向へ行くんだ。

男は、様々な経験をして、なるべく戒めを作った。

弱い者は、刺激が強いところや気に障るところへ行ってはいけない。
自分の頭や体に気を付ける事。温める事。
美味しい話に騙されてはいけない。
妬んではいけない。

それが男の戒めであった。
やがて男は、少しだけだが友人や仲間を作れるようになった。男はそれが嬉しかった。
男の運の悪い人生で運が向いてきたところであった。


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