大輪の花火の輪

栗菓子

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第29話 壊れゆく身体

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40才を過ぎてから、一気に今までの苦労や無理がたたって、病気のオンパレードになった。

40肩で体は動かなくなり、頭は破裂しそうに痛くなり、拒食症になったり過食症になったりして、咳もとまらなくなり、何か月も苦しんだ。まるで今までの生きてきた業の清算が来たようだ。

頭も目も悪くなり、火花が目をちらついたときはもう、これは寿命だなあと呑気にも他人事に思えた。


重度のうつ病とわかって、一気に体の検査を受けたら、がんになりかけていた腫瘍もあった。

幸運にも薬で消せる腫瘍で良かったけど、この世界は、一度壊れたら、なかなか再起できない・・。


ポンコツになった女が雇ってくれるところはどこにもない。


幸運にも、障害年金とか、わずかな貯金で生き永らえている。

いっそぽっくりと死んだほうが良かったかもしれないと不安を抱いたが、少し良くなると、日払いでもいいからまた
働きたいと思えるから現金なものだ。


この世界は一度脱落した人には再起が少ない・・。

それは自然の摂理だろう・・。ある意味正しいかもしれないが、弱者としては悔しい思いである。


もう色々考えるのはやめよう。


私なりに生きて戦った。そして多分これからも孤独に、時には助けを必要としながら生きるのだ。

ゆっくりと生きたい。今まで走っていた体を休めて余生を送るおばあちゃんの気持ちだ。


将来は、餓死だろうか?まあいいい。わたしのような弱者が生き延びられたのが奇跡に近かったのだ。


神様が今までこんな世界に生かしてくれたのだろうかと思っている。


子どもの頃は嫌なこともあったが楽しかった。もうなかなか記憶も薄れている。

少し、日記を書く。今日は何をしたかだ。 忘れないために書いている。頭の劣化防止にも良い。


わたしがほっとしたのは子どもを産まなかったことだ。


わたしのような劣等者は子どもを産んではいけない・・。共倒れだと子どものころから無意識に感じていた。


わたしは恐らく淘汰される生き物なのだ。


母親と子供が餓死したという事件を聞くと嫌になる。子どもだけでもなんとかならなかったのかと思わずにはいられない。本当は母体は子を創ったら用済みだ。

身を削って産んだ子供だから、育ててくれるところに預けることはできなかったのだろうか?

非情とは思うが、こういう道連れ心中みたいなのを見ると少し腹が立つ。

せっかく生んだのに何を考えているの。この母親は?もう気力もなにもなかったのかな。

運の悪い親の元で生まれた子どもは可哀相だ。


なんとか育ててくれる里親とかへ行けばよかったのに・・


わたしは子どもは母親のものっていう感覚が嫌いだ。 母親が未来を潰しているようで嫌だ。


未来を子どもに与えてほしい。 その方が私も救われる。


未来はこどものためにあるんだから、過去は老人のものだ。

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