大輪の花火の輪

栗菓子

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第32話 それでも

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この世界は徐々に崩壊しつつある。みんな薄々気づいている。
異常気候、狂った人たちの蛮行。 自殺する人達の増加。 この終わりに近づいている世界で、それでも健気に果敢に弱い者や生き物を守って、働いて生きていこうとする最後まで諦めない人たちが居る。

わたしはその人たちが頑張って成し遂げた小さな、だが確かな偉業に感嘆する。

殆どのひとは、死人みたいに思考停止して、虚ろに生き続ける死者ばかりなのに・・。

ほんの少しでも、光や希望の芽を生やす人々。この差は何だろう?


これ幸いに鬼のように人々を狩り搾取する屑も謳歌する世界なのに、美しい生を送る人々も居る。


本当に、審判の世界を見て居る様だ。
嗚呼‥聖書みたいだ。変な話と宗教と思っていたけど、あれは真実も含まれていたのかもしれない。

何度も世界は滅んできたんだ。

その度に、諦めない偉人や義人、才能や光を持っている人が道を切り開いていったんだ。



血の滲むような苦行にみちた人生。何故彼らは耐えられたのだろう。わたしも彼らに見習って、この苦しみに満ちた人生をひっそりとだが、闘争しよう。己の醜い心と、汚い心も露わになるだろう。しかしこれは解毒や神様が命じた
浄化の時なのかもしれない。

膿・・人間が産みだした不浄。汚濁は少しは綺麗になることを願おう。祈ろう。

光に満ちた人たちが生き残ることを祈ろう。

それが下らないとるにたらない愚かな凡人の最後の足掻きだ。


わたしは祈る。わたしたちのような凡人で愚かな醜悪な人は静かに消え、もっと世界が美しくなることを祈る。

わたしはこの醜い心と壊れゆく体と戦おう。それがとるに足らないわたしの最後の戦いだ。


嗚呼・・神様ごめんね。許してください。時々わたしは無性に泣きたくなって罪人の贖罪をしたくなる。

御免ね。世界を食いつぶしてしまって。



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