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第19話 断罪
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ついにその時がやってきた。
奥様が『病死』として片づけられた葬儀の数か月後、破滅の使者、王宮の視察隊が王命により、ジェイムズの罪業を並びたてた罪状を古典的な羊皮紙で巻いて王の印章を頂いたものをかざして、「お前を連行する。覚悟はできているな。ジェイムス。」
眼光が鋭い屈強な兵隊たちが、捕えに来た。
ジェイムスは不敵に笑ったまま、大人しく連行された。悪行を重ねた悪魔にしては呆気ない最期だった。
不意にジェイムスは、奥様のいた部屋の方向を眺めたが、前に進んだ。
侍女は奥様の亡霊でも見たのだろうかと埒もない妄想をした。
罪業は調べれば調べるほど、残虐な拷問や、殺害、強姦など重罪を犯した証拠が出てきた。
貴族の悪い膿が一気に出てきたようだ。
奥様の病死も毒で殺されたと真実も明らかになったが、侍女だけが少し違うと解っていた。
奥様は受け入れたのだ。あれは自殺に近い。
これは侍女だけの秘密だ。
ある特定の場所を、嗅覚の効く追跡犬隊が、この広大な離宮の森の一部を探し当て、飼い主に吠えたてて、ここになにかあると示した。
やはり、犬は、人間の何倍も嗅覚が効く。だから調査隊は犬を重宝するのだ。
悪魔を破滅させるのは犬だった。
無数の犠牲者の遺品や、溶けなかった骨ノカケラ。 わずかな肉片でも、優秀な調査隊は、よほど多くの無辜の犠牲者が出ていたと解った。
中には憤怒に満ちた男が思わず、呆れた奴だ・と呟きながらジェイムスを無言で殴った。
ジェイムスは遠くまで飛ばされた。彼もそれなりの体格をしているが、貴族特有の怠惰を持っていた故、腕力では叶わなかった。
これには流石のジェイムスも「下賤なものがオレに触れるな!」と喚き散らしたが、彼らは憎悪と憤怒の目でこの悪魔を早く処刑したいと目で語っていた。
三日間牢屋に入れられたジェイムスは、冷ややかな目をした王が面会へ来た時、彼は必死で弁解をしようとしたが、王は無表情で、ジェイムスに引導を渡した。
「悪戯が過ぎたな。お前を殺したい奴は大勢いる様だ。王としても見ぬふりはできなくなった。」
「奥方もお前が殺したのだろう・・。病死など都合の良い事だ。お前は何故その欲を制御できなかったのだ。」
ぐっとジェイムスは唇をかんだ。
「貴方にはわからない。この欲望を満たすのは楽しかった。初めて生きていると思えた。例えそれが多くの者にとって異常と言われようとも。そういう奴だったのですよ。オレは。」
「人はそれを悪というが、オレにはそれがわからないのですよ。そういうものなのです。」
「オレは裁かれるのですか?唯、弱い者を殺しただけなのに?」
ジェイムスは最後まで納得いかないような顔をして、自分だけの世界の正義を主張した。
王は眉をしかめながら、語った。
「なるほど、確かにお前にとっては弱い者を狩った。面白いから・・それだけでやっただけのようだな。
しかしな。弱い者にも意志があり、あまりにも過ぎると、憎悪を積もらせるだけだ。お前はその欲を制御できない屑だったようだな。」
「・・王のおっしゃるとおりかもしれません。でも俺は歯止めが利かなかった。どうしょうもないのです。」
「お前を王都で公開処刑する。ギロチンの刑だ。安心しろ。名処刑執行人の者を選ぶ。一瞬で終わるだろう。」
ジェイムスは醜く顔を歪めた。
「さらばだ。愚かな男よ。」
王は無表情で去った。
折しも、断罪の日は晴天だった。透き通るような青空に心地いい風が漂っていた。
天の神が祝福しているような日だった。
しかし下界では、犠牲になった人たちの遺族が憎悪や悲嘆に満ちた声やきつい醜い顔をして、罪人にありとあらゆる罵倒をしていた。
「そいつを早くコロセ!殺せ!何をしている!早くしろ!」
木で創られた柵で、罪人とそれを傍観する民や貴族は分断されていた。
兵士たちは荒れ狂う民を抑えようと必死で防衛していた。
一番高い塔で高みの見物をしている王は溜息をついて早く処刑せよと命じた。
死刑執行人は、ギロチンの刑をジェイムスの首を木と木の間に丸い空洞に突っ込んだ。
上には大きな刃物があった。
ジェイムスはそれを見て一瞬醜く顔を歪めたが、無表情になった。
下賤な者達にこれ以上醜態をさらけ出したくなかったのだろう。彼はやはり貴族の誇りを持っていた。
だれもジェイムスを守ろうとしなかった。ジェイムスは孤独だった。
彼は薄ら笑いをして、下賤な者と見下している者どもを嘲笑した。
最期まで彼は後悔しなかった。
白い刃の煌めきが太陽の光が反射した。
振り落とされる瞬間を、侍女や、美しい男娼や醜い男などジェイムスに関わった人たちは見逃さなかった。
ジェイムスの首と胴体は分断された。
鮮血の血だまりが処刑台を流れた。 ふうと死刑執行人は安堵の息をついた。
これで役目は果たしたのだ。まだ胴体はびくびくと動いている。次第に止まっていく瞬間が執行人にはゆっくりと長く感じられた。
「終わったのかな。ねえ。あの悪魔はやっと死んだんたね。」
美しい男娼は醜い男に呟いた。
「嗚呼・・あいつはやっと裁かれたんだ。あんなやつ・・地獄でも嫌がられるだろうよ・・。」
「ねえ・・ぼく奥様だけは助かってほしかったよ。可哀そうな奥様・・。」
「俺もだよ・・。運命だったんだよ。あれは・・仕方がねえよ。」
美しい男娼と、醜い男は抱き合って、関わった者として、悪魔の末路を見届けた。
侍女も唯終わったのだと何故が涙を流してみていた。
憎悪に満ちた民たちも、いまだに憎悪に満ちて、死骸を眺めていた。
この罪人の首と胴体は一か月晒しものとして処刑台に置かれた。
民は小さな石をもってその遺骸さえもゆるせないというように投げた。
多くの民は小石を投げ続けた。
その中には遺骸に当たったのもあり、遺骸はだんだん原型を留めなくなった。
鳥や、小動物が遺骸を漁りに来た。
端正な貴族だったジェイムスは醜悪な遺骸となって、鳥や獣の糧になった。
それが末路だった。
奥様が『病死』として片づけられた葬儀の数か月後、破滅の使者、王宮の視察隊が王命により、ジェイムズの罪業を並びたてた罪状を古典的な羊皮紙で巻いて王の印章を頂いたものをかざして、「お前を連行する。覚悟はできているな。ジェイムス。」
眼光が鋭い屈強な兵隊たちが、捕えに来た。
ジェイムスは不敵に笑ったまま、大人しく連行された。悪行を重ねた悪魔にしては呆気ない最期だった。
不意にジェイムスは、奥様のいた部屋の方向を眺めたが、前に進んだ。
侍女は奥様の亡霊でも見たのだろうかと埒もない妄想をした。
罪業は調べれば調べるほど、残虐な拷問や、殺害、強姦など重罪を犯した証拠が出てきた。
貴族の悪い膿が一気に出てきたようだ。
奥様の病死も毒で殺されたと真実も明らかになったが、侍女だけが少し違うと解っていた。
奥様は受け入れたのだ。あれは自殺に近い。
これは侍女だけの秘密だ。
ある特定の場所を、嗅覚の効く追跡犬隊が、この広大な離宮の森の一部を探し当て、飼い主に吠えたてて、ここになにかあると示した。
やはり、犬は、人間の何倍も嗅覚が効く。だから調査隊は犬を重宝するのだ。
悪魔を破滅させるのは犬だった。
無数の犠牲者の遺品や、溶けなかった骨ノカケラ。 わずかな肉片でも、優秀な調査隊は、よほど多くの無辜の犠牲者が出ていたと解った。
中には憤怒に満ちた男が思わず、呆れた奴だ・と呟きながらジェイムスを無言で殴った。
ジェイムスは遠くまで飛ばされた。彼もそれなりの体格をしているが、貴族特有の怠惰を持っていた故、腕力では叶わなかった。
これには流石のジェイムスも「下賤なものがオレに触れるな!」と喚き散らしたが、彼らは憎悪と憤怒の目でこの悪魔を早く処刑したいと目で語っていた。
三日間牢屋に入れられたジェイムスは、冷ややかな目をした王が面会へ来た時、彼は必死で弁解をしようとしたが、王は無表情で、ジェイムスに引導を渡した。
「悪戯が過ぎたな。お前を殺したい奴は大勢いる様だ。王としても見ぬふりはできなくなった。」
「奥方もお前が殺したのだろう・・。病死など都合の良い事だ。お前は何故その欲を制御できなかったのだ。」
ぐっとジェイムスは唇をかんだ。
「貴方にはわからない。この欲望を満たすのは楽しかった。初めて生きていると思えた。例えそれが多くの者にとって異常と言われようとも。そういう奴だったのですよ。オレは。」
「人はそれを悪というが、オレにはそれがわからないのですよ。そういうものなのです。」
「オレは裁かれるのですか?唯、弱い者を殺しただけなのに?」
ジェイムスは最後まで納得いかないような顔をして、自分だけの世界の正義を主張した。
王は眉をしかめながら、語った。
「なるほど、確かにお前にとっては弱い者を狩った。面白いから・・それだけでやっただけのようだな。
しかしな。弱い者にも意志があり、あまりにも過ぎると、憎悪を積もらせるだけだ。お前はその欲を制御できない屑だったようだな。」
「・・王のおっしゃるとおりかもしれません。でも俺は歯止めが利かなかった。どうしょうもないのです。」
「お前を王都で公開処刑する。ギロチンの刑だ。安心しろ。名処刑執行人の者を選ぶ。一瞬で終わるだろう。」
ジェイムスは醜く顔を歪めた。
「さらばだ。愚かな男よ。」
王は無表情で去った。
折しも、断罪の日は晴天だった。透き通るような青空に心地いい風が漂っていた。
天の神が祝福しているような日だった。
しかし下界では、犠牲になった人たちの遺族が憎悪や悲嘆に満ちた声やきつい醜い顔をして、罪人にありとあらゆる罵倒をしていた。
「そいつを早くコロセ!殺せ!何をしている!早くしろ!」
木で創られた柵で、罪人とそれを傍観する民や貴族は分断されていた。
兵士たちは荒れ狂う民を抑えようと必死で防衛していた。
一番高い塔で高みの見物をしている王は溜息をついて早く処刑せよと命じた。
死刑執行人は、ギロチンの刑をジェイムスの首を木と木の間に丸い空洞に突っ込んだ。
上には大きな刃物があった。
ジェイムスはそれを見て一瞬醜く顔を歪めたが、無表情になった。
下賤な者達にこれ以上醜態をさらけ出したくなかったのだろう。彼はやはり貴族の誇りを持っていた。
だれもジェイムスを守ろうとしなかった。ジェイムスは孤独だった。
彼は薄ら笑いをして、下賤な者と見下している者どもを嘲笑した。
最期まで彼は後悔しなかった。
白い刃の煌めきが太陽の光が反射した。
振り落とされる瞬間を、侍女や、美しい男娼や醜い男などジェイムスに関わった人たちは見逃さなかった。
ジェイムスの首と胴体は分断された。
鮮血の血だまりが処刑台を流れた。 ふうと死刑執行人は安堵の息をついた。
これで役目は果たしたのだ。まだ胴体はびくびくと動いている。次第に止まっていく瞬間が執行人にはゆっくりと長く感じられた。
「終わったのかな。ねえ。あの悪魔はやっと死んだんたね。」
美しい男娼は醜い男に呟いた。
「嗚呼・・あいつはやっと裁かれたんだ。あんなやつ・・地獄でも嫌がられるだろうよ・・。」
「ねえ・・ぼく奥様だけは助かってほしかったよ。可哀そうな奥様・・。」
「俺もだよ・・。運命だったんだよ。あれは・・仕方がねえよ。」
美しい男娼と、醜い男は抱き合って、関わった者として、悪魔の末路を見届けた。
侍女も唯終わったのだと何故が涙を流してみていた。
憎悪に満ちた民たちも、いまだに憎悪に満ちて、死骸を眺めていた。
この罪人の首と胴体は一か月晒しものとして処刑台に置かれた。
民は小さな石をもってその遺骸さえもゆるせないというように投げた。
多くの民は小石を投げ続けた。
その中には遺骸に当たったのもあり、遺骸はだんだん原型を留めなくなった。
鳥や、小動物が遺骸を漁りに来た。
端正な貴族だったジェイムスは醜悪な遺骸となって、鳥や獣の糧になった。
それが末路だった。
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