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第20話 白い墓標
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悪魔に殺された犠牲者の鎮魂のために、彼らは、その埋められた跡地に白い墓標を立てた。
彼らに安らかな平穏を。 その言葉を刻み、遺族は絶えず、その周囲に花の種をまき、美しい花畑を築いた。
それは花の墓標でもあり、残された生者の慰みや心の怨みを鎮静させる効果もあった。
死者も喜んでいるだろうと彼らは語り合った。
~或る女視点~
わたしはふわふわと、それを眺めている。少しずつ、わたしのほかにも漂っている白い魂や色々な魂が、しばらく漂っては、徐々に天へ昇っていく。
嗚呼天へ還るんだ。犠牲になった人が・・。中には未練もあるらしく、愛しい家族や恋人に纏わりついて語りかけようとする。でも伝わらない。当たり前だ。もう私たちは死んだのだ。 やがてその魂は諦めたように天に昇り始める。
神様は本当に残酷だ。何故あのような悪魔も生み出してしまったのか?それは偶然だったのか?
彼ジェイムスのような性癖や異常者がもたらしたものは、多くの犠牲者の痛みと、残された遺族の悲しみだった。
彼らはそれを戒めとして、二度とジェイムスのような異常者を出さない様、口伝や、異常者の心理や、性癖など特徴などを学んでいった。
弱者も強くならざるを得ない。戦慄するような性格の持ち主は大勢潜んでいるのだ。
貴族や王族であろうと例外はない。 王はこの事件を元に、異常者の特性や、血や遺伝などを調査団に命じた。
これもある意味、魂の学びだったのだろうか?
でもあまりにも犠牲者は辛かっただろう。わたしは心中ごめんなさい・・と謝るしかなかった。
だってわたしはあの悪魔の妻でもあったのだから・・。
「「貴女も殺されたじゃない(か)アン‥貴女は馬鹿ね(だ)」」
アンの後ろには、アンの精神を守ってくれた前世の男と女が居た。
彼らはアンの一部でもあった。同時にアンは彼らの一部でもあったのだ。
「ジェイムス・・夫の魂は?彼は今どこに?」
それだけがアンの心残りであった。
娼婦だった女が言った。
「わからないわね。あの男は地獄へ行ったと思うけど・・あたしにとっては『神』は最も理解できない存在だから
もしかしたら、天のどこかにいるかもしれないわ。『神』は人間の常識にはあてはまらないもの。偉大過ぎてあたしたちのようなちっぽけな人間は、唯振りまわされる人形に過ぎないわ。」
戦士だった男も、忌々し気に呟いた。
「今回ばかりは流石に腹立たしかったぞ。仮にも妻に対してあのような事ばかりする夫を持ってしまった女の人生を見守るのにはいささか疲れたぞ。アン。何故あの男の愛を受け入れ、愛したのだ。俺には理解できぬ。」
アンにも分からなかった。
唯、奇妙にもあの男の愛が伝わってきたから、アンは受け入れることに決めたのだ。
それが女の運命だったのかもしれない。
アンは正直にいった。
「わからないわ。わたしにはわからないことばかりだった。唯、愛した男がどうしようもない方だっただけなのよ。」
あの美しい男娼と醜い男は今も墓標を時折訪れている。
少し同情していた侍女は、わたしの墓を綺麗にして花を添えている。
わたしを少しでも思ってくれた人は、魂の安らぎを願っている。それが伝わるからわたしはありがとうと語った。
いつかまた会えたらいいわね。
嗚呼・・眩しいわ。天に昇る時が来たんだ。今度はどんな人生を歩むのかアンにはわからないことばかりであった。
いつか全てが解る時がくるのかしら。この理不尽で残酷な運命も。
アンは目を閉じて上昇した。
第一部 完
彼らに安らかな平穏を。 その言葉を刻み、遺族は絶えず、その周囲に花の種をまき、美しい花畑を築いた。
それは花の墓標でもあり、残された生者の慰みや心の怨みを鎮静させる効果もあった。
死者も喜んでいるだろうと彼らは語り合った。
~或る女視点~
わたしはふわふわと、それを眺めている。少しずつ、わたしのほかにも漂っている白い魂や色々な魂が、しばらく漂っては、徐々に天へ昇っていく。
嗚呼天へ還るんだ。犠牲になった人が・・。中には未練もあるらしく、愛しい家族や恋人に纏わりついて語りかけようとする。でも伝わらない。当たり前だ。もう私たちは死んだのだ。 やがてその魂は諦めたように天に昇り始める。
神様は本当に残酷だ。何故あのような悪魔も生み出してしまったのか?それは偶然だったのか?
彼ジェイムスのような性癖や異常者がもたらしたものは、多くの犠牲者の痛みと、残された遺族の悲しみだった。
彼らはそれを戒めとして、二度とジェイムスのような異常者を出さない様、口伝や、異常者の心理や、性癖など特徴などを学んでいった。
弱者も強くならざるを得ない。戦慄するような性格の持ち主は大勢潜んでいるのだ。
貴族や王族であろうと例外はない。 王はこの事件を元に、異常者の特性や、血や遺伝などを調査団に命じた。
これもある意味、魂の学びだったのだろうか?
でもあまりにも犠牲者は辛かっただろう。わたしは心中ごめんなさい・・と謝るしかなかった。
だってわたしはあの悪魔の妻でもあったのだから・・。
「「貴女も殺されたじゃない(か)アン‥貴女は馬鹿ね(だ)」」
アンの後ろには、アンの精神を守ってくれた前世の男と女が居た。
彼らはアンの一部でもあった。同時にアンは彼らの一部でもあったのだ。
「ジェイムス・・夫の魂は?彼は今どこに?」
それだけがアンの心残りであった。
娼婦だった女が言った。
「わからないわね。あの男は地獄へ行ったと思うけど・・あたしにとっては『神』は最も理解できない存在だから
もしかしたら、天のどこかにいるかもしれないわ。『神』は人間の常識にはあてはまらないもの。偉大過ぎてあたしたちのようなちっぽけな人間は、唯振りまわされる人形に過ぎないわ。」
戦士だった男も、忌々し気に呟いた。
「今回ばかりは流石に腹立たしかったぞ。仮にも妻に対してあのような事ばかりする夫を持ってしまった女の人生を見守るのにはいささか疲れたぞ。アン。何故あの男の愛を受け入れ、愛したのだ。俺には理解できぬ。」
アンにも分からなかった。
唯、奇妙にもあの男の愛が伝わってきたから、アンは受け入れることに決めたのだ。
それが女の運命だったのかもしれない。
アンは正直にいった。
「わからないわ。わたしにはわからないことばかりだった。唯、愛した男がどうしようもない方だっただけなのよ。」
あの美しい男娼と醜い男は今も墓標を時折訪れている。
少し同情していた侍女は、わたしの墓を綺麗にして花を添えている。
わたしを少しでも思ってくれた人は、魂の安らぎを願っている。それが伝わるからわたしはありがとうと語った。
いつかまた会えたらいいわね。
嗚呼・・眩しいわ。天に昇る時が来たんだ。今度はどんな人生を歩むのかアンにはわからないことばかりであった。
いつか全てが解る時がくるのかしら。この理不尽で残酷な運命も。
アンは目を閉じて上昇した。
第一部 完
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