ねぇ、恋、しようか。

うそろ

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奥ゆかしさはどこ行った

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相変わらず、イケメンはイケメンだった。


お祝いに来たと言うのは嘘ではなかったらしく(疑ってたわけではないけれど)、昨今のレジ袋有料化に伴ってか、わざわざエコバッグに入れられたホールケーキを出してきた。2人で食べるには少々重すぎやしないだろうか。
そしてもう片方には、酒である。学部生のころから好きで飲んでいる梅酒やらチューハイやらビールやら。誰が缶片付けるんだという量入っている。


「ほらちゃんとお祝いに来てるでしょ?どうせ君のことだから独り身だしな、とかで1人でお祝いしようなんてときにケーキなんて買わないんだろうしちゃんと買ってきたんだから歓迎してよ」

よ、読まれている。こんなお人だったかしら。
というか、仲良かった女の子ですら覚えていない私の誕生日をなぜ覚えてるのか。
というかそもそもなぜ祝いに来たのか。

独り身を見抜かれてるのは…まぁこの際いいとして。
事実だし…。

家はまぁ、学生の頃から全く変わってないのはサークル仲間と話したことあったからわかるとして。

カメラの中しか見てない人(もしくは文芸サークルだったので本しか読んでない人)だったのに。

「奈々が好きだったやつも買ってきたからさ、コップどこ?あ、氷もあるから心配いらないよ」

まさしく勝手知ったる他人の家と言わんばかりにあれこれ言ってくる。
これは、エリートなのか、、
エリートとして10年近く過ごしちゃったらこうなっちゃうのか、、

あの源氏物語やら藤原なんちゃらやらを解説してくれてた文学少年の醸してた奥ゆかしさはどこ行った。

「あ、あの、雅俊くん、」

さすがにちょっと、キッチンで止まってくれ。部屋に入るのは阻止したい。
この頃なかなか帰れなかったから洗濯物は全て部屋干ししていて、下着がもほしっぱなしだし、なにより論文関係の書類がとっ散らかっている。
「ん、なぁに?」

「えーと、ちょっと部屋に入られるのはまずくてですね、できれば日を改めたりとか、」

「やだ、逃げるでしょ?」


ゔ。読まれている。
だが学部卒業後あったのはそのあと2、3年くらいで、5年ぶりな同期にこんな振る舞いをされてしまえば逃げたくもなるはずだ。

ワタシはワルクナイ。

「じ、じつは、このところ忙しくて掃除ができてなくて人様をあげられるような状態では、」

「んー?別に構わないよ?だって付き合うんだし、俺ら」

「は、はい!?」

寝耳に水だ。何を言ってるんだろう。
なにをおっしゃりあそばしてるんだろう、
このエリートくんは。



「ねぇ、奈々。」

「は、ハイ、」

「なに戸惑ってるの?嵐山でした約束、覚えてるよね?」

「え、あ、嵐山?」

「え、覚えてないの?俺、あれ一世一代の告白だったんだけど、」

え?え?え?
な、何をおっしゃっている???

エリートが?
告白????

雅俊くんが???


「…そう、覚えてないの。

じゃあ、思い出させてあげる。」



猛烈に、嫌な予感がした。
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