5 / 134
第五話
しおりを挟む
二〇一八年・夏。京都をひどい嵐が直撃した。
大学の夏休みに入り、実家に帰省していた安倍晴斗は、窓ガラスに叩きつける雨粒をぼんやり眺めていた。
キリッとした目つきに、すっ……と通った鼻筋。顔のパーツも抜群に整っており、身長や体格も同年代の男子の中では優れている方だった。外見だけなら、晴斗はかなりモテる要素を持っていた。実際、自分の外見に惹かれたらしい女子とつき合ったこともある。
しかしどういうわけか、どの子とも長続きせずフラれてしまうというのが常だった。何かマズいことをした覚えはないのだが、よく「イメージと違った」とか「なんかウザい」とか言われて別れを切り出されてしまう。昨日も電話で、三ヶ月ほどつき合った彼女に「もう別れて」と言われたばかりだ。
そして、フラれた翌日には必ず雨が降った。晴斗の心を代弁するかのように、しとしととした雨が一日中降り続くのだ。そんな天気を見る度に晴斗は、きっと自分の代わりに泣いてくれているんだろうな、と思った。
だが、今回の嵐はそれとは少々違うような気がする。
――まるで大号泣じゃねぇか……。
晴斗は胸に手を当てた。ズキン、と心臓が痛んだ。持病ではない。晴斗は生まれてこの方、大きな病気は一度もしたことがなかった。
ただ、先程から何故かものすごく胸が苦しくなるのだ。悲しいような、切ないような、それでいて懐かしいような、不思議な気分。胸を掻き毟られるような歯がゆさと、心が張り裂けそうな悔しさが同時にこみ上げてきて、意味もないのに泣きたくなってしまう。
――これは俺の気持ちじゃない。
晴斗は窓越しに空を見上げた。
ネガティブな感情が全て混ざり合い、灰色に染まって荒れ狂っているようだった。嵐の中から誰かの悲痛な叫び声が聞こえてくる。寂しい、会いたい、早く来て……。
「…………」
座っている椅子から腰を浮かしかけ、晴斗はハッと我に返った。
一体どこへ行こうというのか。何故切ないのか、何故苦しいのか、誰が叫んでいるのかもわからないのに。この嵐の中、闇雲に出て行ってもずぶ濡れになるだけなのに。
でも……。
――やっぱり我慢できない!
嵐はひどいけど、このままじっとしている方がムズムズして気持ち悪かった。
晴斗は雨ガッパを着込み、なるべく丈夫そうな傘を掴んで家を飛び出した。
大学の夏休みに入り、実家に帰省していた安倍晴斗は、窓ガラスに叩きつける雨粒をぼんやり眺めていた。
キリッとした目つきに、すっ……と通った鼻筋。顔のパーツも抜群に整っており、身長や体格も同年代の男子の中では優れている方だった。外見だけなら、晴斗はかなりモテる要素を持っていた。実際、自分の外見に惹かれたらしい女子とつき合ったこともある。
しかしどういうわけか、どの子とも長続きせずフラれてしまうというのが常だった。何かマズいことをした覚えはないのだが、よく「イメージと違った」とか「なんかウザい」とか言われて別れを切り出されてしまう。昨日も電話で、三ヶ月ほどつき合った彼女に「もう別れて」と言われたばかりだ。
そして、フラれた翌日には必ず雨が降った。晴斗の心を代弁するかのように、しとしととした雨が一日中降り続くのだ。そんな天気を見る度に晴斗は、きっと自分の代わりに泣いてくれているんだろうな、と思った。
だが、今回の嵐はそれとは少々違うような気がする。
――まるで大号泣じゃねぇか……。
晴斗は胸に手を当てた。ズキン、と心臓が痛んだ。持病ではない。晴斗は生まれてこの方、大きな病気は一度もしたことがなかった。
ただ、先程から何故かものすごく胸が苦しくなるのだ。悲しいような、切ないような、それでいて懐かしいような、不思議な気分。胸を掻き毟られるような歯がゆさと、心が張り裂けそうな悔しさが同時にこみ上げてきて、意味もないのに泣きたくなってしまう。
――これは俺の気持ちじゃない。
晴斗は窓越しに空を見上げた。
ネガティブな感情が全て混ざり合い、灰色に染まって荒れ狂っているようだった。嵐の中から誰かの悲痛な叫び声が聞こえてくる。寂しい、会いたい、早く来て……。
「…………」
座っている椅子から腰を浮かしかけ、晴斗はハッと我に返った。
一体どこへ行こうというのか。何故切ないのか、何故苦しいのか、誰が叫んでいるのかもわからないのに。この嵐の中、闇雲に出て行ってもずぶ濡れになるだけなのに。
でも……。
――やっぱり我慢できない!
嵐はひどいけど、このままじっとしている方がムズムズして気持ち悪かった。
晴斗は雨ガッパを着込み、なるべく丈夫そうな傘を掴んで家を飛び出した。
0
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる