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第八十三話
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数日後。「たまお」こと玉藻前との共演の日がやってきた。
晴斗は、九尾と三尾を連れて、収録が行われるテレビ局に向かった。
「九尾、大丈夫か? なんか顔色悪いぞ」
普段はどんな仕事を与えられても滅多に気負うことのない九尾だったが、今日は珍しく朝から落ち着かない様子だった。表情もいつもより硬い。
「あ、ああ……大丈夫だ。すまない、少し緊張してしまって」
「うんうん、気持ちはわかるよ。僕も正直、心臓バクバクだしさ~」
と、三尾が朗らかな口調で言うので、晴斗はじっとりした目を向けてやった。
「お前のどこがバクバクなんだよ」
「僕はバクバクが顔に出ないタイプなんだよ。でも九尾ちゃん、本当に大丈夫? 具合悪いなら無理しなくてもいいんじゃないかな」
「いや、具合が悪いわけじゃないんだ。ただ……建物に近づけば近づくほど、嫌な気配が強くなって……」
「ああ、それはしょうがないね。テレビ局の中に玉藻前がいるのは明らかだしさ。僕もさっきからこの辺が気持ち悪くてしょうがないよ」
自分の胃を撫でる三尾。
――そうか……。こいつら妖怪だから、同じ妖怪の気配には敏感なのか……。
正直に言うと、晴斗も先程からうっすらと嫌な気配を感じてはいた。目的のテレビ局が遠目に見えているのに、「あまり行きたくないな」という気持ちが強くなっていた。人間の自分ですらそうなのだから、妖怪の彼らはもっとあからさまな不快感を覚えているに違いない。
「…………」
テレビ局の正面玄関に着いた。高さ百メートルほどの高層ビルが、目の前に聳え立っていた。
一度深呼吸をし、気合を入れて建物内に入ろうとした時、早速異変に気付いた。
「……あれ?」
玄関に待機しているはずの警備員がいない。テレビ局はセキュリティーが厳しいから、どこの局でも入る前に警備員にチェックされるのに、何故誰もいないのだろう。
晴斗は、九尾と三尾を連れて、収録が行われるテレビ局に向かった。
「九尾、大丈夫か? なんか顔色悪いぞ」
普段はどんな仕事を与えられても滅多に気負うことのない九尾だったが、今日は珍しく朝から落ち着かない様子だった。表情もいつもより硬い。
「あ、ああ……大丈夫だ。すまない、少し緊張してしまって」
「うんうん、気持ちはわかるよ。僕も正直、心臓バクバクだしさ~」
と、三尾が朗らかな口調で言うので、晴斗はじっとりした目を向けてやった。
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「いや、具合が悪いわけじゃないんだ。ただ……建物に近づけば近づくほど、嫌な気配が強くなって……」
「ああ、それはしょうがないね。テレビ局の中に玉藻前がいるのは明らかだしさ。僕もさっきからこの辺が気持ち悪くてしょうがないよ」
自分の胃を撫でる三尾。
――そうか……。こいつら妖怪だから、同じ妖怪の気配には敏感なのか……。
正直に言うと、晴斗も先程からうっすらと嫌な気配を感じてはいた。目的のテレビ局が遠目に見えているのに、「あまり行きたくないな」という気持ちが強くなっていた。人間の自分ですらそうなのだから、妖怪の彼らはもっとあからさまな不快感を覚えているに違いない。
「…………」
テレビ局の正面玄関に着いた。高さ百メートルほどの高層ビルが、目の前に聳え立っていた。
一度深呼吸をし、気合を入れて建物内に入ろうとした時、早速異変に気付いた。
「……あれ?」
玄関に待機しているはずの警備員がいない。テレビ局はセキュリティーが厳しいから、どこの局でも入る前に警備員にチェックされるのに、何故誰もいないのだろう。
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