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第百四話(九尾目線)
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混濁する意識に鞭打って、九尾はついに屋上に辿り着いた。玉藻前の呪詛に身体を蝕まれている上、ここまで自力で階段を上ってきたので体力的にも既に限界だった。
ドアにすがり付いて荒い呼吸を繰り返していると、離れたところから晴斗の声が聞こえて来た。
「九尾……っ!」
晴斗の不安げな視線がこちらに注がれている。玉藻前の深紅の尻尾に捕まって、身動きが取れなくなっているようだ。
けれど、それ以外は特に何もされていないようで、顔色も悪くなってはいないようだった。どうやら呪詛はかけられていないみたいだ。少しホッとした。
「ああ、泥棒ギツネの登場ね」
こちらを挑発するような笑みを浮かべ、彼女は晴斗を引きずって屋上の端に立った。そして尻尾に絡み付かせた晴斗をぶら下げ、こう言い放った。
「この人間を助けたければ、あなたがここから飛び降りなさい」
「……!」
晴斗の足元には地面がない。あのまま玉藻前が尻尾を緩めたら、晴斗は地上に向かって真っ逆さまだ。普通の人間が百メートルの高さから落ちたら、間違いなく死ぬ。
――そんなの駄目だ……!
九尾は最後の力を振り絞って、屋上を進んでいった。
「だ、ダメだ! やめてくれ、九尾!」
晴斗が叫んでいるのはわかっていた。それでも歩みを止めるわけにはいかなかった。
晴斗には目覚めてから、ずっと親切にしてもらってきた。妖狐である私を忌避せず、「今」の生活を楽しめるよういろいろ世話を焼いてくれて、新しい居場所を与えてくれた。私の気持ちに寄り添い、代わりに泣いてくれたり、何も言わずに慰めてくれたりもした。晴斗のおかげで、私は随分救われた。彼の側にいられて本当に幸せだった。
だから……。
ドアにすがり付いて荒い呼吸を繰り返していると、離れたところから晴斗の声が聞こえて来た。
「九尾……っ!」
晴斗の不安げな視線がこちらに注がれている。玉藻前の深紅の尻尾に捕まって、身動きが取れなくなっているようだ。
けれど、それ以外は特に何もされていないようで、顔色も悪くなってはいないようだった。どうやら呪詛はかけられていないみたいだ。少しホッとした。
「ああ、泥棒ギツネの登場ね」
こちらを挑発するような笑みを浮かべ、彼女は晴斗を引きずって屋上の端に立った。そして尻尾に絡み付かせた晴斗をぶら下げ、こう言い放った。
「この人間を助けたければ、あなたがここから飛び降りなさい」
「……!」
晴斗の足元には地面がない。あのまま玉藻前が尻尾を緩めたら、晴斗は地上に向かって真っ逆さまだ。普通の人間が百メートルの高さから落ちたら、間違いなく死ぬ。
――そんなの駄目だ……!
九尾は最後の力を振り絞って、屋上を進んでいった。
「だ、ダメだ! やめてくれ、九尾!」
晴斗が叫んでいるのはわかっていた。それでも歩みを止めるわけにはいかなかった。
晴斗には目覚めてから、ずっと親切にしてもらってきた。妖狐である私を忌避せず、「今」の生活を楽しめるよういろいろ世話を焼いてくれて、新しい居場所を与えてくれた。私の気持ちに寄り添い、代わりに泣いてくれたり、何も言わずに慰めてくれたりもした。晴斗のおかげで、私は随分救われた。彼の側にいられて本当に幸せだった。
だから……。
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