転生したらいろんな意味で兄に可愛がられています~ヴァルハラで死合いましょう~

夢咲まゆ

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第30章~奇妙な敵~

第28話

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 そもそも、兄だったらもっと過激な方法で彼女を斬り刻んでいたはずだ。それに比べれば自分のやり方はぬるいくらいだと思う。

「う、うぅ……うわあぁぁん!」

 メリナが悲鳴を上げた。兄の声で発せられた悲鳴は徐々に少女の悲鳴と混ざっていき、やがて完全に少女そのものとなった。

 鼓膜を破るような不愉快な声はみるみる鏡に吸い込まれて行き、ボリュームを捻るようにどんどん小さくなっていった。最早どうにもならないと悟り、泣きながら鏡に逃げて行ったようだった。

 完全に声が聞こえなくなったところで、アクセルは急いで鏡を地面に伏せた。そして厚手のタオルで鏡全体を覆い、何も映らないよう念入りに縛った。

「……う……」
「っ! 兄上!?」

 兄が小さな呻き声を発した。

 アクセルは慌てて鏡を放り投げ、兄の側に駆け寄った。

「ご、ごめん兄上! すぐ泉に連れて行くから……」
「い、い……。それより、鏡を……バルドル様のところに……」
「えっ……!?」
「こんな傷……どうにでもなる、よ……。早く、行っておいで……」
「だけど……」

 正直、かなり迷った。自分が斬った手前罪悪感が半端なかったし、手負いの兄を放置して鏡を優先するのは、アクセルの心情的にかなり抵抗があった。

 でも……ここでもたもたしていたら、肝心の封印が中途半端になってしまう。せっかくここまでやったのに、失敗したら元も子もない。

「……わかった。できるだけ急いで帰ってくるから、兄上はもう少し耐えていてくれ」
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