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第30章~奇妙な敵~
第29話
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アクセルはタオルに包まれた鏡を抱え、全速力で世界樹まで走った。
ゲートを潜り抜け、バルドルのいるアース神族の世界に向かい、挨拶もそこそこに鏡を突き出す。
「えっ? もうメリナを封印してしまったのかい?」
「はい、どうにか。なので後はバルドル様にお任せします」
「それはいいけど、フレインはどうしたの? 今日は一緒じゃないの?」
「いや、その……。これから帰って泉に入れてあげないといけないので……」
そう言ったら、バルドルは全てを察したように口を閉ざした。
そして静かに微笑むと、短くこう言った。
「わかった、ご苦労様だったね。フレインが元気になったら、また一緒に遊びにおいで」
「はい、ありがとうございます。では失礼します」
アクセルは大急ぎでヴァルハラに戻り、自宅に直帰した。
「兄上!」
庭の柵を乗り越えベランダに直行したのだが、兄は既に血の海に沈んでいた。
「え……? は……?」
仰向けで目を閉じたまま、微動だにしない兄。恐る恐る近づいたが、もう息をしていなかった。
兄の手には血まみれのナイフが握られていて、頸動脈を掻き切られている。とんでもない出血量だったのはこのせいか。
「は……? な、何で……? 何でこんな……」
泉に入れば助かったはずだ。わざわざ死ぬ必要はなかったはずだ。
それなのに、どうしてこんなことを……。自分がいない間に一体何があったんだ……?
「ぴー」
うさぎ小屋から、ピピが鳴く声が聞こえた。
ハッとして、アクセルはそちらに目をやった。
ゲートを潜り抜け、バルドルのいるアース神族の世界に向かい、挨拶もそこそこに鏡を突き出す。
「えっ? もうメリナを封印してしまったのかい?」
「はい、どうにか。なので後はバルドル様にお任せします」
「それはいいけど、フレインはどうしたの? 今日は一緒じゃないの?」
「いや、その……。これから帰って泉に入れてあげないといけないので……」
そう言ったら、バルドルは全てを察したように口を閉ざした。
そして静かに微笑むと、短くこう言った。
「わかった、ご苦労様だったね。フレインが元気になったら、また一緒に遊びにおいで」
「はい、ありがとうございます。では失礼します」
アクセルは大急ぎでヴァルハラに戻り、自宅に直帰した。
「兄上!」
庭の柵を乗り越えベランダに直行したのだが、兄は既に血の海に沈んでいた。
「え……? は……?」
仰向けで目を閉じたまま、微動だにしない兄。恐る恐る近づいたが、もう息をしていなかった。
兄の手には血まみれのナイフが握られていて、頸動脈を掻き切られている。とんでもない出血量だったのはこのせいか。
「は……? な、何で……? 何でこんな……」
泉に入れば助かったはずだ。わざわざ死ぬ必要はなかったはずだ。
それなのに、どうしてこんなことを……。自分がいない間に一体何があったんだ……?
「ぴー」
うさぎ小屋から、ピピが鳴く声が聞こえた。
ハッとして、アクセルはそちらに目をやった。
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