異世界最強戦士、転生先で戦うことを禁じられる

Wataru

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役に立たなくても

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 放課後。

 帰る準備をしていると、教室の前で声が上がった。

「え、マジで足りないの?」
「試合明日だぞ?」

 バスケ部の連中が困った顔をしている。

「怪我二人って何だよ……」
「人数足りねぇじゃん」

 横を通り過ぎながら、何となく足が止まった。

「助っ人、誰かいねぇ?」

 目が合う。

「城崎、運動できそうじゃん」

 軽いノリだった。

 普通なら、断る。

 関係ない。
 面倒だ。
 責任もない。

 なのに。

「……一日だけなら」

 口が先に動いていた。

「マジ!?助かる!」

 騒ぎ出す連中を横目に、鞄を肩にかける。

 そのときだった。

「何やってる」

 低い声。

 振り向くと、光一が立っていた。

「助っ人」

 それだけ答える。

「関係ないだろ」

「人数足りないらしい」

「だから?」

 短い沈黙。

「困るだろ」

 自分でも、言ってから少し驚いた。

 光一の表情がわずかに険しくなる。

「徳にもならない」

 即答だった。

「ポイントにもならない」
「帰還条件にも関係ない」

 冷静に言い切る。

「時間の無駄だ」

 バスケ部の連中は、空気を読んで先に体育館へ行った。

 教室に、二人だけ残る。

「お前」

 光一が続ける。

「戻る気あるんだろ」

「ある」

「だったら」

 少し間を置く。

「役に立たなくていい世界で」
「わざわざ役に立とうとするな」

 言葉が刺さる。

 でも、反論がすぐに出てこない。

 そのとき、担任が顔を出した。

「城崎、ちょっといいか」

「はい」

「学級委員、決まらなくてな」
「やってくれないか?」

 教室を見回す。

 誰も目を合わせない。

 面倒だからだ。

 それが普通だ。

 なのに。

「……いいですよ」

 また、口が先に動いた。

 先生はほっとした顔をして去っていく。

 光一は、完全に呆れた顔だった。

「何してる」

「分からん」

 本音だった。

「気づいたら、やってる」

 しばらく沈黙。

「この世界で」

 光一は静かに言う。

「お前が何をやっても」
「元の世界では役に立たない」

「分かってる」

「だったら」

「それでもいい」

 自分でも驚くほど、自然に出た。

 光一の目が細くなる。

「役に立たなくてもいい世界で」
「役に立てるなら」

 言葉を探す。

「……そっちの方が」
「楽なんだ」

 長い沈黙。

 光一は、ため息をついた。

「変わったな」

「そうかもな」

 鞄を持つ。

「体育館、行ってくる」

 教室を出る直前。

 背中に声が飛んだ。

「死ぬなよ」

 思わず笑った。

「体育館で死ぬかよ」

 振り返らずに手を振る。

 廊下を歩きながら、ふと思う。

 戦わなくても、
 誰かの役に立てる場所がある。

 それを知ってしまった。

 ――それが、
 違和感の正体なのかもしれなかった。
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