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リアルうさぎとかめ(第1話)
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「おい、かめ。勝負しようぜ!」
平日の昼下がり、ファミレスのドリンクバー前。
転職活動中の白井翔太(28)は、学生時代の同級生・亀田浩平(28)に突然そう言い放った。
白井は元営業マン。スーツはブランド物、時計もピカピカ。だが、最近会社を辞めた。理由は「俺はもっと自由に生きるタイプだから」。
一方の亀田は市役所勤務。地味だが安定。昼はいつも手作り弁当、趣味は図書館で読書。SNSもやらず、毎晩きっちり11時就寝。
「勝負って何の話だよ」
「人生だよ、人生!半年で俺が年収600万超えたら、俺の勝ち!」
「またそういう無茶を……」
「俺は才能があるんだ。お前みたいにコツコツやってる奴には負けねぇ」
翔太はドヤ顔で言い放った。
だが、現実はそう甘くなかった。
求人サイトを開くたび、条件の良い仕事には応募者殺到。
オンライン面接では「即戦力が欲しいんです」と断られ、気づけば家で昼ビールを飲む日々。
一方の亀田は、いつも通り淡々と過ごしていた。
朝はパンとコーヒー。
昼は弁当。卵焼き、ブロッコリー、そして冷凍シュウマイ。
夜はニュースを見ながら家計簿をつけ、週末はジョギング。
変わらない日常。でも、それが崩れない強さになっていた。
――三ヶ月後。
「おい、かめ。久しぶりだな!」
翔太は髪を無理にセットし、カフェで笑った。
「俺、今フリーランスだ。自由に生きてる」
「へぇ。何やってるの?」
「動画編集とか、デザインとか……いろいろだよ」
(実際はクラウドワークスで数件受注しただけだった)
「でも最近、金欠でさ。親の車借りてUberやってる」
「……うん、立派な労働だよ」
「なにその言い方!」
翔太はむきになった。
「いいか、俺は爆発力があるんだよ。うさぎなんだ!」
「うん。でもうさぎって、途中で昼寝して負けたろ」
「それ昔話の話だろ!」
その夜、翔太は珍しく本気を出した。
履歴書を10社分書き、深夜まで求人を漁った。
しかし翌朝、寝不足で二度寝。
昼過ぎに目を覚まし、スマホを見ると、亀田からのLINEが届いていた。
《今日も走ってきた。5キロ完走。汗が気持ちいい!》
「……マジかよ」
翔太は布団の中で呟いた。
「なんでこいつ、いつも元気なんだ」
――半年後。
公園で二人は再会した。
翔太はついに就職を決めた。物流系の中小企業だ。
「時給じゃねぇ。社員だぞ、社員!」
「おめでとう。続けられるといいな」
「お前さぁ、なんか上からじゃね?」
「そんなつもりないよ。ただ……焦らないほうが、意外とうまくいくもんだ」
翔太は鼻を鳴らした。
「俺はうさぎだ。走るのが性分なんだ」
「でも、走るのをやめたら負けだよ」
「……うるせぇ。今度マラソンでも出て勝負しようぜ」
数週間後、二人は市民マラソンにエントリーした。
翔太はスタート直後に猛ダッシュ。
沿道から拍手が起こる。
「見ろよ!俺が本気出せばこんなもん――」
五キロ地点。翔太は息が切れ、足が重くなった。
給水所の横で立ち止まる。
そこへ、ゆっくり、一定のリズムで走る亀田の姿が現れた。
「おい、かめぇ……!」
「焦るなよ、うさぎ。ゴールは逃げない」
翔太は苦笑いした。
「……やっぱお前、地味に強ぇな」
「地味でいいさ。地味は裏切らない」
亀田はそう言って、穏やかにゴールへ向かった。
翔太はその背中を見つめながら、思わず笑った。
「次は昼寝なしで勝負だ」
――現代のうさぎとかめ。
スピードよりも、継続のほうが勝つ。
そんな単純な真実を、翔太は少しだけ理解した気がした。
平日の昼下がり、ファミレスのドリンクバー前。
転職活動中の白井翔太(28)は、学生時代の同級生・亀田浩平(28)に突然そう言い放った。
白井は元営業マン。スーツはブランド物、時計もピカピカ。だが、最近会社を辞めた。理由は「俺はもっと自由に生きるタイプだから」。
一方の亀田は市役所勤務。地味だが安定。昼はいつも手作り弁当、趣味は図書館で読書。SNSもやらず、毎晩きっちり11時就寝。
「勝負って何の話だよ」
「人生だよ、人生!半年で俺が年収600万超えたら、俺の勝ち!」
「またそういう無茶を……」
「俺は才能があるんだ。お前みたいにコツコツやってる奴には負けねぇ」
翔太はドヤ顔で言い放った。
だが、現実はそう甘くなかった。
求人サイトを開くたび、条件の良い仕事には応募者殺到。
オンライン面接では「即戦力が欲しいんです」と断られ、気づけば家で昼ビールを飲む日々。
一方の亀田は、いつも通り淡々と過ごしていた。
朝はパンとコーヒー。
昼は弁当。卵焼き、ブロッコリー、そして冷凍シュウマイ。
夜はニュースを見ながら家計簿をつけ、週末はジョギング。
変わらない日常。でも、それが崩れない強さになっていた。
――三ヶ月後。
「おい、かめ。久しぶりだな!」
翔太は髪を無理にセットし、カフェで笑った。
「俺、今フリーランスだ。自由に生きてる」
「へぇ。何やってるの?」
「動画編集とか、デザインとか……いろいろだよ」
(実際はクラウドワークスで数件受注しただけだった)
「でも最近、金欠でさ。親の車借りてUberやってる」
「……うん、立派な労働だよ」
「なにその言い方!」
翔太はむきになった。
「いいか、俺は爆発力があるんだよ。うさぎなんだ!」
「うん。でもうさぎって、途中で昼寝して負けたろ」
「それ昔話の話だろ!」
その夜、翔太は珍しく本気を出した。
履歴書を10社分書き、深夜まで求人を漁った。
しかし翌朝、寝不足で二度寝。
昼過ぎに目を覚まし、スマホを見ると、亀田からのLINEが届いていた。
《今日も走ってきた。5キロ完走。汗が気持ちいい!》
「……マジかよ」
翔太は布団の中で呟いた。
「なんでこいつ、いつも元気なんだ」
――半年後。
公園で二人は再会した。
翔太はついに就職を決めた。物流系の中小企業だ。
「時給じゃねぇ。社員だぞ、社員!」
「おめでとう。続けられるといいな」
「お前さぁ、なんか上からじゃね?」
「そんなつもりないよ。ただ……焦らないほうが、意外とうまくいくもんだ」
翔太は鼻を鳴らした。
「俺はうさぎだ。走るのが性分なんだ」
「でも、走るのをやめたら負けだよ」
「……うるせぇ。今度マラソンでも出て勝負しようぜ」
数週間後、二人は市民マラソンにエントリーした。
翔太はスタート直後に猛ダッシュ。
沿道から拍手が起こる。
「見ろよ!俺が本気出せばこんなもん――」
五キロ地点。翔太は息が切れ、足が重くなった。
給水所の横で立ち止まる。
そこへ、ゆっくり、一定のリズムで走る亀田の姿が現れた。
「おい、かめぇ……!」
「焦るなよ、うさぎ。ゴールは逃げない」
翔太は苦笑いした。
「……やっぱお前、地味に強ぇな」
「地味でいいさ。地味は裏切らない」
亀田はそう言って、穏やかにゴールへ向かった。
翔太はその背中を見つめながら、思わず笑った。
「次は昼寝なしで勝負だ」
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スピードよりも、継続のほうが勝つ。
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