崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり

イミヅカ

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第三話 誇りとプライドを胸に

不穏な噂

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 このままではこちらに飛び火しかねない。ナガレは危機が去ってホッとした雰囲気の騎士に近づいた。
「あの、何かあったんですか?」 
「は、はい! 落ち着いて聞いてください。実はこの地域周辺で、冒険者数人が行方不明になったのであります」
「へえ、それはお気の毒に。そんなことでどうしても騎士さんがここまで?」
 残念ながら、クエストの途中に殉職したのだろう。ナガレはそう考えた。確かに人の死は悲しむべきことだが、冒険者家業は常に危険と隣り合わせ。何かの不幸が重なれば、ベテラン冒険者だって簡単に命を落とす……。彼自身スカルクリーチャーに半殺しにされたのもつい最近のことである。
「いえ……どうも冒険者ギルド本部が、この状況を危険視しているようでありまして。何でも『ホムーランが全員姿を消した』とのことであります」
「えっ、なんだって⁉︎」
 先ほどの余裕が吹っ飛び、ナガレまで騎士に詰めかけた! 
「あのホムーラン⁉︎ ヤバいクエストを何個もクリアしている精鋭パーティじゃないか!」
 冒険者になって日が浅いナガレですら、その名前は聞いたことがある。冥界の番犬と呼ばれる凶暴なモンスターであるケルベロスの討伐エピソードが有名だ。それ以外でもグリフォン、デスコーピオ、ワイバーンなど困難なクエストをこなしている有名冒険者である。それが誰一人戻らず失踪したなど、ただ事では無い。
「な、ナガレようー? それ、強いのか?」
 事情をよく知らないルックが聞いてくるが、ナガレは驚きを隠せないでいる。
「ホムーランは個々の強さもあるけど、チームワークがスラガン地方で一番なんだ。メンバー同士の絆も尋常じゃない……実際にピンチになった時、メンバーの誰かを逃して助けを呼んで助かったこともたくさんあるんだ! それが全員いなくなった……⁉︎」
「はい、そうであります! ギルド本部は我々騎士団に協力を要請し、急ぎメンバーの捜索及び近隣への注意喚起を行っております。皆様も街の遠くへ行かれる場合はお気をつけ下さいませ!」
 騎士はそう高らかに告げると、大きい声を出したからか「ケホケホ……」と軽く咳き込んでいた。

 とにかく事情が何となく分かったのと、アリッサが真剣なナガレを見て大人しくなったので、街のみんなはわらわらと元の生活に戻り始めた。残ったのはナガレ、ルック、アリッサ、アルクル、マディソンの五人。マディソンが騎士に歩み寄った。
「騎士様、その冒険者たちの手がかりは何かありますかな? もしこの街へ逃げてくることがあれば、死んでいなければ手当てできますが……。機密情報でなければ、ぜひ教えて下さい」
「は、はい。多くの情報を取得するためなので機密は設けてはいません。えーと……そう、冒険者たちは『カープー森林の調査』というクエストを受注し当地に向かった後に消息不明とのことであります」
「カープー森林といやあ、ここからそう遠くないじゃんか。おー怖い怖い、何かあったら俺はすぐ逃げるからな」
 アルクルが手のひらを合わせ、わざとらしくブルブルと震える。その目を見れば全く怖がっていないことは一目瞭然だ。
(カープー森林だって? なんかどこかで聞いたような……。なんだかイヤな感じだなぁ)
 ナガレはそう考えて、首を振った。きっと気のせいに決まってる。
「ふむ……一応、治療の準備はしておきましょう。ありがとうございました……では私はこれで」
 マディソンはそう言って、スタスタと去っていった。……と、アルクルはナガレが背負ったズダ袋を覗き込む。
「ナガレ君、それクエストのやつ?」
「あっと、忘れてた。納品しなきゃな……」
「よし、なら一緒にギルドまで行こうぜ」
「そうだな。結構重いから半分持ってよ」
「えーっ、しょうがねえなー……」
 そう言いつつ、二つあるうちの一つを肩に担ぐアルクル。二人は並んでギルドへ歩き始めた。
「じゃあね、ナガレ君! また後でねー!」
「ほら行くぞねーちゃん! まだ昼飯食ってねえんだろ? シチュー作ってあっから早く来い!」
「わーい、ありがとルック! 怒鳴っちゃったからお腹ぺこぺこなの!」
「それはお前が悪い!」
「うっ……」
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