365 / 1,728
第十五話 リトル・ドラゴンスレイヤー
どこかで見た影
しおりを挟む
「さ、さんぜんダラー……!?」
「マジか、給料一か月分くらいじゃん!」
アリッサとルックが唖然とする……が、ナガレは財布からさっと札束を出した。
「はい、三千ダラー。どうぞ」
「……」
無言で受け取ったギン爺は札を数える。
「ひーふーみー…………確かに三千ダラー。まったく、こんなにあっさり払いおって……」
「あはは、参ったなぁ……」
正直、何度も強いモンスターと戦っているおかげで金だけはたくさんある。ガラガラマムシを倒した時の、素材を売った金がまだ残っているくらいだ。多分ここ数年は遊んで暮らせるほどである。
「まあ、それはワシがとやかく言うことではないか。ようし分かった! ただ、作業には時間がかかるだろう。お前さんにはすまんが、他の依頼品もある。また明日来てくれ」
「おっけー、分かったよ。また明日な」
そう言ってナガレたちは、ひとまずギン爺と別れた。
「アリッサたち、まだついてくるの? 別にいいんだけど……お店の方はいいんかい?」
「いいんだよ、久しぶりなんだからもうちょっと付き合えって!」
「右に同じくぅ~♪」
「でも今回の用事は大方終わっちゃったなぁ。スキルウォッチャーは昼頃じゃないと開かないし、武器も防具も無いからクエストも行かないし……」
そんなことを話しながら、あてもなく散歩するナガレたち。
「そういえばジョーは? しばらく会ってないけど、アイツ元気か?」
「それがさー、ナガレ君がいない間、ジョー君ずーっと調べ物をしてたの。ルックが隣町まで仕入れに行くとこに一緒についていって、本をいっぱい買ってきたんだ」
「俺は頭悪いから分かんねえけど、なんか民族史とか宗教とかそんな感じの奴だったと思うぞ」
「へー、そうなんだ……」
何を調べているのかは、後で会えたら聞くとしよう。
ピュウ~~……。
ざっざっざっ……。
冷たい突風が吹き、ナガレたちの頬をひんやり撫でる。
「うへぇ、もう冬だなぁ。この前まであんなに暑苦しかったのによう」
「全くだよ。タイガスの近くには、ベイス谷っていうでっかい峡谷があるんだ。そこの風が町まで来るからもう寒くって……」
そんなことを話しながら歩く三人。どこへ向かっているのかはあまり考えていない。思えば道行く人の顔も、なんとなく覚えてきたような気がする。
……その分、よそ者が来ればすぐ分かるワケで。
「あれ? アイツ何もんだ」
最初に気づいたのはルック。いきなり立ち止まって前方へ目を凝らした。
見ればそこには鎧姿の女性がいた。こちらへ歩いてくる。
「あれって冒険者さんの鎧だよね。あれがフローレンスさん?」
会話の合間にフローレンスのことを紹介していた。しかしアレは全くの別人だ。
「いや、アイツは金髪糸目白肌で、二メートル級の長身なんだ。なによりアイツはあんなに胸が大きくない」
「そういうこと、絶対に女の子の前で言っちゃダメだよ。……でも、確かにあの人は違うみたい」
アリッサの言う通り、その女性はアホ毛付きの茶髪ショートヘアで、若干日焼けした色白の肌。ほっそりしたスレンダーな体形で、胸は小さいが絶壁ではない。鎖帷子のインナーに、毛皮の腰巻と胸当て腰当てを着ていた。
そして頭には白黒の垂れたモフモフ犬耳、足からのぞくモフモフの尻尾……。
「……あれ、あの人どっかで見たような……」
「マジか、給料一か月分くらいじゃん!」
アリッサとルックが唖然とする……が、ナガレは財布からさっと札束を出した。
「はい、三千ダラー。どうぞ」
「……」
無言で受け取ったギン爺は札を数える。
「ひーふーみー…………確かに三千ダラー。まったく、こんなにあっさり払いおって……」
「あはは、参ったなぁ……」
正直、何度も強いモンスターと戦っているおかげで金だけはたくさんある。ガラガラマムシを倒した時の、素材を売った金がまだ残っているくらいだ。多分ここ数年は遊んで暮らせるほどである。
「まあ、それはワシがとやかく言うことではないか。ようし分かった! ただ、作業には時間がかかるだろう。お前さんにはすまんが、他の依頼品もある。また明日来てくれ」
「おっけー、分かったよ。また明日な」
そう言ってナガレたちは、ひとまずギン爺と別れた。
「アリッサたち、まだついてくるの? 別にいいんだけど……お店の方はいいんかい?」
「いいんだよ、久しぶりなんだからもうちょっと付き合えって!」
「右に同じくぅ~♪」
「でも今回の用事は大方終わっちゃったなぁ。スキルウォッチャーは昼頃じゃないと開かないし、武器も防具も無いからクエストも行かないし……」
そんなことを話しながら、あてもなく散歩するナガレたち。
「そういえばジョーは? しばらく会ってないけど、アイツ元気か?」
「それがさー、ナガレ君がいない間、ジョー君ずーっと調べ物をしてたの。ルックが隣町まで仕入れに行くとこに一緒についていって、本をいっぱい買ってきたんだ」
「俺は頭悪いから分かんねえけど、なんか民族史とか宗教とかそんな感じの奴だったと思うぞ」
「へー、そうなんだ……」
何を調べているのかは、後で会えたら聞くとしよう。
ピュウ~~……。
ざっざっざっ……。
冷たい突風が吹き、ナガレたちの頬をひんやり撫でる。
「うへぇ、もう冬だなぁ。この前まであんなに暑苦しかったのによう」
「全くだよ。タイガスの近くには、ベイス谷っていうでっかい峡谷があるんだ。そこの風が町まで来るからもう寒くって……」
そんなことを話しながら歩く三人。どこへ向かっているのかはあまり考えていない。思えば道行く人の顔も、なんとなく覚えてきたような気がする。
……その分、よそ者が来ればすぐ分かるワケで。
「あれ? アイツ何もんだ」
最初に気づいたのはルック。いきなり立ち止まって前方へ目を凝らした。
見ればそこには鎧姿の女性がいた。こちらへ歩いてくる。
「あれって冒険者さんの鎧だよね。あれがフローレンスさん?」
会話の合間にフローレンスのことを紹介していた。しかしアレは全くの別人だ。
「いや、アイツは金髪糸目白肌で、二メートル級の長身なんだ。なによりアイツはあんなに胸が大きくない」
「そういうこと、絶対に女の子の前で言っちゃダメだよ。……でも、確かにあの人は違うみたい」
アリッサの言う通り、その女性はアホ毛付きの茶髪ショートヘアで、若干日焼けした色白の肌。ほっそりしたスレンダーな体形で、胸は小さいが絶壁ではない。鎖帷子のインナーに、毛皮の腰巻と胸当て腰当てを着ていた。
そして頭には白黒の垂れたモフモフ犬耳、足からのぞくモフモフの尻尾……。
「……あれ、あの人どっかで見たような……」
0
あなたにおすすめの小説
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。
勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる