この街で

天渡清華

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 背が高くがっしりした身体、太い眉の下の力強い瞳。髪は濡れたままで、髪をセットしていないだけで、ボスとしての威厳や鋭さが消え、幼さすら感じさせた。もっともそれは、幼なじみだからそう思うのかも知れない。
「なんだ、いたのか」
「いたのかはねえだろう、ここは俺んちだぞ?」
 だよな、と屈託なく言うと、シュウは帽子とヘッドホンを空いているソファに放り、ケンの隣に座る。スマートフォンをいじって、殺風景な部屋の雰囲気に似あわないレゲエが流れ出すのを、ジャズに変えた。一応、この場にふさわしい音楽にしたつもりだ。
「つまみもなしかよ」
 顔をしかめ、シュウはケンがテーブルに置いた缶ビールをすかさず横取りして飲んだ。
「店からなんか料理持ってきてもらおうぜ」
 立ち上がってキッチンに向かいかけていた、ケンの背中に言う。
「お前はつくづく贅沢だよな」
 振り返ったケンはあきれ顔で、広い肩をすくめた。
「贅沢が許されてるのに、ガマンしてどうするんだ?」
 シュウは理解できない、という顔をした。いつどうなるか分からないこの世界では、楽しく生きなければ損だ。
「……まあ、な」
 ケンはキッチンへ向かい、冷蔵庫から缶ビールを数本出してきてテーブルに置く。早速一本開けて飲みながら、ソファに座った。
「そうだ、店に新しいシェフが入ったんだ。そいつの料理にするか?」
「マジ? いつから? 何料理?」
 うまいものには目がなく、食べ歩きも好きなシュウは、途端に目を輝かせた。丸い目はくるくるとよく動き、愛嬌がある。
「おとといだったかな、えーと……」
「いいや、とりあえず味見したい」
 シュウと違って、ケンは食に興味がない。食べれば分かることだし、深く訊くだけ無駄だ。
「で、今日は? 出張か?」
 クラブに電話をかけて料理のデリバリーを頼むと、ケンはソファの背もたれに頬杖をつき、シュウの方を向いた。
「そうとも言うけど、そうじゃないとも言う」
 シュウは楽しげににやりと笑う。えくぼが浮かぶ笑顔は、シュウの男娼としての武器の一つと言えた。美形とは言えない自分は、愛嬌や人なつっこさ、テクニックで勝負するしかないと思い、その結果今がある。
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