この街で

天渡清華

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 ランプが作る淡い光が、声の輪郭をさらにつややかにする。笑みを消し、まっすぐにシュウを見つめるキヨヒト。
 きっちりセットされた、黒々とした髪。長く弧を描く濃い眉、切れ長の瞳。彫りが深く、高い鼻。引き締まった口もと。シルバーのネックレス。広い肩。テーブルの上で組まれている、手のひらが分厚い大きな手。
 なんて答えていいのか分からないようなふりをしながら、シュウはキヨヒトを注意深く観察した。どこかに嘘がないか、見極めようとした。同時にぼんやりと、俺はこの人の数年がかりのテストをパスしたのかも知れない、とも思う。
「お前の歌が、あんな狭いクラブで消費されるだけなんてもったいない。お前には歌の魅力だけじゃない、エンターテイナーとしての才能がある」
「そう言ってもらえて、うれしいです」
 お世辞に応えるような、軽い調子で言う。途端にキヨヒトの表情が険しくなり、テーブルに身を乗り出してきた。
「俺は心から言ってるんだ、いつまで才能の無駄遣いをする気だ? 俺がお前をメジャーなシンガーにしてやる」
 キヨヒトは本気だった。シュウが少し気のない様子を見せただけで、その顔には怒りの表情すら浮かんだ。
「まずは、俺とデュエットした曲を出す。その時には、お前の顔はシークレットにする。その後で、俺のプロデュースで正体を見せてデビューする。どうだ?」
 シュウはさすがに真顔になった。心の底から湧き上がってくる感情は、喜びなのか恐れなのか。少し手が震えているのに気づき、テーブルに置いていた右手でさりげなく髪をなでつけた後、手を膝に置く。強く握りしめる。
「あの店から飛び出すのは、怖いか?」
 キヨヒトの瞳から険しさが消え、少し首をかしげて慈しむようにシュウを見る。心の動きを見透かされたのか。
「俺、才能がもったいないとか思ったこともなかったんで……」
 シュウはコーヒーを一口飲み、タルトにフォークを入れた。舌がなにかで覆われてしまっているかのようで、味があまり感じられない。頭がさびついたようにうまく回らない。
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