11 / 61
1
1-11
しおりを挟む
ランプが作る淡い光が、声の輪郭をさらにつややかにする。笑みを消し、まっすぐにシュウを見つめるキヨヒト。
きっちりセットされた、黒々とした髪。長く弧を描く濃い眉、切れ長の瞳。彫りが深く、高い鼻。引き締まった口もと。シルバーのネックレス。広い肩。テーブルの上で組まれている、手のひらが分厚い大きな手。
なんて答えていいのか分からないようなふりをしながら、シュウはキヨヒトを注意深く観察した。どこかに嘘がないか、見極めようとした。同時にぼんやりと、俺はこの人の数年がかりのテストをパスしたのかも知れない、とも思う。
「お前の歌が、あんな狭いクラブで消費されるだけなんてもったいない。お前には歌の魅力だけじゃない、エンターテイナーとしての才能がある」
「そう言ってもらえて、うれしいです」
お世辞に応えるような、軽い調子で言う。途端にキヨヒトの表情が険しくなり、テーブルに身を乗り出してきた。
「俺は心から言ってるんだ、いつまで才能の無駄遣いをする気だ? 俺がお前をメジャーなシンガーにしてやる」
キヨヒトは本気だった。シュウが少し気のない様子を見せただけで、その顔には怒りの表情すら浮かんだ。
「まずは、俺とデュエットした曲を出す。その時には、お前の顔はシークレットにする。その後で、俺のプロデュースで正体を見せてデビューする。どうだ?」
シュウはさすがに真顔になった。心の底から湧き上がってくる感情は、喜びなのか恐れなのか。少し手が震えているのに気づき、テーブルに置いていた右手でさりげなく髪をなでつけた後、手を膝に置く。強く握りしめる。
「あの店から飛び出すのは、怖いか?」
キヨヒトの瞳から険しさが消え、少し首をかしげて慈しむようにシュウを見る。心の動きを見透かされたのか。
「俺、才能がもったいないとか思ったこともなかったんで……」
シュウはコーヒーを一口飲み、タルトにフォークを入れた。舌がなにかで覆われてしまっているかのようで、味があまり感じられない。頭がさびついたようにうまく回らない。
きっちりセットされた、黒々とした髪。長く弧を描く濃い眉、切れ長の瞳。彫りが深く、高い鼻。引き締まった口もと。シルバーのネックレス。広い肩。テーブルの上で組まれている、手のひらが分厚い大きな手。
なんて答えていいのか分からないようなふりをしながら、シュウはキヨヒトを注意深く観察した。どこかに嘘がないか、見極めようとした。同時にぼんやりと、俺はこの人の数年がかりのテストをパスしたのかも知れない、とも思う。
「お前の歌が、あんな狭いクラブで消費されるだけなんてもったいない。お前には歌の魅力だけじゃない、エンターテイナーとしての才能がある」
「そう言ってもらえて、うれしいです」
お世辞に応えるような、軽い調子で言う。途端にキヨヒトの表情が険しくなり、テーブルに身を乗り出してきた。
「俺は心から言ってるんだ、いつまで才能の無駄遣いをする気だ? 俺がお前をメジャーなシンガーにしてやる」
キヨヒトは本気だった。シュウが少し気のない様子を見せただけで、その顔には怒りの表情すら浮かんだ。
「まずは、俺とデュエットした曲を出す。その時には、お前の顔はシークレットにする。その後で、俺のプロデュースで正体を見せてデビューする。どうだ?」
シュウはさすがに真顔になった。心の底から湧き上がってくる感情は、喜びなのか恐れなのか。少し手が震えているのに気づき、テーブルに置いていた右手でさりげなく髪をなでつけた後、手を膝に置く。強く握りしめる。
「あの店から飛び出すのは、怖いか?」
キヨヒトの瞳から険しさが消え、少し首をかしげて慈しむようにシュウを見る。心の動きを見透かされたのか。
「俺、才能がもったいないとか思ったこともなかったんで……」
シュウはコーヒーを一口飲み、タルトにフォークを入れた。舌がなにかで覆われてしまっているかのようで、味があまり感じられない。頭がさびついたようにうまく回らない。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~
上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。
ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。
「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」
そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。
完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか?
初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される
八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。
蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。
リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。
ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい……
スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる