この街で

天渡清華

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 それから一週間ほどは、ただじっと相手の出方を待つ日々が続いた。しかし、ケン達もなにもしていなかったわけではない。どうやらトーキョーにシマを持つ組織と敵が手を結んでおり、その組織がやらせているらしいと分かってきた。しかも知らない仲ではない。
「まさか、ササキさんのとこだとはな」
 ササキは若い頃先代と同じ組織にいたこともある、高齢だがいまだに組織のトップに座り続けている男だ。ササキが直接絡んでいるかどうかは分からないが、自分達の仕業だと分からないようにするやり口に、ケンは腹が立った。こっちのシマが欲しいなら、堂々とぶつかってくればいい話だ。
「まあとにかく、黒幕が分かったのはよかった」
 社長室のソファに深くもたれて言うケン。闘志がみなぎっているその姿を、反対側に座っているムカイがまぶしそうに見る。
「しかも、ヤツらはそろそろしかけてきますよ」
 ムカイはそう言って、目の前のローテーブルに置いたノートパソコンを操作した。内蔵のスピーカーからノイズ混じりの音声が再生される。
『師匠、俺そろそろ帰ってこいって言われちゃって』
『帰るって、どこに?』
『元いたとこに決まってるじゃないスか。ここでの暮らし、結構楽しかったから残念だなあ』
 カズキとダイスケの声だ。音質は悪いが、言っていることははっきりと聞き取れる。
『でも、師匠には残ってもらいますよ。最後にドカンと盛大にやってもらわないと』
『……そうか。俺は殺されるだろうな』
 当然のように言うダイスケ。カズキははっ、と笑った。
『俺、あんたのそういうとこ好きっス。俺も師匠連れて帰りたいけど、命令なんで。そうだ最後、お別れにうまいもん食わせて下さいよ』
 まだ会話は続いていたが、ムカイはいったん再生を停止した。
「最後にドカンと盛大に、か。これはいつのだ?」
「おとといです。店からシュウさんに持っていってもらったワインボトルに、盗聴器をしかけました。さすがに見抜けなかったか……」
「分かっていて聞かせたか、だな」
 ケンはシュウの名前が出たことに眉をしかめた。シュウはダイスケのところには頻繁に通っているらしい。
「失礼します、ムカイさんいらっしゃいますか」
 どたどたと足音がして、ノックの後社長室のドア越しに声。
「おう、入れ」
 ムカイが応えるとドアが開き、部下の若い者が一歩進んだだけで部屋には入らずに告げた。顔が赤く、興奮気味だ。
「つい今、HEAVENのウエイターのカズキが刺されました」
 ケンとムカイは思わず無言で顔を見あわせた。もう「帰る」というのか。
「ボス、ちょっと行ってきます」
 ムカイは機敏に立ち上がった。ムカイには「統括マネージャー」という肩書きで、HEAVENや姉妹店の取りまとめを任せている。
「おう、頼んだぞ」
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