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「そりゃあいい、俺は賛成です。この際しっかり落とし前つけさせましょう」
真っ先に賛成したのは、自分の息のかかった飲食店を荒らされた古参の幹部。肥えた身体を弾ませるようにして全身でうなずく。
ケンは社長室に幹部達を集め、今回シマを荒らした黒幕のトップ、つまりササキと会い、直接決着をつけたいと告げた。
「俺は反対です。シラを切られたら終わりじゃねえかと」
ムカイが冷静に言うと、他の幹部達は口々にムカイに反論した。ケンのデスクから見ると、ソファに座っている幹部達は化け物がひしめいているようだった。何度も修羅場をくぐってきた連中だから、一目で一般人ではないと分かる凄みがある。いつ暴れられるかとうずうずしていたのだろう。
「勘違いするな、ドンパチは最後の手段だ。あくまで話しあいでケリをつけたい」
ケンがデスクに身を乗り出して言うと、全員あっけにとられたような顔になった。
「ボス、そんなぬるい手がきく相手じゃねえでしょうよ」
「ぬるいって言ったか。なんなら俺は一人で行くつもりだ」
スーツの肩がはちきれそうなほど鍛えられた身体から発せられる、地を這うような低い声。場の空気が一気に冷えた。すんません、と発言した幹部が思わず謝る。
見かけ倒しでいい、本心を悟られるな。器は勝手に作られる。先代の教えを、ケンは笑いそうになるのをこらえて噛みしめた。周りが勝手に大器だと見るようなルックスだったのも、先代に見初められた一因だろう。それを、敵味方どちらに対しても存分に利用するまでだ。
「お一人ちゅうのは、さすがに……」
ケンはにや、と笑った。
「それぐらいの覚悟で行くってことさ。一応、若いのを二人ぐらいは連れて行く。俺になにかあったら、その時は頼んだぞ」
興奮したようにうなずく。心配げに沈黙する。反応は様々だ。なにかあった時には、自分が上に立とうと考えている者もいるだろう。それでいい。もちろん生きて帰るつもりだが、なにもかも失ったっていい、そう思ってぶつかった方がたぶんうまく行く。
「先方に渡りをつけるのは、お前に任せる。場所も向こうの言うとおりでいい」
明らかに反対したのはムカイだけだったから、ケンはもう話は終わったと見た。幹部の一人に指示すると立ち上がり、デスクの上に置いていたスマートフォンをつかむ。たとえ本部でも、長時間幹部達が一ヶ所に集まるのは避けた方がいいだろう。
「じゃあな、くれぐれも身辺気をつけてくれよ」
幹部達がいっせいに立ち上がり、一礼する。部屋を出ようとするケンを、なにか言いたげに見るムカイ。その視線を受けて、ケンは笑みを深めた。
「ダイスケは、お前に任せる。生かしてやれ」
ムカイがとまどうような声で返事するのを、ケンは背中で聞いた。なにか言いたげだったのはおそらくそのことではないだろうが、ムカイはダイスケを気に入っていたようだから、悪いようにはしないだろう。
真っ先に賛成したのは、自分の息のかかった飲食店を荒らされた古参の幹部。肥えた身体を弾ませるようにして全身でうなずく。
ケンは社長室に幹部達を集め、今回シマを荒らした黒幕のトップ、つまりササキと会い、直接決着をつけたいと告げた。
「俺は反対です。シラを切られたら終わりじゃねえかと」
ムカイが冷静に言うと、他の幹部達は口々にムカイに反論した。ケンのデスクから見ると、ソファに座っている幹部達は化け物がひしめいているようだった。何度も修羅場をくぐってきた連中だから、一目で一般人ではないと分かる凄みがある。いつ暴れられるかとうずうずしていたのだろう。
「勘違いするな、ドンパチは最後の手段だ。あくまで話しあいでケリをつけたい」
ケンがデスクに身を乗り出して言うと、全員あっけにとられたような顔になった。
「ボス、そんなぬるい手がきく相手じゃねえでしょうよ」
「ぬるいって言ったか。なんなら俺は一人で行くつもりだ」
スーツの肩がはちきれそうなほど鍛えられた身体から発せられる、地を這うような低い声。場の空気が一気に冷えた。すんません、と発言した幹部が思わず謝る。
見かけ倒しでいい、本心を悟られるな。器は勝手に作られる。先代の教えを、ケンは笑いそうになるのをこらえて噛みしめた。周りが勝手に大器だと見るようなルックスだったのも、先代に見初められた一因だろう。それを、敵味方どちらに対しても存分に利用するまでだ。
「お一人ちゅうのは、さすがに……」
ケンはにや、と笑った。
「それぐらいの覚悟で行くってことさ。一応、若いのを二人ぐらいは連れて行く。俺になにかあったら、その時は頼んだぞ」
興奮したようにうなずく。心配げに沈黙する。反応は様々だ。なにかあった時には、自分が上に立とうと考えている者もいるだろう。それでいい。もちろん生きて帰るつもりだが、なにもかも失ったっていい、そう思ってぶつかった方がたぶんうまく行く。
「先方に渡りをつけるのは、お前に任せる。場所も向こうの言うとおりでいい」
明らかに反対したのはムカイだけだったから、ケンはもう話は終わったと見た。幹部の一人に指示すると立ち上がり、デスクの上に置いていたスマートフォンをつかむ。たとえ本部でも、長時間幹部達が一ヶ所に集まるのは避けた方がいいだろう。
「じゃあな、くれぐれも身辺気をつけてくれよ」
幹部達がいっせいに立ち上がり、一礼する。部屋を出ようとするケンを、なにか言いたげに見るムカイ。その視線を受けて、ケンは笑みを深めた。
「ダイスケは、お前に任せる。生かしてやれ」
ムカイがとまどうような声で返事するのを、ケンは背中で聞いた。なにか言いたげだったのはおそらくそのことではないだろうが、ムカイはダイスケを気に入っていたようだから、悪いようにはしないだろう。
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