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第三部 天 獄
39抵抗と服従の狭間①※
しおりを挟む服を剥いて全裸にされ、ほどかれた部屋着の腰紐で、抵抗できぬよう後ろ手に肘から下を縛られる。
艶めく漆黒の髪が無慈悲に手繰られたかと思うや、身を引きずり起こされて寝台の上に座らされた。
ナシェルは感情を殺し、なすがままに身を委ねる。蒼白い貌をレストルが斜め上から覗き込んでくる。端整な口元に、酷薄な笑みを浮かべていた。
男は露わになったナシェルの胸に咲く淡い色をした莟や、下肢の間で密やかに茂る秘毛に、舐るような、値踏みするような眼差しを注いでくる。
ナシェルは視線を避けるように瞼を閉ざし、闇に向き合おうとした。闇の中にただひとつの道を……王へと至る道を、思い浮かべたかった。
幾重にも張り巡らされた天蓋の紗が、差し込む光をいくばくかは遮っているはずなのに、それでもきつく閉じた瞼の裏は漂白されたようにまだ眩しく、白く、いくら探し求めてもあの燃え立つような王の眼差しを見い出すことは叶わぬ。
残酷な言葉が浴びせかけられる。
「眼をあけて、ちゃんと俺を見ていろ……、俺の声を聞き、俺の指を感じろ。俺の所有の証を、今からお前に刻みこんでやる。お前を服従させてやる」
そう言ってレストルはふたたび唇を重ねてきた。
「んッ……ン……」
舌が獰猛な動きで侵入してくる。
白い喉を、締めあげるように片方の手で掴み、強引に熱い舌を進めてくる。仰向かされたナシェルは唇を閉ざすこともできず、蛇のように舌を絡ませてくる男を、受け入れざるをえない。
淫らな音を立て、犯すような口づけが長い間、続けられた。
溢れたふたりの唾液が顎を伝い落ち、ナシェルの胸に下腹に、点点とこぼれた。
息継ぎすら許されない。次第に思考が鈍ってゆく。
(父上……)
生まれて初めて王と交わったあの時以来……己の躯はもうすでに、加虐的な愛に耐えうるように造り替えられているのだ。そうだ……どんな凌辱を受けようが、初物を散らされた生娘のように騒ぐほどのことでもない。
信じていた貴方からあの日突然受けた、あの衝撃に比べれば……。
そう、己に云い聞かせる。
そう思わなければ、屈辱でどうになってしまいそうだ。
「……う、……ッ」
苦しくても、顔を背けることも許されない。髪を掴まれ、喉を押さえられている。
交わり合った熱い唾液を喉奥へ呑みこまされながら、彼はまた、サリエルがかつて冥界で味わったものと同じ病苦に蝕まれることへの覚悟をも、決めねばならなかった。
己の躯を犠牲にしようとも…光の毒をこの身に受けて、たとえいずれ消滅する時を迎えようとも……それを受け入れるしかない。
(ああ……でも駄目だ。やはり生きて王の元へ戻らねば……!)
ナシェルの口腔を、滑らかな舌が荒らしていく。
巧みなキスに、魂が持っていかれそうになる。
甘い蹂躙に逆上せたナシェルの心を踏みつけるように、突如レストルの唇が離れた。
「……!」
現実に引き戻されたナシェルは、眼前の男を睨みつけた。
はぁはぁと切ない呼吸に肩が上下する。
虚勢を張る姿は、ますますレストルの嗜虐心を掻きたてる。
「その目はなんだ? 口づけだけで溺れる淫売のくせに、俺に反抗しようというのか?」
レストルの指がふたたび伸びて、ナシェルの顎を捉える。
「お前にはみっちり服従の精神を叩き込まねばならないようだな。……まずは俺を『ご主人様』と呼んでみろ」
「…………」
「さあ、どうした?」
冗談ではない。今この男に身を委ねるのは状況的に仕方がないとはいえ、やはり奴隷の真似までは絶対にできない。
ナシェルは躯はともかく高貴な心までをも、明け渡すつもりはなかった。至近に迫る男の顔を睨み据え、はっきり拒絶する。
「……体は好きにするがいい。だが言葉で私を服従させようなどというのは無駄なことだ。心まで貴様の奴隷には、なら……ん…!」
男の手が不意に、露わになった胸の蕾に触れてくる。びくりと、躯が震えてしまった。
レストルは美しい指を動かし、蕾を撫でまわして刺激を与えながら、戦慄くナシェルを眺めて笑んでみせた。
「この期に及んでまだ口答えするとは、強情な虜囚だな。思い知らせてやらなければ、分からぬらしい」
「貴様に服従などするつもりは、ない……ッ。黙って、さっさと犯せばいい…」
「ただ犯すだけでは、つまらん。生意気なお前の自尊心を、へし折るまではな」
そう云ってレストルは、莟に這わせた指で、熟れた果実のようなそれを、くちゅりと潰すように摘み上げる。
「……んッ……あぁ……!」
びりびりと快感が奔る。
ナシェルは肩を捩り、身悶えた。両手が後ろで縛られているので突っぱねることができない。
逃れようと躯を傾けるも、レストルの手に捕らえられてむしろ、上体を委ねるような姿勢になってしまう。
「乳首も相当に敏感なようだな? 我慢せず声を出せ……淫らな喘ぎ声を、もっと聞かせてみろ」
「……っ、ひ……」
男は腕でナシェルを抱きとめ、なおも執拗に胸の突起を責め立てた。ナシェルは歯を食いしばり、逃れようと身をよじる。
「……ッッ……!」
「……この程度では喘けないのか? もっと酷くしてやったほうがいいようだな」
「…………」
必死に声を殺すナシェルの表情を加虐的な笑みで見つめながら、レストルはさらに今度は爪を立てて胸の果実を荒らしはじめた。大きな爪で左右を交互に手酷く抓られ、これには思わず苦しみの声が漏れる。
「ん……ッう……ゃぁあっ……」
「ちゃんと声が出せるじゃないか。だが……まだまだ足りない」
レストルはナシェルの躯を一旦離す。ぐらりと傾いだその頬に、艶やかな黒髪が張りつく。
レストルは唇を近づけ、すでにぷっくりと赤く充血している胸の尖りを、片方、口に含んだ。
「……ひ……」
息を吸い思わず仰け反るナシェルの背を抱きとめ、莟をしゃぶりあげながら、もう片方にはねちねちと執拗な愛撫と痛みを交互に加えていく。躯のそこかしこが堪えられずに反応しはじめるにつれ、ナシェルの唇も轡を解かれたように、徐々に切ない声を上げ始めた。
「ん……っアァ……ッ」
舌を莟にじっくりと押し付けられ、熱い吐息を吹きかけられる。それと同時にもうひとつの莟は激しく揉みしだかれて、弾けそうなほどに潤ってしまう。
「はぁ……は……ぁ……、」
まだ胸への愛撫をはじめたばかりだというのに、すぐに色づき熟れはじめた躯。ためらいがちに漏れ始めた喘ぎもまた、甘くゆるやかに鼓膜を打つ美声だった。
(なるほど、これは大した器だ……。まさかこんな宝玉とはな……)
レストルは満足げに唇を滑らせ、ナシェルの滑らかな肌に大事そうにひとつひとつ、刻印を残してゆく。
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