泉界のアリア

佐宗

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第四部 至高の奥園

27戒めの下に愛され②※

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 にべなくあしらった王は、闇の精たちに小さな宝石箱を運んでこさせた。
 ナシェルの膝元で恭しく蓋が開けられる。
 繻子布の台座に丁寧に置かれていたのは象牙色の小ぶりな張り型だった。
 ナシェルは息を呑む。

 胴の部分にたくさんの真珠が埋め込まれて凹凸を形成している。
 茸の傘の部分……カリ首も見事な張り出し具合だ。

 不安を掻き立てられるのは、張り型には持ち手がついておらず、根元に細い鎖がついているだけなのだ。奥まで入ってしまいそうだ。
 こんなものを奥で動かされたら、きっと正気ではいられない……。

 視線で拒否しようとするが王は構わず精霊たちに薬湯の入ったたらいを運ばせ、
張り型を湯につけた。

「少し温めてから入れようね。大丈夫……、今日のはそんなに大きくないから」

 王はぬめりのある薬湯で張り型を温める間、ナシェルの白い腰を撫で上げ、耳や肩にたくさん口づけする。

 ナシェルは湯気を立ち昇らせる盥の中に視線を落とし、その括れと凹凸が粘膜をこするときの快美を予測して目を潤ませる。
 その張り型が怖いというよりは、その責めに我を忘れてしまいそうな自分が怖いのだった。


 精霊たちが盥のふちに腰かけて陶然と見つめる中、王はやがて張り型を湯から掴み上げた。
 暖かい王の手と張り型の感触が、尻のあわいを上下に行き来する。
 陰茎の下の双珠をも撫でられて、ナシェルは快感に竦みながら「せめて精霊たちを散らして下さい」と切羽詰まった声で請う。

「どうして。こやつらも悦んでおるというのに」

 主神同士の交合を精霊たちが悦ぶのは当然だが、我を失して悶える様子をこのような至近で見物されるのは耐え難い。

 ナシェルが再度訴えると、冥王は精霊たちを切り離した。
 精霊たちは天蓋を出てゆき、カーテンレールの上に屯した。
 部屋から追い出して欲しかったのだが、王の譲歩はそこまでのようだ。

 うすい天蓋の垂れ幕ごしに、遠巻きに観察されながら、ナシェルは父王の手で張り型を体内に入れていただく。


「ひぁ――あん――……!!」

 ぬちぬちと受け入れながら全身を鳥肌立たせ、躯を反らせる。絶望的なまでのその快楽からなんとか逃れようと腕を畳むが、肘から先が戒めの中にあり、ほとんど効果はなかった。

 激しく身じろぎしたために、胸の上を這う鎖がしゃらしゃらと、緊迫した重奏を奏でた。眦に溜まっていた涙の露がそのとたん、はじけて四方に霧散する。

「脚をもっと開いて……そんなにのけ反っては駄目だ。落ち着いて……腰を落としてごらん」

 王が背後から優しげな声で諭す。
 ナシェルは涙をこぼし、はぁはぁとあえかに肩を上下させながら、落ち着いてなどいられるか、と内心で突っ込みを入れる。

 だが股の間に蠢く異物感に、すぐに思考など弾け飛んだ。



 王はナシェルの背中を撫でまわし、肩甲骨に唇を寄せる。そうして王子を落ち着かせながら、ゆっくりと張り型を出し入れする。
 取っ手がついておらぬため、抜くときは鎖を引っ張る。

「ぁああ……っ……はぁっ………!」

 ナシェルは戒められた両手で、抱いた柱を掻き毟り、屈辱と悦楽に乱れ狂う。キノコ型をしたものに、肉襞を割られ、内膜を掴み出されるような凄まじい感触であった。
 乳頭をつまむ金輪から伸びる鎖が、身をよじるたび振り子の動きを繰り返す。重たく揺れて、熟れた乳頭をますます膨れさせる。

 乳首とアナルを同時に刺激されることとなり、息も絶え絶えに泣き喘ぐが、それもいつしか掠れた嬌声に変じてゆく。

「はああぁあん……や……ああぁ……ん……っ」

 王はナシェルの声色の変化を悟ったように、微笑む。手にした淫具をさらに奥まで挿入し、快感の種を探し当ててそこをつついてくる。

「ああ――駄目……ッだめぇ、そこ……! ふぁ……ソコ、ダメぇ……っ」
「駄目、ではなかろう? 腰をそんなに振りたくって。正直に言わぬと、つついてやらぬよ」
「……ひ……い……いい、気持ちいいです……父、上……ぇ…もっと、もっと………あぅ――!」
「そうだろう……正直に言えたから、もっと奥にあげようね」

 長い指で淫具を最奥へと押しこまれる。ぼこぼこした真珠の感触が粘膜をこすりながら内部へと突き進んでくる。ナシェルは頬を濡らし、全身を戦慄かせながら狂濫する。

「ぅう――も、無理……限界、出ちゃう―――出ちゃう……父うぇ、イってもいい……ですか――」
「駄目、」

 王子の絶え絶えの訴えを聞き取り、王が悪戯っぽく云って指だけ抜いた。

 「ぁ、ぅうぅ――………!」

 絶頂するか否か、それすらもあるじの御意に従わねばならぬ。ナシェルは焦れったくて、戒めた拭布タオルの上から指先だけをわなわなと鉤形かぎならせ、ほとんど呪詛に近い声を洩らす。
 矢庭に抽送を止められて、なんとか己で極みに達しようと咥えた淫具ごと尻を揺らして身悶える。

 陶酔と苛立ちの狭間に乱れるナシェルの、壮絶な痴態を、王は至宝の煌めきを愛でるが如く、愉しんだ。
 ナシェルは泣きぬれた瞳を王にふり向け、息を荒げ、切々と目だけで訴えを示す。

 父はナシェルの頬に指を滑らせ、涙をぬぐう。
 さんざんに乱れさせられているのに、優しく涙を拭われただけでもう、ナシェルは歓喜で、たまらなくなる。

 好き、好き……、と呼吸を上ずらせたまま瞼を震わせて、瞳で伝えた。


 ナシェルの尻から生えた鎖が、まるで獣の尾のように力なく揺れた。




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