シークレット・ラブ

朝海

文字の大きさ
6 / 18

シークレット6

しおりを挟む
 麻子にとっては分からない様々な装置が並んでいた。
 ピッ、ピッと刻まれる機械の一定のリズム。
 ここはクローンを作っている研究所の一室。
 麻子はそこから抜け出して昴に会いに行ったのだ。彼に会いに行ったのも興味本位だった。
 やはり、自分と同じからっぽの瞳。
 似たような人がいるのだと嬉しかった。
 ようやく、居場所を見つけられたのである。
 ならば、その場所を守らなければいけない。
 全力で戦わないといけない。
 もし、昴が殺されてしまえば何もかもが変わってしまう。麻子は台所から包丁を取り出した。
 自分の命は自分で決める。
 誰にも支配させない。
 「コピー」や「オリジナル」など関係ない。
 そう思ったのは自分の「オリジナル」である加奈を家族として昴が接してくれたから。
 そのことに気が付き両親に順応な自分を演じることを止めた。
 だから、雨が降りしきる葬式の日。
 昴に会いに行ったのだ。
 ――もう、殺すしかない。
 麻子は包丁を振り上げた。
「何だ? やるのか?」
「――くっ」
 それも、簡単に丸め込まれてしまった。
「所詮、お前は「コピー」でしかない」
「「コピー」でも生きる権利はあるわ!」
 彼女は抵抗をする。ここまで抵抗されるとは思ってもいなかったのだろう。雄二が驚いて動きを止めた。包丁が光を浴びてキラリと光る。
「お前に生きる権利などない」
「あなた、止めて!」
 バンッと部屋の扉が開いた。
 その場には警察官が立っている。
 どうやら、母・しずかが呼んだらしい。
「母さん」
「もう、大丈夫だからね」
 彼女が麻子を抱きしめる。けれど、しずかも雄二の実験に参加をしていた。
 その部分では同罪だ。
 雄二はクローン研究者の第一人者として。
 しずかは政治家の娘として。
 元々、雄二としずかは政略結婚である。二人の間に愛情はなかった。お陰で雄二の実験は軌道にのり、政府に認められるものになったのである。子供ができなかったこともあり、桜井加奈と自分と姉妹のクローンを作ったのである。
 その後、加奈は同じく子供ができなかった桜井家に引き取られていった。その経緯もあり、麻子は早く一人前の大人になるしかなかった。
「私の気持ちも考えずに今更母親面しないでよ!」
「可哀そうな麻子ちゃん。桜井昴と加奈に感化されたのね」
 私の大切な子を誑かして! としずかが憤慨する。
「感化されてなんかいないわ! これは、私の本心よ!」
「あなたはそんなことを言う子じゃないわ」
 これは、ダメだ。
 麻子の言葉を聞かない。
 雄二に感化されていた。
「しずか、煩いぞ。その人を連れていけ」
 裏切り者! 絶対に許さない! と叫びながらしずかは連行されていった。

 「父さん」
 麻子は部屋から出て行こうとして雄二を止めた。彼が足を止めて麻子と向き合う。
 向けられる瞳。
 その瞳は真っ直ぐで引き込まれそうになる。
「何だ?」
「どうして、私を助けたの?」
「理由なんてないお前はお前の道をいけばいい」
 思いもよらない応援の言葉。
 さっきまでの態度と全く違う。
 まるで、別人。
 先ほどまでの殺気が嘘のようだ。
 他の人の魂が乗り移ったかのようである。
 「裏」と「表」。
 二つの顔を使い分けている。
 どちらが、本当の雄二なのだろうか?
 何を隠しているのだろうか?
 父親には変わりないが、麻子には分からない。こんなに、性格が掴めない人は初めてだった。それに、変に緊張をしている。
 手にじっとりと汗をかいている。
「私は私の道を?」
「そう。決まっているのだろう?」
 その質問と聞いて浮かんだのは昴の顔。
 どうして、雄二は昴のことを知っているのだろうか?
 彼には昴に会いに行ったことがばれているようだ。
 でも、責めようとはしない。
 麻子を傷つけないように話し方を選んでいるかのようだった。
「あなたは何者なの?」
 麻子は直球で聞く。
 聞いても返事が返ってこないことは理解をしている。それでも、無意識に聞いていた。彼はまだ内緒だよ、いずれ分かるさと笑う。
 麻子は呆然としたまま雄二が出て行った扉を見つめた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

紙の上の空

中谷ととこ
ライト文芸
小学六年生の夏、父が突然、兄を連れてきた。 容姿に恵まれて才色兼備、誰もが憧れてしまう女性でありながら、裏表のない竹を割ったような性格の八重嶋碧(31)は、幼い頃からどこにいても注目され、男女問わず人気がある。 欲しいものは何でも手に入りそうな彼女だが、本当に欲しいものは自分のものにはならない。欲しいすら言えない。長い長い片想いは成就する見込みはなく半分腐りかけているのだが、なかなか捨てることができずにいた。 血の繋がりはない、兄の八重嶋公亮(33)は、未婚だがとっくに独立し家を出ている。 公亮の親友で、碧とは幼い頃からの顔見知りでもある、斎木丈太郎(33)は、碧の会社の近くのフレンチ店で料理人をしている。お互いに好き勝手言える気心の知れた仲だが、こちらはこちらで本心は隠したまま碧の動向を見守っていた。

僕《わたし》は誰でしょう

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...