シークレット・ラブ

朝海

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シークレット7

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 麻子サイド
 麻子が教室に入るとザワザワと騒がしかった。黒板の前に何やらクラスメートが集まっている。麻子は人ごみをかき分けて前に立った。
 ――中田麻子は桜井加奈のクローンで不良品の「コピー」。
 しかも、加奈の兄桜井昴と付き合っている。
 父親はクローン研究所の中田雄二。
 そう、黒板にでかでかと書かれていた。
 麻子はそれを消す。
 愛理はにやにやと笑いながらそれを見ていた。麻子の反応を見ていたのだろう。
 まさに、悪女そのもの。
 華奢な体。
 濃紺の瞳。
 肩までのボブ。
 この子は先月、転校してきた米田愛理。
 麻子を不良品の「コピー」と見なして殺しに来た。優秀な遺伝子がほしいと昴も狙っているようである。
「ねぇ、中田さん。本当なの!」
「本当よ。だから、何かしら?」
「でも、作られた遺伝子なんか気持ち悪くない?」
 クラスメートから聞こえる非難の声。
 それが、麻子の胸に突き刺さる。
 それなりに仲がいいと思っていた。
 ――聞きたくない!
 麻子は耳をふさいだ。
「よくも堂々と生きていられるわね」
 愛理が耳をふさいでいた彼女の手をはずす。
「それは、あなたも一緒でしょ!」
「私はあなたと違うわ」
「だからといって、人から奪い取ることがいいわけないでしょ!」
「賢い子だけが生きて残っていくのよ」
「あなたとは話にならないわ」
 麻子は席を立つと鞄を手に取った。
 あなたとこれ以上、話すことはないという意思表示だった。
 麻子は振り向くことなく教室を出ていった。

 昴サイド
 「麻子?」
 教室を出ると丁度昴に出会った。この階にある図書室の帰りのようだ。
 心配そうにこちらを見ている。
 全てを包み込んでくれる優しい瞳。
 その瞳を失いたくない。
 昴が自分を愛してくれている証拠。
 しわくちゃのおばあちゃんになるまで傍にいてほしかった。
「昴」
「どうかしたのか?」
「米田さんが私のことを不良品の「コピー」だって。賢い子を産むのは当たり前だって」
 昴の姿を見て安心したのだろう。
 麻子が大粒の涙を流す。
 そんな彼女を抱きしめる。
 宝物を扱うように。
 壊さないように。
 そうやって労わってくれるのが嬉しい。
「僕はね。賢い子を産むことが正解だとは思わない。だから、大丈夫」
「うん」
「米田愛理か。とりあえず、調べてみる必要がありそうだ」
「昴?」
 麻子が不思議そうに腕の中から見上げてきた。きっと、今は物凄く悪い顔をしている。
 それを、麻子に見られたくなかった。
「とりあえず、今日は帰ろうか」
 彼は彼女の手を握った。

 今の時間は夜中の二時。
 麻子は目が覚めてしまった。隣を見たら昴が何かを携帯で検索している。彼が起きているとは思ってもいなかった。何を検索しているの? と麻子は昴の携帯を覗き込む。このあとも眠れそうにない。
 それに、自分自身のことだ。
 無視をするわけにはいかない。
「情報屋?」
 検索ワードには「情報屋」の文字
 どうやら、愛理に対する対策を考えていたらしかった。
「うん。米田愛理のことが気になってね」
 携帯を閉じてパソコンを開き電源をつける。パソコンを開くのは久しぶりだ。
 加奈が亡くなってからは、ゲームを作ること自体止めていた。彼女が死んでから何もかもが色褪せて見えた。白か黒の二色しかなかった。
 今は色々な色が綺麗に輝いて見える。
 こうして、麻子と出会って再びやってみようという気持ちになっていた。むしろ、そのような気持ちになったことに安心している自分がいる。だから、情報屋に関して調べることが苦ではなかった。
 終わったら少しずつでいい。
 ゲーム制作を再開してみようか。
 前に進めたことの第一歩だと思うから。
 麻子と一緒に楽しめればいいと思った。
「昴。ここは?」
 彼女がとあるホームページを指差す。麻子の中でピンとくるものがあったらしい。
 その感覚みたいなものを侮ってはいけない。
 素直に従うことにした。
 ――街にあるカフェの情報屋「縁(えん)」。
 あなたの知りたいことを調べます。
 相談は無料。
 お気軽にお越しください。
「麻子の勘はバカにはできないからな」
 初めまして、相談をさせてください。
 桜井昴と申します。
 僕は中学三年生、これから話す彼女は中学一年生。
 今日、僕の彼女・中田麻子が転校してきた少女に狙われています。
 彼女の名前は米田愛理。
 彼女は麻子を不良品の「コピー」と見なし殺そうとしています。
 彼女について詳しく知りたいです。
 僕たちは中学生で何の力もありません。
 情報を持っていないでしょうか?
 よろしくお願いします。
 昴はキーボードを叩く手を止めた。そのまま、メールを送信する。
 ピロン。
 新着メールがあります。
 二人でパソコンを覗き込む。まさか、こんな早く返事がくるとは思ってもいなかった。昴はマウスを操作してメールを開いた。
 桜井昴様。
 この度は依頼をありがとうございます。
 あなたたちは中学生とのこと。
 こちらで調べておきますので、あしたカフェにご来店ください。
 情報を纏めて整理しておきます。
 ご来店をお待ちしています。
  パソコンの電源を切る。
「昴はパソコンができるのね」
 流れるようなタイピング動作。
 昴のタイピングの速さに驚いたのだろう。麻子が目を見開いて自分を見ている。
「少しできるぐらいだよ。目を閉じるだけでも違うから休もうか」
「昴」
「――ん?」
「呼んでみただけよ」
ただ、名前が呼びたかったのだと彼女がすりすりとすり寄ってくる。
 昴の麻子の髪に口づけを落とした。

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