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1章:高校生の身体を乗っ取った事になった俺は高校に通う事になった

閑話:変わってしまった彼女の息子

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Side:九条
いくら記憶喪失といっても、あそこまで性格からなにから変わるものなのだろうか。
俺は、今日の見習いの適正結果を見ながら、そしてさっきまで会話した良哉の言葉を思い出しつつ、報告書をまとめている。

「九条先生、今年の見習いはどうでした?」って聞いてきたのは、湯川先生だ。
「想定通りですね。 良哉以外は。 鳳来は初めてだったので、結果は驚きましたけど」って言ってテスト結果を見せた。 入塾当初に適正検査をしていた。
その時の良哉の結果は式神も出せたし、陰陽師の演唱も長ければ発動していた。
それが、今回、はまったく駄目だった。 なぜだ。 呪力はあるのに。
「へぇ~、記憶喪失で、本当にここまで真逆の結果になるのも珍しいもんですね」って良哉の結果をみて感嘆している湯川先生だ。
「私としては、剣士系が増えるといいですけどね」って湯川先生。 彼女は剣士の技術担当だ。
俺としては、良哉が陰陽師になると思っていたから結果としても本人の意向としても落胆している。
「陰陽師の家系の子が全て陰陽師になれるわけじゃないんですよね?」って俺が落胆しているのをみて聞いてきた湯川先生だ。
「そうですけどね。 ただ、子供の頃から親しみを持たせるので、だいたいは陰陽師になるんですがね」って俺だ。
「あんまり気を落とさずですって。 エクソシストにならないとはまだ言ってないんでしょ?」って湯川先生だ。
「聞いてないっていうのが正しいかな。」って俺は自信なさげに言った。
結局、塾には通っているが、良哉が将来どうしたいとかは全く聞けてない。

◇◇◇
「昭子、今日良哉と話したよ」って俺と昭子は今同じベットでともに寝ている。
「あの子元気にしてる?」って昭子
「ああ、鳳来の家で大切にされてるみたいだ。 ただ、今日の塾の適正でね」
「あの子、陰陽師になれるの?」
「残念ながら適正は無くなってた。 その変わり、剣術の才能が素晴らしく秀でていたよ。」
「え! どういう事!」って布団からガバって起き上がる昭子だ。
「本人に聞いたら、鳳来の家で護身術含めて剣術の稽古をしてもらっていたらしい。 昭子知ってた?」って俺。 
一度だけ、良哉から夏休みの間、昭子宛にようやく手紙がきたらしい。 
内容については、親子の事だから第三者が口だすべきじゃないと思い聞いてない。

「細かくは書いてなかったけど、鍛錬させてもらってるとか、将来の事も考えて、仕事の手伝いをさせてもらっていて忙しいって内容だったわ」って眉を下げていう昭子。

「今日、俺も直接聞いたけど同じ事を言っていたよ。 詳しくは話してくれなかったけどな。」って俺。
「よかれてと思って、良哉を鳳来家に預けてしまったけど、私たちの関係は何もあの時から変わらないような気がするの」って昭子だ。
俺もそう思う。 だが、今更、ここに住めとは強要するのは難しい。
昭子には言えないが、どう接したらいいかわからないといった良哉の気持ちは本当なんだろう。 
「記憶が戻ればいいが、このままのほうが俺達にとっても、それに良哉にとってもいいのかもしれないな」ってぼそっと言う俺。
「私はあの子の母親なのよ。 でも、あの子の事がわからないなんて、母親失格だわ」って哀しげにいう昭子。
「君は立派な母親だよ。 ただ、良哉の気持ちがおいついてないだけなんだよ」と優しく昭子の頭をなでて、抱きしめた。

その後、安心したのか、眠る昭子。
昭子とこういう関係になったのも、6月の中旬ごろ、良哉の事で悩んでいる昭子に追い打ちをかけるように、急にでてきた昭子の転勤の話だ。
あまりにも辛そうな昭子をほおっておけなくて、抱きしめてしまったのが始まりだ。
それから、急遽また人事変更で、昭子の転勤はなくなったが、それもまたいつ浮上するかわからない。 
そして、一切昭子に連絡しない良哉。
講師として接していたが、それでも、授業は昔に比べて必死に受ける姿はもうない。 
何度か、良哉に手紙を書くように伝えたけど、聞いているかもわからない。
そんな状態で、昭子は寂しそうな日々を過ごしていた。
それをなんとかするために、彼女を食事に誘ったり、週末は共にいるようにして、まぁお互い惹かれあって、身体を重ねる関係になったわけだ。
もし、良哉がここに住んで通学していたらこの関係になっていたのだろうか?
答えはわからないが、俺にとって今は昭子は大切な人だ。 
ついついその息子の良哉を気にしてしまうのはいけない事なのだろうかと、自問自答する俺だった。
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