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第6章 少年期〜青年期 学園6学年編
2話 懸念 ソルドア視点
しおりを挟むソルドア 視点
(あぁ、今日も鬱陶しさを感じてイライラしているな・・・)
僕が初めてアトリーと会った時に何かが繋がった感覚があった時以来、何度か自分の感情ではないアトリーの感情が流れてきたり、自分の感情がアトリーに伝わったりした事が多々あって、やっと、自分とアトリーとの間には特別な繋がりから、この能力が発現した事を自覚したのは割と早い年齢だった。
最初はなんとなく向こうの感情の昂ぶりに釣られて、感じているだけだと思っていたけど、最近になってこれは僕がアトリーの心内を知りたいと思った時に、繋がりを強く感じ取れるようになって来た。
この能力は何故かアトリーだけにしか通じず、他の人の内心を読み取る事はできない、この事を知っているのはアトリー本人と聖獣様方、アトリーのご家族であるデューキス公爵家の人達、あとは僕の家族だけだ。(あ、後イネオス達も)
最近のアトリーは自分の感情が制御できていて、感情が昂った時だけ僕に伝わっていると思っているようだが、本当は僕が能力を調整ができるようになって来ていて、今も、様々な学年の女子学生に囲まれて、困っている表情のアトリーの感情が少し意識して集中するだけで伝わってくる。
この能力を意識して読み取る事ができるのは僕の方だけで、アトリーの方からはアトリーが本当に望めばできはするだろうが、優しい彼は僕の事を慮って自ら僕の内心を探ろうとはして来ない。
だが、そんなアトリーに僕の感情をよく読み取られる事が多発していた時期があった、それが何故かと言うと、2年前の帝国での騒ぎから数ヶ月後にやって来たアトリー専属の護衛騎士と言う“奴“が来てからだ・・・
(!?、アイツはっ!!アトリーを殺そうと襲いかかって来た獅子の獣人じゃないか!!)ザッ!!
“奴“が護衛騎士として紹介された時、一緒に紹介を受けていた他の専属使用人、兼、護衛のオーリーさん達4人と一斉に連携をとり警戒体制に入って、アトリーを守ったことを今でも覚えている。
いくら奴隷契約でアトリー他、デューキス公爵家の方々に危害を加える事ができないとは言っても、元々アトリーを狙って騒動を起こした者を側に置くことに、僕は強い反感を覚えた。
(旦那様は何をお考えなんだろうか、あんな犯罪者をアトリーの側に置くなんて!!)
と、そんな強い反感や憤りの感情がアトリーに伝わってしまって、アトリーが少し困った表情をしていたことに気づき、僕はそこで自分の感情の昂ぶりを隠しきれていないことに気づいたのだ。
最初は自分が未熟だからなのか?と思っていたのだが、その後、事あるごとに“奴“の行動が目につき、苛立ちを覚えると、何故か頻繁にアトリーに感情が伝わっていた、今までに僕のちょっとした苛立ちがアトリーに一々伝わったことなどなかったので、一時期互いの感情が交差して混乱することもあったのだが、よくよく冷静に考えてみたら、自分がアトリーの感情を意図的に読めるようになったのだから、逆もできて不思議ではないはず、と思い、よくアトリーを観察していると、“奴“がアトリーに気安い言葉遣いをしていた時、不意にアトリーが僕の顔色を読むようにこちらを見ているのに気づき、やはり、意図的に僕の感情を読み取れるようになったんだと確信した。
でも、それは間違いで、アトリーは無意識に僕の感情を読んでいるんだと、気づいた出来事があった。
それはある時、“奴“の態度があまりにも目についたので、僕が密かにアトリーの視界に入らない場所に“奴“を連れ出し注意をした後に、アトリーの元に戻ると、何かあったのか?と聞かれはしたが、僕の感情について触れられる事がなく、その後もアトリーはいつも通りに過ごしていたのを見て、これはアトリーが無意識に僕の感情を読み取っていたのだと分かったのだ。
僕の場合はアトリーが視界内にいなかったとしても意図的に感情を読もうとすれば、距離が離れていてもすぐにアトリーの感情が伝わって来ていた。
だから、アトリーも僕と同じ事ができると思い込んでいたが、アトリーは無意識に自分の目の前で、僕が不快になりそうな事が起きたら、僕の表情を見て、僕の感情を知りたいと思ったから僕の感情がわかっていたのだ。
でも、アトリーはその都度、僕の感情が読み取れると、僕が感情を昂らせる程、嫌なことが頻発していると認識するようになって、しばらくの間、僕に気を使い過ぎるほど気を使って来ていたので、僕はその時から多少嫌な事があってもアトリーに気を遣わせたくないので、顔に出さずに、むしろ笑顔でいることに専念することにした。
それ以降はアトリーに自分の苛立ちを悟らせることなく、穏やかに過ごしてもらえていることで、僕の心も安定していき、苛立ちが少なくなってきて、冷静に周囲を見ることもできて来たので、“奴“の仕事ぶりだけは認める事ができてきた。
ただ、1番最初に“奴“を見た時の強い反感や憤りは、本当の感情の昂ぶりだったため、“強い感情の昂ぶり“、こればかりはアトリーにもどうやっても伝わってしまうのだろうと結論づけた。
・・・そして、最近、アトリーの心の安寧を乱す出来事が多発していた・・・
今年の僕とアトリーの誕生日以降、この国の貴族の風習を知るあらゆる年齢の女性達から、行く先々で声をかけられ、お茶会や夜会などのお誘いが頻発し、街中でも、その風習を知っている平民の女性達からも、様々なお誘いが僕達に来るようになった。
何もそれ自体はそうなると分かっていた事なので、不思議ではなかったのだが、問題がその誘いの最中に必要以上にアトリーの身体に触れようとしてくる女性達が多いと言うことだ、基本的にアトリーはよく知らない人間に自分の身体を触れられるのが不快に思う気質なので、悪意はなく自然に触れられる事でも心に大きな負担がかかっていた。
それなら、そんな女性を避けるなり、触れないように注意するなりすれば良いと思うだろうが、元々アトリーはそのような接し方をしてくる女性達は相手にしておらず、無視する事だって多い、注意もやんわりとだがした事だってある。
だが、今回の女性達はかなり押しが強く、注意してもあからさまに避けても、しつこくついて来る。それに悪意がないことで“加護の結界“で拒まれない事がさらに厄介で、悪意がない彼女達に強く言うことができないでいる、そんな日々が続いたここ最近でアトリーは日に日に表情が険しくなっていって、学園にいる間、顔色が悪くなっていった。
すると昨日、ついにトドメとばかりにアトリーと僕宛に国外から大量の釣書が届けられていて、それに目を通すという苦行をする事になってしまった。
そして、数時間それを続けた結果、ついにその苦行に心労が限界に達したアトリーは、届いた釣書を全て消し炭すら残さず燃やしてしまったのだ。
その時は何が起こったのか一瞬わからなかったが、すぐにその行動が、そうする事で、自身の心労を増やさないと言うアトリーが無意識にした、心の防衛だと、僕と旦那様は察し、これはもう、アトリーの好きにさせるしかないと僕と旦那様は思ったが、アトリーの開き直ったように言った言葉は事実、アトリーがそんな事をしても誰もアトリーを咎めることはできないのだから、これが最善の対処だったのだろうと納得したのだった・・・それで、釣書の件はそれで解決したのだが・・・・
今現在、アトリーの席の周りにはたくさんのクラスメイトの女生徒達が群がり、その中心でその女生徒達の相手をしているアトリーの、不快だと感じている感情が伝わってきている現状を解決できない事に、僕は少々自分に苛立ちを覚えている。
「貴女達、そろそろ授業が始まりますよ?席に戻ってはいかがですか?」
と、僕が言うと、女生徒達は渋々引き下がり席に戻って行った・・・
アトリー「ありがとうソル、・・・僕、そろそろ限界かも・・・人に触れられるのに慣れようと思ったけど、やっぱり無理だ・・・」
「!?っ、いつの間にそんな訓練をしてたんですか!?」
(何故かジュール様達が、誰もアトリーから彼女達を遠ざけようとしないと思ったら!!アトリー自身がそれを止めていったって事だな!?)
急なアトリーの発言に驚き、なんて無茶をしてるんだと心配になった。
(しかし、急になんでそんな事をし出したんだ!?)
と、思っていると、
アトリー「いやー、ほら最近、僕達に近づく人が増えて来たでしょう?最初はあからさまに避けたり、注意もしていたけど、ふと、同じように囲まれている人を見て、気づいたんだよね、その人は上手く女性達を相手して、積極的な人もやんわりお断りしているのを見ると、アレ?僕が極度の潔癖症なのか?と、思って、次第に貴族子息ならこれぐらいの女性達の相手ができないとダメじゃないか?って考えてしまって、それに今度“学園祭“の準備をしなきゃならなくなるし、せめてクラスの女性達に慣れておかないと、と思って・・・だからしばらくの間、女性達の相手をしてたら慣れるんじゃないかって・・・それで、なるべく拒まないように相手してみたけど・・・無理っ!」
「・・・それは、無理でしょう・・・」
アトリーの説明を聞いて僕は唖然とした、アトリーが見かけたと言う相手は、多分、あちらこちらの女性に手を出して、貴族家での婿の貰い先がなくなって、平民の女性達に群がられている、いわゆる“女たらし“で有名な男子生徒だったからだ。根本的にアトリーとは性格も性質も目的も全く正反対と言っていい相手が見本だったことに、
イネオス「・・・アトリー様、彼を見本にしてはダメですよ?・・・」
ベイサン「・・・彼に何か言われたんですか?」
へティ「アトリー様、人にはそれぞれ適性というものがあります。無理に他の方に合わせる必要はないんですよ?」
ロシュ「アトリー様、無茶は禁物です。かなり顔色が悪いですよ?」
と、僕達の話が聞こえていた友人達が心配そうにそれぞれ声をかけた。
アトリー「うーん、無理、は、したけど、この行動には理由はちゃんとあるんだよ?僕は、あまりにも同年代の女性との接触がなさ過ぎるし、交友関係が狭いから、両親が心配するんじゃないかって思ってね?だから、言い方は悪いかもだけでど、今なら色んな女性がいくらでも僕に近づいてくるでしょ?そんな中にへティみたいな恋愛感情を伴わない女性の友達になれる人がいるかなって思って、友人なら多少の接触はするものだし、“学園祭“でも仲良く過ごせるかな?って、この際だから人との接触訓練と女性の友人作りを同時に挑戦してみたんだ、だから、近寄って接触してくる女性達とたわいも無い会話をしてみたんだけどね、そんな会話ができる人が出てくる前に、僕が触られる事に限界が来ちゃった・・・、いい案だと思ったんだけど、うん、まぁ、その結果、これまでほんの少しでも友人みたいな会話ができそうな人ってのも全くいなかったけどね・・・はぁ・・・それで僕にはこれ以上女性の友人はできないんだなぁ、って、しみじみ実感したよ・・・」ガクッ
そう言ってガックリと肩を落とし、俯くアトリーに皆んなが同情する。
「「「「「あぁ・・・」」」」」
(アトリーの懸念もわかる、わかるが、その方法は無理、と言うか、どの方法でもアトリーに女性の友人はでき無いだろうな・・・)
ここ最近のアトリーはますます美しさに磨きがかかり、そこら辺の女性より綺麗な容姿をしていて、神秘性まで持ち合わせて、男性としても身長や体格の成長が著しく、身長に至ってはもう、この2年でぐんぐん伸びていき、同じように背が伸びていた僕達とも変わらない高さになっている。
その上、誰にも侵害される事ない地位や財産、武力まで持っているアトリーを、恋愛対象以外の目で見る女性はへティやご家族以外で存在しないだろう、婚約者がいる女性でも、アトリーが横を通り過ぎるだけで、目の前の婚約者そっちのけでアトリーの姿を熱のこもった目で追うのだから、・・・今だって気落ちして、艶のある憂いの表情を浮かべるアトリーに目を奪われている、クラスの女子生徒達がたくさんいるし、男子生徒達だって顔を赤ている・・・
(今ので何人がアトリーに見惚れていることやら・・・はぁ、いつも変な方向で努力して無茶をする、これからはもう、女生徒に近づかないように積極的に言って行こう・・・でも、今年はアトリーの言う通り、最終学年の僕達が準備する“学園祭“があるからな、そうなると、学生以外の人達と接する機会が増えるから、さっきとは別の心配をしなければならなくなったなぁ・・・それに、今年は“例の神“が降臨すると予想される年でもある、気を抜かないようにしないと・・・)
と、思いながらも、さっきまでの自分への苛立ちは霧散したのを感じた・・・
この時、アトリーがしたこの自主訓練が後に誰もが予想しなかった事を引き起こす・・・
?「全くなんて事なの?“あのお方“の心労を誰も考えないなんて・・・」ボソッ
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