CHEAT~銃声が止んだら~

マド

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5:新参兵とその力

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なんか長くなりましたすいません;;

メディ軍医長が拐われた。そのことしか今はわからなかった。
特設A班の隊員全員が呼び出された。僕以外に副隊長さん、エイムさん、タクトさん、あと…まだあったことのない人が一人。おそらくこの人が隊長さんだ。左腕の腕章にそう書いてあった。
「時間がない、誰か、わかっていること全部話せ。」
低い、少し威圧が感じられる声で隊長さんが声を出した。そして、エイムさんが一連のことを話し始めた。
エイムさんは、銃傷の治りの確認のために呼び出されていたそうだ。時間も指定されて、ぴったりに来ないと怒られるんだとか。軍医長さんもその時間は普段いるらしく、ましてや自分から来いと言ったのだ。いないはずがない。そしてそのあと、僕があの部屋に着いたのだ。施設内全て、それぞれ見た人がいないか尋ねに行ったが、誰も見ていないらしい。
ところで「メディ」というのは、あの時医務室にいた軍医で、その中のリーダーも務めているとのこと。確か、ピンクの髪を三つ編みに結んでて、………黒い猫の耳と尻尾を生やしていたような……?
「……エイム、その施設の構造を。タクト、作戦をたててくれ。」
「ん…………」
紙を渡されたエイムさんは、おもむろにえんぴつを動かし始めた。本当に、勘で書いているのかと疑うくらいに細部まで細かく書かれている。
「それで、新参兵のお前」
「!はい……?」
「お前にも、この作戦には出てもらうぞ。」
そんな……今朝入隊したばかりの新参兵が、その日のうちに作戦に参加するなんて、誰が思ったことだろう。
「特設A班に入ってるんなら、なおさら。戦いは、いつでも自分から有利に仕掛けられるものだとでも思っているのか?」
「いえ……でも僕、何をすれば………?」
「………銃を持て。援護しろ。余計なことは喋らなければいい。ただついてこい」
「はい………」
怖い。隊長さんが、威圧的なことじゃなくて。自分が1人の軍人ということに戦慄を覚えた。自分がある物事を任されている。それは、簡単なものでなく、命を背負うということに等しいということ。援護と言っても、何をすればいいのかわからない。ただ撃つだけでは、きっと迷惑だ。いや、こんなものはまだ序の口なのだろう。銃で人を撃った時には………
「ほら、落ち着いて?」
突如またあの時みたいに、副隊長さんが頭を撫でてくれた。
「私たちについて走って来られれば、それだけで上出来でしょ。援護って言っても、周りよく見て、敵が来ているなら撃てばいい。そんだけ、簡単でしょ?」
簡単……には聞こえない…けど、さっきまでの緊張感が、少し和らいだ気がした。そしていつの間にか、エイムさんは施設の設計も描き終えていた。
「はい……すいません。…頑張ります」
「それでよし!」
ニコッと微笑んでくれた。なんだかなんでもできそうに思えてきてくる。
「………たぶん、さらったの、ぼくたち、おびきだすため。そこ、たぶん、ぼくらのちから、ほしい。」
……力?どういうことだろう……
「……なら、攻め込んでくることは承知、兵士にも僕らが来ることは伝わっているはず。エイム、メディは今どこ?」
「………いちばんうえ、おっきいへや。たいしょうみたいなひと、いっしょ。」
指で最上階の大きな部屋を指した。
「…………なら、まっすぐそこへ行きます。おそらく、待ち構えているはず。何もしていないということは、動きがあるのはメディを見つけた時です。敵兵を減らしつつ、上へ向かいましょう。……本当に大事なのは、見つけたあとです。」
無駄な時間をかけずに、迅速に全てが決まった。
「よし、作戦開始。各自武器を取り、移動用車に乗り込め。新参兵、お前は試験で使った銃を使え。以上。」
指示が出た直後、全員が椅子から立ち、部屋を出て行った。
………本当に、ぼくはみんなについていけるのか?とりとめのない劣等感が僕を威圧する。
少し立ち止まっていたとき、部屋から出かけていた副隊長さんが振り向き、目があった。
(大丈夫さ)
そう、彼女の口が動いた気がした。

移動用車、と呼ばれた車に乗り、あっという間に目的の施設であろう場所へたどり着いた。本当にここに軍医長がいるのか?そして改めて考えると、特設A班は、なぜ特設なのだろう。考え出したらきりがないため、そこで考えるのはやめた。
「いいか、銃を構えろ。敵兵はなるべく倒しながら突破しろ。そのまま最上階を目指せ。」
隊長が指示を出したとたん、全員真剣な眼差しとともに銃を構えた。僕も一瞬遅れ、見様見真似で構えた。
「……よし、突入!」
合図とともに扉を破り、皆が一斉に走り出した。青い施設内を駆けていく。とても速い。めちゃくちゃ速い。本当に、ついて行くのが精一杯という感じだ。しかも、敵兵が物陰から現れた時、走りながら正確に銃を撃っている。もちろん、ほぼあたっている。さらには、副隊長さんは、銃を持った敵を相手に、ナイフだけで攻撃している。目にも止まらぬ速さで次々と敵をなぎ倒していく。隊長さんも、エイムさんも、タクトさんも。僕は………ただ追いかけている。何もしていない。…あれ?これでいいのか?僕は…。
僕は……何ができる……?
「新参兵!!」
「!!はいっ」
途端、隊長さんに呼ばれた。叱られる?そう思った。
「言ったはずだ、ついてこい。」
気がついたら、足が止まっていた。みんなはもう前の方にいて、足元には気絶した敵兵が横たわっている。
「一緒、行こ?」
「まいごなったら、きけん」
「おいで!ほら、走るのさ!」
みんなこっちを見ていた。そうだ、止まっていてはダメだ。進むんだ。
「……はい!すいません!」
自分にできることをする。たとえそれがなくても、精一杯ついていく。そのために、また僕は前方へ、四人がいる方へ駆け出した。

その後も四人は見事に敵を倒していき、僕はひたすら足を動かし、おそらく最上階であろう場所までたどり着いた。スロープを何度か駆け上がったので、多分。上に上がるに連れ、敵の数が減っていった。それと同時に、汚れのない無機質な壁と床、そしてその場がつくりだす緊張感は次第に倍増していった。
先頭を歩いていたエイムさんが足を止めた。その前には大きなドア。
「ここ、めでぃと、てき、いる。きをつけて。」
そう言い、一歩前進したその時、薄いドアが横にすっと開いた。そして部屋の奥には、椅子に座らせられ手足を縛られているメディ軍医長と、おそらく敵のリーダーである、男の人がそばに立っていた。
「やあやあ、やっときたね。まるで獲物におびき寄せられたネズミだね?」
下衆な笑みを浮かべて、男がそう言った時、ドアからたくさん敵が入り込んできて、僕らの腕と足を縛りだした。それぞれ即座に抵抗しようと武器をとったがその時
「おっと、手荒な真似はしたくないなぁ」
男が手に銃を持ち、軍医長の頭に当てた。故に、誰も抵抗せず、ただ目の前の男を睨んでいた。
「おっと、そんな怖い顔するなよ。まあ、座れ。ゆっくり話をしようじゃないか、え?」
厳密に言えば、足を縛られた時すでに座っていた。いや、そんなのはいい。床に触れる手のひらから、冷たさが伝わってくる。あまり心地がいいものではなかった。
「さて…まずは礼を言おうか?わざわざそちらから出向いてくれたのだからな?思った以上に、この小娘はいい囮になるんだなぁ…まあ、聞き出したい事は何も喋らなかったが…」
メディさんが、男を睨みつけた。
「おっと、こわいなぁー。さてと、君たちにここに来てもらった理由は一つさ。」
四人、さらに苦虫を噛み潰したような顔をした。エイムさんは表情一つ変えていない。
「君たち五人。特設A班とやらの隊員だ。過去、そして今も最強最悪と言われ続けている………実験児の力だ。」
実験児の力……?なにそれ。?あれ?
(僕…カウントされてない…?あ、忘れられた?)
「ん?ところで、そこのやつは誰だ?新参兵かなにかか?」
ですよね…なにかってなんだよ、すごい倒したい。この手で。まあ、縛られているんですけど。
「それはさておき…君たちの記憶を消し、君たちの力を私の独裁軍で利用するのさ。」
「できるならな。」
隊長さんが悪態をついた。でも、手も足も縛られているのに…
「ふはっ!よく大きな口をたたけたものだ!まあいい、実験児は…仲間が死ぬところを見ると、また新たな力に目覚めるらしいな?」
途端に、場の空気が一気に重く、冷たくなる。まさか…それ本当じゃ……
「…………」
「この小娘は軍医なんだとな?悪いが、軍医は足りている。惜しくもない。」
「…うるさい……」
メディさんがまた睨みつける。しかし、何もできない。
「さて、お話はこれくらいにして、始めるか。」
男が、ハンマーを下ろした。まずい、このままじゃ…
「私の独裁の始まりは、ここからだ。喜べ、お前ら。」
みんなただ見ているだけだった。目を見開く人、瞑って何も見たくない人、まっすぐ見据えているひと。そして、最善策を考えている僕。
これは本当に、まずい。どうする?また、見ているだけ?今度は走ってついていくなんてことさえ不可能。僕は……



【ソウゾウ、ソウゾウ】


瞬間、頭に声が響いた。


【キミガノゾム、サイゼンノケツマツ】


僕の…望む…

『このとき、リクはナイフがいっぱい、一杯!敵に飛んでいけっ!っておもうでしょ?そしたらー…こんどはおっきい、青いもんすたー!』

声の指示は、僕の頭の中に線を描いていく。ナイフ……青いモンスター……
冷たい床に触れていた手が、熱い。

これが、本当になったら……


「うがああぁぁっ!?」
次に目を開けた時に、視界には男の後ろの壁に突き刺さった数多のナイフと、血を流す男本人。メディさんは無事だ。
「……!?」
その場にいた誰もが 目を見開いていた。僕も、そうだ。
そして…


ぐしゃあっ

「ぎゃあぁぁぁっ」
声を上げたのは、男ではなかった。敵兵、おそらく全員。男は、青いの手で潰されていた。


僕が覚えている、入隊一日目の出来事はここまで。
意識が途切れる瞬間、手が異様に熱かったことしか覚えていなかった。
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