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4:作戦と不穏
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迷子のお知らせです。新参兵が1人迷子です。助けてください。
結局副隊長さんに会うこともできず、今日来たばかりの軍事施設をさまよいはや30分。というより、なぜあの時点で聞かなかったのか。これはひどい。怪我をさせてしまった罪悪感も相まって、憂鬱な気分。
「はあ…………」
下を向いて歩いていた。足元だけが視界に写っていた。……気がついたら、もう1人の足が見えて…
ドンっ
「あっ!?」
「ひゃあっ!?」
途端に鋭い痛みが。痛い……純粋に痛い…じゃなくて!
「ごめんなさいっ!」
「あああっいやっ僕がちゃんと前を見ていなかったからであって!!……あれ?」
「……?」
謝ってきた人は僕を見て、頭の上にはてなを浮かべた。じっと見つめてきている。血のように紅い目を僕も見つめ返してしまう。引き込まれそうな色だ。その色だけに引き込まれるというよりも、その姿が少し不思議なために見つめてしまう。
背は僕と同じくらいで、歳もそんなに変わらないはずなのに、彼の髪は透き通るように真っ白だ。しかし老化した髪というよりも、色素が全くないに近い。それに加え、本来黒目である部分が紅い。赤赤しい、紅。そして背中に大きなリュックを背負っている。そこから紙を丸めた…巻紙でいいのかな?それがたくさん詰め込まれている。そこに目が止まったのは、エイムさんや副隊長さん、また他の軍人さんは背負っていなかったからである。
「あ、の……あなたが、新参兵さん……です……か………?」
「あ、はい。すいません、お怪我はありませんか?」
「ああいや、僕は大丈夫…です。」
突然ぶつかってきた人に見覚えがなかったようだ。真っ白な髪をふわりと揺らしながら紅い目を見開いた。
「あ………無事…だったんだ……よかった…」
「?前にどこかで?」
「いや…あ、僕プランナーというものです。作戦をたてる。本当はタクトって言います。君は…特設A班の新参兵?今、迷っていたの?」
「え……そうです。もしかして、タクトさんも特設A班ですか?」
「そう…ですよ?」
おお、合っていた。
「あ、じゃあ、次の試験は僕のとこでいいかも……」
「本当ですか!?」
「(ビクッ)ふぇっ!?は、はい……だいぶ迷ったんですね……」
「はい、かなり……」
「じゃあっ行きますか?」
30分も迷った上に断る理由などない。返事は決まっている。
「はい!」
「さっきも言った通り、プランナー、言わば策士のすることは戦術や作戦をたてることです。作戦は2つあって、予め始まる前にたてるのと、その作戦を実行している際に、仮に緊急的に変更しなければいけない時。どちらも大事ですが、後者の方が、より迅速で的確な作戦をたてることが求められまっ………はぁ…やっと言えた………いままで絶対どこかで噛んでたから……」
と、プランナーことタクトさんはおっしゃっております、と。これまでの噛み具合がどんなものだったか気になるが、今はおいておこう。
兎にも角にも、今の内容がこの「策をたてる」試験。目の前に建物の設計図が描かれた紙が一枚と、鉛筆一本。おそらく、作戦をたてるのだろう。それよりもこの絵うまいな…。手描きっぽいから、タクトさんが描いたのかな?
「それでは、始めます…」
「はい、お願いします…」
右手に持ったえんぴつを握りしめる。
「ここに、架空の建物の設計図があります。これはとある階で、あと2つ同じものが下に2つあると思ってください。今あなたはこの一番大きな部屋にいます。作戦中の奪還するものは手に入り、この部屋には仲間しかいません。でも、おそらく敵は気づいてこちらへ向かってきています。あなたなら、どう逃げますか…?」
「ん…この部屋になにか脱出できる……ダストシュートとか空気清浄機みたいなのがあれば…あります?」
「……ないことを、前提に」
一瞬見たタクトさんの目は、さっきとは違いきりりとしていた。そうだ…こうやって考えている時間にも敵は迫ってくるのか……なら……
「ガスタンク探して、手榴弾投げて、爆発起こしたらそっちに気を引けます?」
「無かったら?」
「う……放送室探して、爆音を流して耳を聞こえなくするなんて……」
「スピーカーなかったら?」
「うぁ……だめだ、なにもない……」
絶望的すぎる。何もないなんて……?なにもない……
「何もないなら………ただ駆け抜ければいい…?」
「ん…相手さんの数にもよるけど、障害物がないならないでいいかも?でも僕だったら、何人か倒して軍服を拝借して、どさくさ紛れて逃げられれば…」
「おお…なるほど」
「要するに、最悪の場合を考えてたてなきゃだめなの。こうだったらいいな…って考えてたてたら失敗する。その一つだけにかけちゃだめ。こうだったらこう。それが成立しなければ次はこう。って、繰り返して最善の作戦をたてる。」
さすがだ…全然噛んでないし、本当に策のことになるとプロなんだ…
「でもこう言う訓練より大事なのは、実際にその時にできるかどうか。仲間の命背負って、その場の生と死の間の圧力に潰されずにたてられるかどうか。まあ、そんな状況、ない方がいいんだけどね?」
「できれば戦争もない方がいいです…」
「とりあえず…プランナーの試験は終わりかな?お疲れさまでした」
「あ、お疲れさまでした。ありがとうございました!」
はっとしてお辞儀をする。
「射撃は終わったんだ?じゃあ次は…医療の試験はどうかな?メディにも一回会ってるみたいだし、医務室にも行ったらしいし。あ、メディはここの軍医長さん。すごい手先が器用なんだよ!」
「さっきめちゃくちゃ怒られましたよ?」
「ふふっメディは素直じゃないだけだよ!がんばってね、それと、よろしくね」
「はい、こちらこそ!」
とても…いい人だった…優しかったな…
(でもなんだろう、この違和感……)
医務室に向かう途中に考える。
(エイムさんの時に似ているんだけど…なんか、こう…胸がぎゅうってなるような…?)
思えば副隊長さんのときもそうである。懐かしいような、悲しくなるような。まあ…
(気のせいかな…)
そうこう考えているうちに医務室の近くまでたどり着いた。
しかし…
「…?」
ドアの前に、エイムさんが立っていた。いや、立ち尽くしていたに等しい。
「エイムさん?どうしたんですか…?」
「…………めでぃ、いない、まど、あけっぱ。いつも、あけてること、ない。」
「え…まさか、たまたまじゃ?今もどこか施設内にいるんじゃ?」
「……このじかん、いつもいる。それに、このじかんに、ぴったりにきてって、さっき。じかんやぶったこと、ない。やぶると、おこるから。」
なんだか薬のにおいがする、と付け加えた。言われてみれば確かに、部屋も少し煙で霞んで見えた。
「じゃあ……でも、どこに?」
「ぼくのかんは、……………
とうなんの、べつのしせつに、つれていかれたって。」
ああ、やっぱり。と、どこか思ってしまった。それより、急すぎて頭が追いついていかない。
これはもう、不穏としか言えない。
入隊一日目で作戦に加わるなんて、この時はまだ思っても見なかった。
結局副隊長さんに会うこともできず、今日来たばかりの軍事施設をさまよいはや30分。というより、なぜあの時点で聞かなかったのか。これはひどい。怪我をさせてしまった罪悪感も相まって、憂鬱な気分。
「はあ…………」
下を向いて歩いていた。足元だけが視界に写っていた。……気がついたら、もう1人の足が見えて…
ドンっ
「あっ!?」
「ひゃあっ!?」
途端に鋭い痛みが。痛い……純粋に痛い…じゃなくて!
「ごめんなさいっ!」
「あああっいやっ僕がちゃんと前を見ていなかったからであって!!……あれ?」
「……?」
謝ってきた人は僕を見て、頭の上にはてなを浮かべた。じっと見つめてきている。血のように紅い目を僕も見つめ返してしまう。引き込まれそうな色だ。その色だけに引き込まれるというよりも、その姿が少し不思議なために見つめてしまう。
背は僕と同じくらいで、歳もそんなに変わらないはずなのに、彼の髪は透き通るように真っ白だ。しかし老化した髪というよりも、色素が全くないに近い。それに加え、本来黒目である部分が紅い。赤赤しい、紅。そして背中に大きなリュックを背負っている。そこから紙を丸めた…巻紙でいいのかな?それがたくさん詰め込まれている。そこに目が止まったのは、エイムさんや副隊長さん、また他の軍人さんは背負っていなかったからである。
「あ、の……あなたが、新参兵さん……です……か………?」
「あ、はい。すいません、お怪我はありませんか?」
「ああいや、僕は大丈夫…です。」
突然ぶつかってきた人に見覚えがなかったようだ。真っ白な髪をふわりと揺らしながら紅い目を見開いた。
「あ………無事…だったんだ……よかった…」
「?前にどこかで?」
「いや…あ、僕プランナーというものです。作戦をたてる。本当はタクトって言います。君は…特設A班の新参兵?今、迷っていたの?」
「え……そうです。もしかして、タクトさんも特設A班ですか?」
「そう…ですよ?」
おお、合っていた。
「あ、じゃあ、次の試験は僕のとこでいいかも……」
「本当ですか!?」
「(ビクッ)ふぇっ!?は、はい……だいぶ迷ったんですね……」
「はい、かなり……」
「じゃあっ行きますか?」
30分も迷った上に断る理由などない。返事は決まっている。
「はい!」
「さっきも言った通り、プランナー、言わば策士のすることは戦術や作戦をたてることです。作戦は2つあって、予め始まる前にたてるのと、その作戦を実行している際に、仮に緊急的に変更しなければいけない時。どちらも大事ですが、後者の方が、より迅速で的確な作戦をたてることが求められまっ………はぁ…やっと言えた………いままで絶対どこかで噛んでたから……」
と、プランナーことタクトさんはおっしゃっております、と。これまでの噛み具合がどんなものだったか気になるが、今はおいておこう。
兎にも角にも、今の内容がこの「策をたてる」試験。目の前に建物の設計図が描かれた紙が一枚と、鉛筆一本。おそらく、作戦をたてるのだろう。それよりもこの絵うまいな…。手描きっぽいから、タクトさんが描いたのかな?
「それでは、始めます…」
「はい、お願いします…」
右手に持ったえんぴつを握りしめる。
「ここに、架空の建物の設計図があります。これはとある階で、あと2つ同じものが下に2つあると思ってください。今あなたはこの一番大きな部屋にいます。作戦中の奪還するものは手に入り、この部屋には仲間しかいません。でも、おそらく敵は気づいてこちらへ向かってきています。あなたなら、どう逃げますか…?」
「ん…この部屋になにか脱出できる……ダストシュートとか空気清浄機みたいなのがあれば…あります?」
「……ないことを、前提に」
一瞬見たタクトさんの目は、さっきとは違いきりりとしていた。そうだ…こうやって考えている時間にも敵は迫ってくるのか……なら……
「ガスタンク探して、手榴弾投げて、爆発起こしたらそっちに気を引けます?」
「無かったら?」
「う……放送室探して、爆音を流して耳を聞こえなくするなんて……」
「スピーカーなかったら?」
「うぁ……だめだ、なにもない……」
絶望的すぎる。何もないなんて……?なにもない……
「何もないなら………ただ駆け抜ければいい…?」
「ん…相手さんの数にもよるけど、障害物がないならないでいいかも?でも僕だったら、何人か倒して軍服を拝借して、どさくさ紛れて逃げられれば…」
「おお…なるほど」
「要するに、最悪の場合を考えてたてなきゃだめなの。こうだったらいいな…って考えてたてたら失敗する。その一つだけにかけちゃだめ。こうだったらこう。それが成立しなければ次はこう。って、繰り返して最善の作戦をたてる。」
さすがだ…全然噛んでないし、本当に策のことになるとプロなんだ…
「でもこう言う訓練より大事なのは、実際にその時にできるかどうか。仲間の命背負って、その場の生と死の間の圧力に潰されずにたてられるかどうか。まあ、そんな状況、ない方がいいんだけどね?」
「できれば戦争もない方がいいです…」
「とりあえず…プランナーの試験は終わりかな?お疲れさまでした」
「あ、お疲れさまでした。ありがとうございました!」
はっとしてお辞儀をする。
「射撃は終わったんだ?じゃあ次は…医療の試験はどうかな?メディにも一回会ってるみたいだし、医務室にも行ったらしいし。あ、メディはここの軍医長さん。すごい手先が器用なんだよ!」
「さっきめちゃくちゃ怒られましたよ?」
「ふふっメディは素直じゃないだけだよ!がんばってね、それと、よろしくね」
「はい、こちらこそ!」
とても…いい人だった…優しかったな…
(でもなんだろう、この違和感……)
医務室に向かう途中に考える。
(エイムさんの時に似ているんだけど…なんか、こう…胸がぎゅうってなるような…?)
思えば副隊長さんのときもそうである。懐かしいような、悲しくなるような。まあ…
(気のせいかな…)
そうこう考えているうちに医務室の近くまでたどり着いた。
しかし…
「…?」
ドアの前に、エイムさんが立っていた。いや、立ち尽くしていたに等しい。
「エイムさん?どうしたんですか…?」
「…………めでぃ、いない、まど、あけっぱ。いつも、あけてること、ない。」
「え…まさか、たまたまじゃ?今もどこか施設内にいるんじゃ?」
「……このじかん、いつもいる。それに、このじかんに、ぴったりにきてって、さっき。じかんやぶったこと、ない。やぶると、おこるから。」
なんだか薬のにおいがする、と付け加えた。言われてみれば確かに、部屋も少し煙で霞んで見えた。
「じゃあ……でも、どこに?」
「ぼくのかんは、……………
とうなんの、べつのしせつに、つれていかれたって。」
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