CHEAT~銃声が止んだら~

マド

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3:しゃげきくんれん、かいし

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水をあまり含ませずに絵の具を塗るとべったりした、重々しい色になる。今の空はまさにそんな状態の絵の具で塗りつぶしたような色だ。雲は一つも浮かんでいないが、太陽さえ見えない。早朝でも真夜中でもないのに。不思議だ。
そんなことを考えながら言われた通り訓練が行われている外を歩く。最初は副隊長さんに言われた通り場所を聞こうと思ったが、少し聞きづらかった。とても邪魔できない。歩いていればそのうち着くだろうと信じてたどり着いたのはとあるスペース。外に出た時から音は多少聞こえていたが、ここは特に銃声が耳に響く。それもそう、ここは射撃訓練のスペースである。およそ三十人ほどの軍人さんが訓練をしている。そのかたまりから一人だけ少し離れている人が一人いた。もしかしてこの人がリーダー?そう思い話しかけてみた。
「あの、すいません。ここは射撃訓練の試験会場ですか?」
「…………」
何も言わなかったので気がついてないと思ったが、少しの間のあと振り向いた。少し僕より小さめの背に、ふわふわした薄い金色の髪。じっとこちらを見つめている。
「あ、あの………」
「きみ?」
「え?」
いや、そんな一言で言われてもわかんない。
「しんざんへい、きみ?」
「あ、はい。」
あ、そういうことか。どことなく片言のような口調で話してきた軍人さんは一度訓練をしている人達の方を向き、休憩、終わり。とだけ指示を出した。やはりこの人がリーダーなのか?
「ぼく、えいむ。しゃげき、とくい。ここの、りーだー。」
あってた、よかった。
「てすと、する?」
「あ、はい、お願いします。」


しばらくして、さっきの人達は全員どこかへ行った。そして「えいむ」(多分エイム)と名乗った人は的のようなものと銃を持ってきた。ハンドガンとライフルだ。
「せつめー、きく?」
「お願いします」
「これ、はんどかん。ぴすとるね。けいたいしきで、もちはこび、かんたん。こっちのながいの、らいふる。いりょく、はんどがんより、たかい。」
わお。ざっとしている。しかしながらわかりやすい。
「てすと、これでぼくをうったら、ごうかく。」
「………え?」
「たまきれたら、おわり」
何を言ってるんだ、この人。銃で撃て?人を?
「しつもん、あるひと。」
「はい」
「はい」
「さっき出した的は使わないんですか?」
「かたちだけ」
意味ないじゃん。いやまて、そこじゃない。この人を撃つ。そしたら次にあるのは?死だ。試験とは言え、それはないだろう。
「いま、ひとうつの、だめっておもった?」
「え…」
「じゃあ、なんでぼくらは、ここでくんれんして、じゅうをとるの?」
「………」
それもそうだ。こんな考えが普通になってきているのはとても恐ろしいが、ここで生き延びる限り銃で人を撃つことは避けて通れないのだ。でも、試験でそこまでしなくても…
「でも…当たったら…下手したら……その、死ぬ……なんてことだって………」
「あてられるじしん、あるの?」
まるで、避けられる。とでも言うような口ぶりだ。
「いままであてたことあるひと、いないよ」
考えていることが頭から全部出ているみたいに、この人は僕の考えていることをすぐに読んでしまう。
「ぼく、かんがいいから。」
「ほとんど喋らずに会話が成立してしまった…」
 ………本当にいいのだろうか
「そもそも、これ、できなきゃ、だめ。はやく、やろ?」

その言葉で今僕は、ハンドガンの方を手にしている。ライフルは肩にかけている。シグザウエルp220が見えない太陽の光を反射していた。…眩しい。
「いつでも、どうぞ。」
「はい……」
ここは信じて取り組むことにした。悪いところに当たらないでくださいという重いと合格できますように願いが混ざって複雑である。
弾を装填して、撃つ。
パンッ
乾いた音と銃の反動が右手を駆け抜け、頭に響いた。
「っぅあっ!?」
しっかり支えきれていなかった。それよりあの人は…?おそるおそる銃弾を放った方向に目をやると…


「…あ…れ?」
そこにあったのは無。言うなれば空虚。要するに何もなかった。あ、よかった、あたってないという安堵とともに、どこへ行ったのか?と、見渡すと、さっきの場所から少し左にずれていた。
嘘、本当に避けたのか?
「ほんと、だよ?あと、ちゃんとじゅう、ささえなきゃ、けが、するよ?」
「はいっ…」
もう一度支え直し、引き金を引いた。
パンッ
やはり当たらない。撃とうと思い引き金を引いた時にはもうそこにいないのだ。その後も少し早く動いてみたり、フェイントするようにしてみたが、かすりもしなかった。
速い。速すぎる。しかし、その動きが目で視認できないという訳ではない。見える。でも当たらない。動きに合わせて早く動かしながら撃つと、起動がぶれて当たらない。ライフルに持ち替えたら、はやくなったが、一発撃った後に装填の仕方がわからず使うのを断念した。ハンドガンの方の弾も残り僅かになってきてしまった。
あの後よく見ていたら、どうやらエイムさんが動き始めていたのは、僕が発砲する前だった。どこか、引き金を引く瞬間でも見ていたのだろうか?しかし、また見抜かれ、それは違う。と言われた。
「それ、さいごのいっぽん。」
「…………」
もうだめか……。せめて、この銃の弾の速さがもっと速く、エイムさんを足止めさえできてれば…。なんか、草とかが生えてきて。なんて無理か。最後の一発にかける…。こころなしか、銃が熱く感じる。
そう願い、人差し指に力を込めた時…………


シュッ



パシュッ  



銃弾が、エイムさんの腕をかすめていた。
「え………?」
どっちがつぶやいたのかわからなかった。ただ、僕もあの人も目を見開いていた気がする。そして、エイムさんが倒れた。
「ぅあああっ!?ごめんなさいっ!!大丈夫ですかっ!?ああっ血が……!!」
「だいじょうぶ、だよ?いたく、ない。」
「いやっ!!でもっ!あっ、そうだ、医務室ってありますか!?連れていきますっ!」
「いたくて、たおれた、ちがう。つまずいた。」
「は……?」
取り乱したがおちついてと言われた。そして、彼の足元には

狙って生えてきたかのように花や草がきつく巻き付いていた。



***

「申し訳ありませんでしたっ!!」
「だいじょうぶ」
頭を下げて謝罪の言葉しかさっきから言ってない僕は今医務室にいる。エイムさんの傷は綺麗さっぱりなくなっていた。そしてその前にいるのはおそらくお医者さま。当然ながら、しかめ面である。
「当てた方もあれだけど、そんな計画たてたエイムも悪い!何やってんの!?いくら勘がいいからって買いかぶるんじゃないよ!」
「はい」
「聞いてんの!?」
「ちょっと」
「全部聞きなさいよっ!」
「はい。」
「新参兵のあんた!ちょっと出なさいよっ!射撃の試験終わり!次の場所にさっさと行きな!」
「はい!失礼しますっ。;;;;」
ひあぁぁぁっ;;;;;;どこに行けばいいかわからないけどとても聞ける状況じゃないっ!副隊長さんっ!どこですかぁっ!?




「まったく…無茶しすぎよ。」
「ん……ごめん。でも、さいしょは、よかったんだよ?」
「最初も何も、あたってんじゃ一緒よ。」
「………なんか、さいご。じゅうだん、はやかった」
二人きりになった部屋に日が差し込む。
「…え?」
消毒薬のにおいが鼻をつく。
「気のせいじゃ…ないの?」
「ううん」
「…………」
「それにしってるでしょ?ここのつちじゃ




しょくぶつはそだたないでしょ?」








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