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純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ
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バージンロードの先には、クロードが立っていた。
シュタート王国でもグレートブルタン国でも国王もしくは王太子殿下の誓約の儀の際には軍服を正装として身に付けるのが慣しだが、クロードは黒いフロックコートのタキシードにルチアのウェディングドレスの色に合わせたアイボリーのジレ、白いリボンタイをつけ、ライトグレーのスラックスを穿いていた。
これは、グレートブルタン国の国王であるリチャードにも事前に話を窺って決めたことだった。シュタート王国の軍服で現れれば、参列者にとって脅威を感じさせかねない。そういったことに対しての配慮だった。
ルチアは高鳴る鼓動を感じながらクロードを見つめ、一歩、一歩近づいていった。
憧れ、恋慕いながらも二度と会うことはないと思っていた初恋の男性と再会し、今日この日を迎えることになろうとは……ルチア自身、想像もしていなかった。
ついに、クロードの元へと辿り着く。ルチアは、ベール越しに彼を見つめた。
深い闇のようでありながらも光を受けると眩しく輝く漆黒の長髪は普段そのまま流しているが、今日は後ろにリボンで纏めていた。凛々しく整った眉、見る者を強く惹きつける魅惑的なライトグレーの瞳、筋の通った高い鼻梁、意思の強さを感じさせるきつく結ばれた唇、シャープなフェースラインは、まるで造形美のように美しく、凛々しく、崇高ささえも感じさせる。
この方の……クロード様の妻に、私はなりますのね。
ルチアの胸が熱くなった。
リチャードが名残惜しげにルチアの腕を解く。
「ルチア……幸せになるんだぞ」
「お父様……ありがとう、ございます」
涙が溢れそうになり、必死で耐えながら笑顔をつくる。
リチャードが今度はクロードに向き直り、頭を下げた。
「娘を、どうかよろしく頼む」
クロードはハッとし、それからリチャードよりも深く頭を下げた。
「婚姻を認めてくださり、ありがとうございます。必ず、ルチアを幸せにします」
小国グレートブルタン国の国王と大国シュタート王国の国王としてではなく、新婦の父と新郎としてのふたりの姿に周囲が騒めき、感動が静かに広がっていく。
リチャードがクロードの肩に軽くポンと手を乗せ、席へと着いた。
「ルチア」
「はい、クロード様」
ルチアはクロードに差し出された腕に手を添えた。
教皇がふたりの前に立ち、誓約の儀が厳かに行われる。
「クロード=クリスチャード・エトワンヌ三世、汝はルチア=ブルタイン・バックスコートを妻とし、今日よりいかなる時も共にあることを誓うか」
クロードが決意を胸に、口を開く。
「誓います」
「幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓うか」
「誓います」
教皇がルチアに視線を向ける。
「ルチア=ブルタイン・バックスコート、汝はクロード=クリスチャード・エトワンヌ三世を夫とし、今日よりいかなる時も共にあることを誓うか」
ルチアはクロードを見つめ、それから教皇へと視線を向けた。
「はい、誓います」
「幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓うか」
「誓います」
どんな時も、クロード様のお傍で支え続けますわ……妻として、そして王妃として。
ルチアは心の中でそう、誓った。
「では、指輪の交換を」
リングボーイは、ルチアのはとこのブリュッセルだった。
「ルチアお姉様、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとう、ブリュッセル」
ルチアは王位第二継承権を持つブリュッセルに王位を無理やり継がせることなく、子どもらしい暮らしをさせてあげられることに心から安堵していた。
リングピローを受け取った教皇が告げる。
「では、指輪の交換を」
クロードが指輪を受け取り、ルチアの華奢な指にゴールドの結婚指輪を嵌めた。
続いてルチアが指輪を受け取り、クロードの指に同じくゴールドのけれど少し太めの結婚指輪を嵌めた。
これで、自分たちが夫婦として結ばれたのだという実感が込み上げ、ルチアの胸が震える。
「では、誓いの接吻を」
ルチアはクロードに向き直り、膝を曲げる。クロードがベールを捲り上げ、綺麗に整えた。
立ち上がると視界が明るくなり、ルチアの瞳に美しく麗しいクロードの顔が目の前に迫る。
「ルチア、愛している……」
低く甘く響くその響きが、ルチアの胸に水紋のように広がっていく。
「クロード様……」
感慨無量のルチアの肩を優しく支え、クロードの唇がゆっくりと寄せられる。引き寄せられるように、ルチアの唇が重なった。
クロード様、私も……お慕い申し上げております。
幸せすぎて、夢みたいですわ。
唇が離れ、お互いに微笑み合う。
教皇が高らかに宣言した。
「ここに、クロード=クリスチャード・エトワンヌ三世とルチア=ブルタイン・バックスコートが夫婦となったことを、神の名において宣言する」
参列者から拍手が沸き起こった。パイプオルガンの音が響き、ルチアはクロードと共に、バージンロードを歩く。
これで、ハッピーエンディングではないと分かっている。
まだ、グレートブルタン国、シュタート王国にてルチアとクロードはそれぞれ公務をこなさなければならず、離れて過ごす日々が続く。
両国が統合するための道のりは、遠く、険しい。統合した際の首都の制定や、議員の選出、両国の法律や法令を見直した上での法律の一本化、通貨の統一、道路の整備、シュタート王国にはびこる盗賊や密売組織の一掃といった政治的状況だけでなはく、統合を反対している国民の理解を得られるように努力していかなければならないなど、問題は山積みだ。
夫婦として共に暮らせるようになるには、まだ何年もかかるかもしれない。けれど、こうして誓約の儀を結ぶことにより、一歩先へと進むことができたのだ。
これから、私たちの幸せな未来が始まるのですわ……
隣を歩くクロードを横目に、ルチアは夢と希望に胸を膨らませた。
シュタート王国でもグレートブルタン国でも国王もしくは王太子殿下の誓約の儀の際には軍服を正装として身に付けるのが慣しだが、クロードは黒いフロックコートのタキシードにルチアのウェディングドレスの色に合わせたアイボリーのジレ、白いリボンタイをつけ、ライトグレーのスラックスを穿いていた。
これは、グレートブルタン国の国王であるリチャードにも事前に話を窺って決めたことだった。シュタート王国の軍服で現れれば、参列者にとって脅威を感じさせかねない。そういったことに対しての配慮だった。
ルチアは高鳴る鼓動を感じながらクロードを見つめ、一歩、一歩近づいていった。
憧れ、恋慕いながらも二度と会うことはないと思っていた初恋の男性と再会し、今日この日を迎えることになろうとは……ルチア自身、想像もしていなかった。
ついに、クロードの元へと辿り着く。ルチアは、ベール越しに彼を見つめた。
深い闇のようでありながらも光を受けると眩しく輝く漆黒の長髪は普段そのまま流しているが、今日は後ろにリボンで纏めていた。凛々しく整った眉、見る者を強く惹きつける魅惑的なライトグレーの瞳、筋の通った高い鼻梁、意思の強さを感じさせるきつく結ばれた唇、シャープなフェースラインは、まるで造形美のように美しく、凛々しく、崇高ささえも感じさせる。
この方の……クロード様の妻に、私はなりますのね。
ルチアの胸が熱くなった。
リチャードが名残惜しげにルチアの腕を解く。
「ルチア……幸せになるんだぞ」
「お父様……ありがとう、ございます」
涙が溢れそうになり、必死で耐えながら笑顔をつくる。
リチャードが今度はクロードに向き直り、頭を下げた。
「娘を、どうかよろしく頼む」
クロードはハッとし、それからリチャードよりも深く頭を下げた。
「婚姻を認めてくださり、ありがとうございます。必ず、ルチアを幸せにします」
小国グレートブルタン国の国王と大国シュタート王国の国王としてではなく、新婦の父と新郎としてのふたりの姿に周囲が騒めき、感動が静かに広がっていく。
リチャードがクロードの肩に軽くポンと手を乗せ、席へと着いた。
「ルチア」
「はい、クロード様」
ルチアはクロードに差し出された腕に手を添えた。
教皇がふたりの前に立ち、誓約の儀が厳かに行われる。
「クロード=クリスチャード・エトワンヌ三世、汝はルチア=ブルタイン・バックスコートを妻とし、今日よりいかなる時も共にあることを誓うか」
クロードが決意を胸に、口を開く。
「誓います」
「幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓うか」
「誓います」
教皇がルチアに視線を向ける。
「ルチア=ブルタイン・バックスコート、汝はクロード=クリスチャード・エトワンヌ三世を夫とし、今日よりいかなる時も共にあることを誓うか」
ルチアはクロードを見つめ、それから教皇へと視線を向けた。
「はい、誓います」
「幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓うか」
「誓います」
どんな時も、クロード様のお傍で支え続けますわ……妻として、そして王妃として。
ルチアは心の中でそう、誓った。
「では、指輪の交換を」
リングボーイは、ルチアのはとこのブリュッセルだった。
「ルチアお姉様、ご結婚おめでとうございます」
「ありがとう、ブリュッセル」
ルチアは王位第二継承権を持つブリュッセルに王位を無理やり継がせることなく、子どもらしい暮らしをさせてあげられることに心から安堵していた。
リングピローを受け取った教皇が告げる。
「では、指輪の交換を」
クロードが指輪を受け取り、ルチアの華奢な指にゴールドの結婚指輪を嵌めた。
続いてルチアが指輪を受け取り、クロードの指に同じくゴールドのけれど少し太めの結婚指輪を嵌めた。
これで、自分たちが夫婦として結ばれたのだという実感が込み上げ、ルチアの胸が震える。
「では、誓いの接吻を」
ルチアはクロードに向き直り、膝を曲げる。クロードがベールを捲り上げ、綺麗に整えた。
立ち上がると視界が明るくなり、ルチアの瞳に美しく麗しいクロードの顔が目の前に迫る。
「ルチア、愛している……」
低く甘く響くその響きが、ルチアの胸に水紋のように広がっていく。
「クロード様……」
感慨無量のルチアの肩を優しく支え、クロードの唇がゆっくりと寄せられる。引き寄せられるように、ルチアの唇が重なった。
クロード様、私も……お慕い申し上げております。
幸せすぎて、夢みたいですわ。
唇が離れ、お互いに微笑み合う。
教皇が高らかに宣言した。
「ここに、クロード=クリスチャード・エトワンヌ三世とルチア=ブルタイン・バックスコートが夫婦となったことを、神の名において宣言する」
参列者から拍手が沸き起こった。パイプオルガンの音が響き、ルチアはクロードと共に、バージンロードを歩く。
これで、ハッピーエンディングではないと分かっている。
まだ、グレートブルタン国、シュタート王国にてルチアとクロードはそれぞれ公務をこなさなければならず、離れて過ごす日々が続く。
両国が統合するための道のりは、遠く、険しい。統合した際の首都の制定や、議員の選出、両国の法律や法令を見直した上での法律の一本化、通貨の統一、道路の整備、シュタート王国にはびこる盗賊や密売組織の一掃といった政治的状況だけでなはく、統合を反対している国民の理解を得られるように努力していかなければならないなど、問題は山積みだ。
夫婦として共に暮らせるようになるには、まだ何年もかかるかもしれない。けれど、こうして誓約の儀を結ぶことにより、一歩先へと進むことができたのだ。
これから、私たちの幸せな未来が始まるのですわ……
隣を歩くクロードを横目に、ルチアは夢と希望に胸を膨らませた。
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