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戻らない時間
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「ハロー、素敵なお嬢様たちはこんなところで、何してるのかな?」
ふいに薫子の後ろから声がした。
「あ、礼音!」
美姫が声を掛けると、礼音は後ろからテーブルの端へと回り込んできた。
「あれっ?君、うちの大学?……じゃ、ないよね……だったら、こんな美人さん忘れる筈ないし」
「この子は薫子で、私の幼馴染で親友なの」
「初め、まして……」
初対面の人と話すのが苦手な薫子は緊張して、ぎこちない笑顔で挨拶した。
「わぁー、薫子ちゃんって、いいとこのお嬢様ってのが滲み出てるね。美姫ちゃんも初めて会った時、なんかそんな感じしたけど」
礼音が薫子の顔を覗き込む。
ち、近い……
悠と大和以外の男性に免疫のない薫子は、その距離の近さに驚いて硬直してしまった。
プラチナアッシュにニュアンスパーマのかかった髪、ヘーゼルグリーンの瞳という個性的な出で立ちも、薫子の警戒心を更に強めた。
こわい、どうしよう......
猫目の瞳で見つめられるとゾクッとした。
「薫子には恋人がいるんだから、余計なちょっかいは出しちゃだめよ」
美姫が礼音と薫子の前に手を翳し、咎めた。それは、幼稚舎から続いている美姫が薫子を守る時の仕草で、それを見て薫子は安堵した。
すると、礼音は目を細めて美姫の肩に手を回し、躰を寄せた。
「大丈夫、俺は美姫ちゃん一筋だからっ!」
え…!!!
その光景に薫子は唖然とした。
「まぁた、礼音はそんなこと言って。薫子は真面目だから、本気にしちゃうでしょ」
美姫は別段驚きもせず、冷静に礼音の手を肩から払った。
「いやぁ、本気だってば! ......ねぇ、二人で何話してたの?秘密の話?」
礼音は美姫に手を振り払われても気にする風でもなく、美姫と薫子の間に割り入り、顔を近づけると直球の質問を投げかけた。ふたりは同時にビクンッと肩を震わせる。
美姫が慌てて口を開く。
「別にっ…秘密の、話ってわけじゃないよ。今度から大学寮を出てマンションに引っ越すから、その話をしてただけ」
いづれは話すつもりでいたので、美姫はさらっと礼音に告げた。
「え……引っ越す、の?」
「うん、大学からも近いから通いやすいし、寮だと何かと不便だから」
「まさか……男と同棲、とか?」
美姫の方に顔を向け、礼音は猫目の瞳を細めて尋ねる。美姫は内心ギクリとしながらも、笑って誤魔化した。
「ま、さかっ!そんなわけないじゃない!……一人暮らし、だよ」
「じゃさ、引っ越したらサークル仲間で美姫ちゃんの新居でお祝いしよーよ!」
礼音は屈託ない笑顔を美姫に向けた。
「うん、そうだね」
「じゃ、俺行くわ。またねー。薫子ちゃんも、またね!」
スッと腰を伸ばし、レザーのトートバッグを肩に掛けた。
「あ、はい……」
薫子は、頷いて軽くお辞儀をした。
礼音は手をひらひらさせながら歩いて行った。
「今の、人って……」
「あ、ごめんね。薫子にちゃんと紹介してなくて。サークル仲間の礼音なの。うちのサークル、男女問わず仲いいんだぁ」
習い事や家の用事でサークルに入る余裕などない薫子は、自由な生活を楽しみ、もうすぐ恋人とも近くで暮らせる美姫を羨ましく思った。
「テニスサークル、だっけ?」
「うん、ベタなんだけど、最初に声掛けてくれたし、大学で初めて友達になった子もそこに入るって言ってたから」
「そっ、か……」
美姫にはもう、美姫の生活がある。私の知らない、美姫の生活が……
あの、4人で笑い合い、楽しく過ごした輝かしい時間は二度と、戻らないのだ……
頭では分かっているつもりだが、心が理解してくれず寂しい気持ちでいっぱいになる。
やっぱり...美姫には言えない......
ふいに薫子の後ろから声がした。
「あ、礼音!」
美姫が声を掛けると、礼音は後ろからテーブルの端へと回り込んできた。
「あれっ?君、うちの大学?……じゃ、ないよね……だったら、こんな美人さん忘れる筈ないし」
「この子は薫子で、私の幼馴染で親友なの」
「初め、まして……」
初対面の人と話すのが苦手な薫子は緊張して、ぎこちない笑顔で挨拶した。
「わぁー、薫子ちゃんって、いいとこのお嬢様ってのが滲み出てるね。美姫ちゃんも初めて会った時、なんかそんな感じしたけど」
礼音が薫子の顔を覗き込む。
ち、近い……
悠と大和以外の男性に免疫のない薫子は、その距離の近さに驚いて硬直してしまった。
プラチナアッシュにニュアンスパーマのかかった髪、ヘーゼルグリーンの瞳という個性的な出で立ちも、薫子の警戒心を更に強めた。
こわい、どうしよう......
猫目の瞳で見つめられるとゾクッとした。
「薫子には恋人がいるんだから、余計なちょっかいは出しちゃだめよ」
美姫が礼音と薫子の前に手を翳し、咎めた。それは、幼稚舎から続いている美姫が薫子を守る時の仕草で、それを見て薫子は安堵した。
すると、礼音は目を細めて美姫の肩に手を回し、躰を寄せた。
「大丈夫、俺は美姫ちゃん一筋だからっ!」
え…!!!
その光景に薫子は唖然とした。
「まぁた、礼音はそんなこと言って。薫子は真面目だから、本気にしちゃうでしょ」
美姫は別段驚きもせず、冷静に礼音の手を肩から払った。
「いやぁ、本気だってば! ......ねぇ、二人で何話してたの?秘密の話?」
礼音は美姫に手を振り払われても気にする風でもなく、美姫と薫子の間に割り入り、顔を近づけると直球の質問を投げかけた。ふたりは同時にビクンッと肩を震わせる。
美姫が慌てて口を開く。
「別にっ…秘密の、話ってわけじゃないよ。今度から大学寮を出てマンションに引っ越すから、その話をしてただけ」
いづれは話すつもりでいたので、美姫はさらっと礼音に告げた。
「え……引っ越す、の?」
「うん、大学からも近いから通いやすいし、寮だと何かと不便だから」
「まさか……男と同棲、とか?」
美姫の方に顔を向け、礼音は猫目の瞳を細めて尋ねる。美姫は内心ギクリとしながらも、笑って誤魔化した。
「ま、さかっ!そんなわけないじゃない!……一人暮らし、だよ」
「じゃさ、引っ越したらサークル仲間で美姫ちゃんの新居でお祝いしよーよ!」
礼音は屈託ない笑顔を美姫に向けた。
「うん、そうだね」
「じゃ、俺行くわ。またねー。薫子ちゃんも、またね!」
スッと腰を伸ばし、レザーのトートバッグを肩に掛けた。
「あ、はい……」
薫子は、頷いて軽くお辞儀をした。
礼音は手をひらひらさせながら歩いて行った。
「今の、人って……」
「あ、ごめんね。薫子にちゃんと紹介してなくて。サークル仲間の礼音なの。うちのサークル、男女問わず仲いいんだぁ」
習い事や家の用事でサークルに入る余裕などない薫子は、自由な生活を楽しみ、もうすぐ恋人とも近くで暮らせる美姫を羨ましく思った。
「テニスサークル、だっけ?」
「うん、ベタなんだけど、最初に声掛けてくれたし、大学で初めて友達になった子もそこに入るって言ってたから」
「そっ、か……」
美姫にはもう、美姫の生活がある。私の知らない、美姫の生活が……
あの、4人で笑い合い、楽しく過ごした輝かしい時間は二度と、戻らないのだ……
頭では分かっているつもりだが、心が理解してくれず寂しい気持ちでいっぱいになる。
やっぱり...美姫には言えない......
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