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こんなに近くにいるのに……

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 櫻ロイヤルホテルの中でも一番の広さを誇るパーティー会場「絢爛の間」。

 入口には『羽鳥大蔵君を励ます会』と大きく書かれた立て札があり、2000人以上収容できる広さの会場には政財界の大物や各界の著名人、芸能人など大勢の人々で賑わい、熱気で溢れていた。

 薫子は父の命により、このパーティーに遼と共に出席していた。

 朝起きて着物を着せられ、出かける支度をさせられたと思ったら遼が現れ、父と共に車に乗り込むこととなった。

「あ、あの...これから、どこへ向かうのですか」

 恐る恐る尋ねた薫子に、隣に座っていた遼が龍太郎を意識しながら答えた。

「薫子さんは何も聞いておられないのですか? これから衆議院議員の羽鳥大蔵氏のパーティーに出席するのですよ」

 薫子はそれを聞き、父の狙いが二人を婚約者として紹介することを目的の一つとしていることに気づいた。

 あのお見合いの後、薫子は遅くに帰ってきたことを咎められることはなかった。それは、美姫が送ってくれたお陰もあったが、無理やり押し付けたお見合いに対しての薫子の静かな反抗だと受け取られたせいでもあった。

 龍太郎はそこで、今日のパーティーに薫子だけでなく、わざわざ遼まで呼びつけたのだろう。今の時点で逃げ出すことなど当然出来るはずもなかった。

 お父様はこうして私の意志など無視して外堀を埋めていき、政略結婚を進めていくつもりなのね......

 薫子は俯き、唇を噛み締めた。
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