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変えたい、変わりたい……

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 昨夜、薫子が自宅でレポートを作成していると、パソコンがメール受信を知らせた。

 パソコンのメールなんて、滅多に使わないのに誰からだろう......

 そう思いながらメールを開いた薫子は、一瞬息を詰まらせた。

 美姫、からだ......

『スマホをなくしちゃって、ずっと連絡が出来なくてごめんね。
 実は、20日から2週間秀一さんとオーストリアに旅行に行くことになったの。と言っても、秀一さんは仕事で忙しいし、お父様とお母様も向こうで合流して一緒に会うことになってるんだけど。

 少し早いけど、素敵なクリスマスとお正月を過ごしてね。また、帰ってきたら連絡するね。

 美姫』

 美姫、オーストリアに行くんだ......

 先日の美姫の楽屋での様子が薫子の脳裏に浮かぶ。

 文面からはいつもの美姫のように思えなくはなかったが、なんとなく他人行儀な感じもする。

 あれから、回復したのかな......
 連絡があったのは、嬉しいけど……何があったのか、話してはくれないんだ......

 そう思うと、寂しくて仕方ない。

 薫子は、書棚から一冊の分厚いアルバムを取り出した。そこには、幼稚舎からの写真が綺麗に貼られていた。

 運動会、お遊戯会、遠足、卒園式、入学式......どの写真を捲っても、薫子の隣には笑顔で寄り添う美姫の姿があった。

 いつも、何をするのにも一緒だった。美姫のことなら何でも知ってるつもりだった。
 かけがえのない大切な友達。それは、何年経とうと、どこにいようと変わらないと思っていた。

 私が、頼りないから話せないのかな。

 それとも美姫は、もう私のことは親友だなんて、思ってないのかな。
 ようやく大学で友達が出来たけど、美姫以上に心を許せる友達は私にはいないのに......

 美姫と離れてしまって寂しいと思っているのは、私だけなのかな......

 写真の上の透明フィルムに涙の粒が落とされる。寄り添い並ぶ二人の姿はもう......霞んでしか見えなくなっていた。

 私はずっと甘えてた。いつも悠と美姫と大和に守られて、新しい世界、新しい人間関係を築くことを怖れていた。

 今まで私の女の子の友達は美姫だけで、彼女が私の全てだった。だから、美姫はそんな私を負担に思ったのかもしれない......

 私の側には、もう......美姫はいない。高等部までのような生活は、もうないんだ。
 美姫にも、大和にも.......悠にだって、それぞれの生活がある。

 私も私自身の生活、そして人間関係を築いていかなくちゃ......
 そうなれば、美姫ともっと対等に話せるようになって、頼りに思ってもらえるかもしれない。
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