80 / 355
嵐の予感
6
しおりを挟む
陽子がそれを聞き、うーんと唸った。
「まぁ確かに風間くんってイケメンだけど、近寄りがたくて苦手かも。どっちかっていうと私は羽鳥くんの方がいいなぁ。もっと気さくそうな感じするし」
「そ、そうなんだ......それにしても、陽子が大和と悠を知ってるなんて、知らなかった」
薫子は陽子が悠目当てでないことを知って安堵しつつも、別学部でほとんど顔を合わせることはないであろうはずの大和と悠を知っていたことに驚いた。先ほどの輪の中で悠の話題が上がった時も、陽子はきっと周りの友人たちの話をただ聞いているだけだと薫子は思っていたのだった。
「何言ってんのぉ、この大学にいて『無口でクールな王子』風間くんと『爽やかイケメン男子』羽鳥くんを知らない女子はいないでしょ。もっとも私は学部違うし、遠目にしか見たことないから、人の噂とか聞いて判断してるだけなんだけど。でも、ぶっちゃけあの二人はセレブすぎてなんかもう別世界の人間って感じだから、リアルに恋愛とか考えられないわ。
あ、言っても薫子だってそっちの世界の人間なんだよね......そんな人と友達だなんて、考えてみたら凄いなぁ」
大学受験を経て青海学園大学に入学してきた陽子にとって、幼稚舎からのストレート組であり、その中でも最上層にいる薫子、悠、大和とはまず関わることがないだろうと思っていた。それが遼の一言により薫子と友達になり、親しくなるとはそれまでの陽子には考えられないことだった。
決して悪気があったわけではなく、それが陽子の素直な感想だった。
『そっちの人間』、か...
陽子も、私の元から離れていった人たちと同じように、住む世界が違うとか考え方が違うとか感じているのかな......そしていつか...見限られて、離れてしまうのかな......
陽子の言葉に寂しさを覚えていると、近くに座っていた学生の一人が立ち上がってこちらに向かって歩いてきた。かと思ったら、薫子たちの座席のテーブルに手をつき、身を乗り出すようにして薫子に迫った。
「ねぇ、今...大和って言った? 大和って、羽鳥大和のことだよね?」
薫子の目と鼻の先まで迫っている彼女は、大きな瞳と長い睫毛が印象的な華やかな顔立ちで、どことなく美姫に似ていた。
「ね、言ったよね!?」
で、でも...美姫は、こんなに強引じゃないけど...
「あ、あの......」
たじろいでいると、相手はハッとしたようにテーブルから手を離した。
「ご、ごめんなさいっ。自己紹介もせずにっ。私、国際政治経済学部2年の綾瀬 真奈美です!」
そう言って、真奈美はお辞儀をした。
アイメイクに重点を置いた隙のない化粧、肩までの髪を綺麗に太く巻き、誰もが知っているフランスの有名ブランドのワンピースを着ており、お嬢様系のファッションであるものの、清楚というよりは豪華で華やかな印象は薫子とは対をなしていた。
悠と、同じ学部なんだ......
それを聞いた途端、羨ましく思う気持ちが湧いてくる。
「で、綾瀬さんは羽鳥くん狙いなんだ?」
陽子は突然の真奈美の行動に驚きながらも、面白がるように彼女に話しかけた。
「そう、大和が好きなの!
いきなり話しかけて、失礼だとは分かってるんだけど...大和って名前聞いたらいてもたってもいられなくなって......ほんと、ゴメンなさい!」
そう言って、真奈美は今までの積極的な態度とは打って変わって恥ずかしそうにしながら巻き髪を指に絡ませた。
そんな風に自分の気持ちをストレートに言えるなんて、いいな...
悠に対してだけでなく、いつも自分の感情を隠してしまう薫子は、そんな真奈美を眩しく感じた。
「ねぇ、そのクリスマスパーティー、私も...行っちゃダメかな? 図々しいお願いだって自分でも思うけど、クリスマスイブの日に大和が他の女の子に会うんだって考えただけで、もうどうにかなりそうなぐらい気になっちゃって......」
私も、そうだ...悠が、先日の大和のお父様のパーティーで他の女性と話しているのを見ただけで、苦しくて仕方なかった。
薫子はその時の気持ちを思い出し、胸の前で両手を握り締めた。
「お願いします!!!」
そんな薫子に、真奈美は両手を合わせて頼み込んだ。
「まぁ確かに風間くんってイケメンだけど、近寄りがたくて苦手かも。どっちかっていうと私は羽鳥くんの方がいいなぁ。もっと気さくそうな感じするし」
「そ、そうなんだ......それにしても、陽子が大和と悠を知ってるなんて、知らなかった」
薫子は陽子が悠目当てでないことを知って安堵しつつも、別学部でほとんど顔を合わせることはないであろうはずの大和と悠を知っていたことに驚いた。先ほどの輪の中で悠の話題が上がった時も、陽子はきっと周りの友人たちの話をただ聞いているだけだと薫子は思っていたのだった。
「何言ってんのぉ、この大学にいて『無口でクールな王子』風間くんと『爽やかイケメン男子』羽鳥くんを知らない女子はいないでしょ。もっとも私は学部違うし、遠目にしか見たことないから、人の噂とか聞いて判断してるだけなんだけど。でも、ぶっちゃけあの二人はセレブすぎてなんかもう別世界の人間って感じだから、リアルに恋愛とか考えられないわ。
あ、言っても薫子だってそっちの世界の人間なんだよね......そんな人と友達だなんて、考えてみたら凄いなぁ」
大学受験を経て青海学園大学に入学してきた陽子にとって、幼稚舎からのストレート組であり、その中でも最上層にいる薫子、悠、大和とはまず関わることがないだろうと思っていた。それが遼の一言により薫子と友達になり、親しくなるとはそれまでの陽子には考えられないことだった。
決して悪気があったわけではなく、それが陽子の素直な感想だった。
『そっちの人間』、か...
陽子も、私の元から離れていった人たちと同じように、住む世界が違うとか考え方が違うとか感じているのかな......そしていつか...見限られて、離れてしまうのかな......
陽子の言葉に寂しさを覚えていると、近くに座っていた学生の一人が立ち上がってこちらに向かって歩いてきた。かと思ったら、薫子たちの座席のテーブルに手をつき、身を乗り出すようにして薫子に迫った。
「ねぇ、今...大和って言った? 大和って、羽鳥大和のことだよね?」
薫子の目と鼻の先まで迫っている彼女は、大きな瞳と長い睫毛が印象的な華やかな顔立ちで、どことなく美姫に似ていた。
「ね、言ったよね!?」
で、でも...美姫は、こんなに強引じゃないけど...
「あ、あの......」
たじろいでいると、相手はハッとしたようにテーブルから手を離した。
「ご、ごめんなさいっ。自己紹介もせずにっ。私、国際政治経済学部2年の綾瀬 真奈美です!」
そう言って、真奈美はお辞儀をした。
アイメイクに重点を置いた隙のない化粧、肩までの髪を綺麗に太く巻き、誰もが知っているフランスの有名ブランドのワンピースを着ており、お嬢様系のファッションであるものの、清楚というよりは豪華で華やかな印象は薫子とは対をなしていた。
悠と、同じ学部なんだ......
それを聞いた途端、羨ましく思う気持ちが湧いてくる。
「で、綾瀬さんは羽鳥くん狙いなんだ?」
陽子は突然の真奈美の行動に驚きながらも、面白がるように彼女に話しかけた。
「そう、大和が好きなの!
いきなり話しかけて、失礼だとは分かってるんだけど...大和って名前聞いたらいてもたってもいられなくなって......ほんと、ゴメンなさい!」
そう言って、真奈美は今までの積極的な態度とは打って変わって恥ずかしそうにしながら巻き髪を指に絡ませた。
そんな風に自分の気持ちをストレートに言えるなんて、いいな...
悠に対してだけでなく、いつも自分の感情を隠してしまう薫子は、そんな真奈美を眩しく感じた。
「ねぇ、そのクリスマスパーティー、私も...行っちゃダメかな? 図々しいお願いだって自分でも思うけど、クリスマスイブの日に大和が他の女の子に会うんだって考えただけで、もうどうにかなりそうなぐらい気になっちゃって......」
私も、そうだ...悠が、先日の大和のお父様のパーティーで他の女性と話しているのを見ただけで、苦しくて仕方なかった。
薫子はその時の気持ちを思い出し、胸の前で両手を握り締めた。
「お願いします!!!」
そんな薫子に、真奈美は両手を合わせて頼み込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
契約書は婚姻届
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「契約続行はお嬢さんと私の結婚が、条件です」
突然、降って湧いた結婚の話。
しかも、父親の工場と引き替えに。
「この条件がのめない場合は当初の予定通り、契約は打ち切りということで」
突きつけられる契約書という名の婚姻届。
父親の工場を救えるのは自分ひとり。
「わかりました。
あなたと結婚します」
はじまった契約結婚生活があまー……いはずがない!?
若園朋香、26歳
ごくごく普通の、町工場の社長の娘
×
押部尚一郎、36歳
日本屈指の医療グループ、オシベの御曹司
さらに
自分もグループ会社のひとつの社長
さらに
ドイツ人ハーフの金髪碧眼銀縁眼鏡
そして
極度の溺愛体質??
******
表紙は瀬木尚史@相沢蒼依さん(Twitter@tonaoto4)から。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】
その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。
片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。
でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。
なのに、この呼び出しは一体、なんですか……?
笹岡花重
24歳、食品卸会社営業部勤務。
真面目で頑張り屋さん。
嫌と言えない性格。
あとは平凡な女子。
×
片桐樹馬
29歳、食品卸会社勤務。
3課課長兼部長代理
高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。
もちろん、仕事できる。
ただし、俺様。
俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる